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[寄稿]医師と弁護士

登録:2020-09-09 10:43 修正:2020-09-09 12:10

 医協(大韓医師協会)がひとまず医療ストを解除し、休戦となった。しかし、予想するに医学部の定員拡大などが再び推進されれば医師のストも再開されるだろう。

 ストの最大の盲点は、客観的事実そのものの否定だ。韓国の人口1000人当たりの医師数は2.4人で、経済協力開発機構(OECD)平均値の3.5人に比べて著しく低い。それでも医協は、韓国の医師は「効率的」だといい、人数不足の問題はないと主張している。「3分診療」が患者の立場からみても効率的といえるだろうか。主張の裏には「医師数の統制」による特権維持の希望がある。ところが、これは医師だけの希望ではない。

 国民への法律サービスの敷居を下げるという趣旨で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が1000人選抜の司法試験をよそに、入学生2000人のロースクール設立を推進した時、弁協(大韓弁護士協会)は激しく抵抗した。当時の弁協の抵抗は、今の医協に劣らなかった。その後、ロースクール出身の会員が増えると、戦略を変えた。毎年、弁護士試験の合格者発表日になると、弁協はデモも辞さず「新規弁護士輩出の縮小」を叫んでいる。

 専門職団体は専門職の人数の統制、専門職の被教育者数の統制に最善を尽くす。先に資格を取得したことが、新規参入制限の正当な権利であるかのように。高い報酬や特権が大学入試や専門職試験などの狭き門をくぐり抜けた当然の対価であるかのように。しかし、専門職は一定基準さえ満たせば、その数が何人であれ資格を取得できるようにしなければならず、国は関連教育の提供に最大限努力しなければならない。そして、職業の報酬は労働の対価であり、狭き門を通過した対価になってはならない。

 ただし、人道主義実践医師協議会(人医協)による増員に対する批判には注目する必要がある。人医協は、人口当たりの医師数はOECD平均の65.7%、医大卒業者数は58%にとどまると言い、増員自体は支持しながらも、必須診療科や地方の公共病院の拡充、持続可能な公共医師の育成など公共システムの構築が欠けている政府案を批判した。ともすれば、私立医大の定員だけを増やし、かろうじて少数でも育成された公共医大の卒業生ですら数年勤務した後に「食い逃げ」する可能性があるということだ。

 鋭い指摘だ。ロースクールを通じて弁護士が多少増えたが、市民の法律的生活は大きく変わらなかった。誰もが警察の捜査段階から弁護士の助けを受けられる刑事公共弁護人制度や、毎月数千ウォンの保険料を払えばいつでも法律相談を受けられ、成功報酬の負担なしに訴訟を任せられる権利保護保険制度。ロースクールを通じた法曹人の増員は、先進国のこのような公共ないし普遍的な法律福祉システムの構築なしに始まった。その結果、市民にとって弁護士は依然として遠い存在だ。また、市場に投げ出された弁護士たちの抵抗が法務部を揺さぶり、弁護士試験の合格率が統制されたことから、ロースクールの予備校化、弁護士試験浪人、1000人以上の弁護士試験の生涯受験禁止者などの問題が発生した。

 特に外科・産婦人科などは市民の生命と健康のために必ず必要な「公共財」であるだけに、その存廃を市場だけに任せてはならない。国防・治安・水道・電気サービスにおいて、私たちは収益創出を期待しない。公共財サービスで赤字が出るのは当然であり、これを民営だけに任せるのは市民保護の放棄だ。また、医療・法律サービスが公共システム内に定着した社会の医師・弁護士にとって、新規参入者は恐怖ではない。大金を稼ぐことはできなくても、やりがいのある専門サービスを提供する人生を送ることができる。あえて医療奉仕、無料の弁論をしなくても、職業的な暮らしそのものが奉仕的で公益的であることができる。

 公共システムの構築なしに医学部の定員だけを増やせば、医療界でも法曹界と同じような事が起こりかねない。医協が絶対評価である国家試験の相対評価への転換を推進したり、採点を歪曲して多くの人が不合格になるよう圧力をかけることもありうる。その中で、国家試験が高試(弁護士資格試験)化され、医大教育が崩れかねない。市民の医療サービスの敷居は下がらないまま。

 昨年徹夜勤務中に亡くなったユン・ハンドク国立中央医療院中央応急医療センター長は、生前、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に「韓国で医師の数が多いということを医師を除いては誰も同意しないだろう」という書き込みを残した。専門職の数は制御されてはならない。ただし、増員だけでは足りない。市民に近い専門サービス、正常な専門職教育のためには「専門サービスの公共ないし普遍的福祉システムの構築」も必要だ。医師のストが一段落した今、ストを糾弾しながらも、公共医療システムの構築を見過ごした政府の改革案も批判した人医協の声明を見直すべき時期に来ている。

//ハンギョレ新聞社

パク・ウンソン|弁護士・法曹の敷居を下げる実践連帯共同代表

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/961272.html韓国語原文入力:2020-09-09 02:11
訳C.M

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