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[編集局より]不動産世襲社会・韓国

登録:2020-10-27 04:02 修正:2020-10-27 09:05

 不動産暴風がまたしても大韓民国社会を襲った。まだその暴風の真っ只中にいるのか、その端にいるのかは明確ではないが。1970年代後半、1980年代後半~1990年代初め、2000年代半ばなど、過去40年間に数回訪れた不動産急騰期のように、今回も勝者と敗者が分かれた。早くから流れに乗った人は数億ウォンの差益を得て笑みを浮かべ、そうできなかった人は恨みと嫉妬、敗北感に苦しむ。さらに大きな問題は、誠実に貯めた金とタイミングを合わせる「実力」だけでは不動産勝者への仲間入りは難しい時代になりつつあるということだ。

 資産(富)を集めるやり方は二つある。自分の稼いだ所得の一部を貯蓄することと、そして相続や贈与を通じて移転されることだ。給料をコツコツ貯めて家を買うのが難しくなったというのは昨日今日に始まった話ではないが、今やソウルの住宅価格は平凡な月給取りには到底考えられない水準になった。一方、すでに資産を所有している人は、資産価格の上昇を受け、より大きな資産を所有することになり、こうして貯まった資産が子の世代へと移転されることで、資産格差が再生産される現象が明確になっている。まさに「相続の時間」が近づいているのだ。

 国税庁の資料「2014~2018年 世代別不動産受贈状況」によると、20代と30代が贈与を受けた住宅またはビルの贈与額は、2014年の9576億ウォン(約889億円)から2018年の3兆1596億ウォン(約2930億円)へと3.3倍に増えた。贈与件数も2014年の6440件から2018年の1万4602件へと2.3倍に増加した。

 いわゆる「ヨンクル」(魂までかき集めるという意味の造語)で家を買うのも、誰にでもできることではない。韓国鑑定院によると、今年ソウルで取引されたマンションの平均実取引価格は8億4400万ウォン(約7840万円)。住宅担保融資を受け、相当な規模の信用融資まで受けても足りないことが多い。結局、親の「助け」が家を買えるかどうかを分けることになる。親世代の不動産投資の成功と失敗の記録であるドキュメンタリー『バブルファミリー』を作った1989年生まれのマ・ミンジ監督の言葉のとおり「新婚夫婦の中でも、両家の助けを借りて『サンクリ融資』(夫婦ともに融資を受けること)が受けられる『金のさじ』だけが、マンションの終電に乗ることができる」(『月間参加社会』「魂までかき集めて、家賃脱出!」)のだ。

 富の蓄積に相続が寄与した割合を研究した東国大学経済学科のキム・ナンニョン教授によると、その割合は1980年代の37.7%から1990年代以降の29%前後へと低下したものの、2010年代には再び38.3%へと高まっている(「韓国における富と相続、1970~2014」)。キム教授は、まだ相続の割合は高くない方だが、これは死亡率が低い一方、経済成長率と貯蓄率が高く、若者が資産を蓄積する機会が多かったためだとし、高齢化の進展が加速する今後は、これらの要因がすべて逆方向へと作用し、相続の割合の上昇傾向がいっそう強まると予想する。

 世代間の資産移転の様相を研究した西江大学社会学科のイ・チョルスン教授と江原大学不動産学科のチョン・ジュンホ教授も同様に、産業化世代または不動産の原始蓄積期世代(1930年代前後生まれ)の(子または孫への)資産移転活動が、その後の世代内の資産の不平等を拡大させたと指摘する。若い世代でよく言われる、いわゆる「金のさじ-土のさじ」論の経済的背景だ。またこの研究は、今後は民主化世代の相続活動も産業化世代に劣らず活発になると予想する(「世代間の資産移転と世代内の不平等の拡大1990~2016」)。

 韓国社会における階層移動の可能性が徐々に低くなっているという懸念が強い。一方では、親が私教育(塾や習い事などの公教育以外の教育)、人脈、文化資本などを用いて、子どもに学閥と職を世襲させる現象がはっきりしてきている。また一方では、これよりも直接的で容易な階層の世襲が強まっている。資産の世襲だ。たとえ個人の努力と能力で同じ職業、職場を得たとしても、資産を受け継いだ人とそうでない人の人生には大きな差があるだろう。韓国でも経済学者トマ・ピケティが警告した「世襲社会」の兆候が表れている。

//ハンギョレ新聞社

アン・ソンヒ経済部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/967284.html韓国語原文入力:2020-10-26 17:12
訳D.K

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