新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態に関連して、科学者として私が夢見る大韓民国のために二つのことを行動に移す。一つ目は、COVID-19事態で全世界が危機を迎え始める頃に家族と相談して、災害寄付金を「愛の実」と「全国災害救護協会」の2カ所に送った。いくらにもならない財産だが、その一部をCOVID-19事態で苦しむ国民に役立つよう願う切実な気持ちで寄付した。
二つ目は、大韓民国政府にあえて提言をしたい。大韓民国はCOVID-19対応に関して世界から称賛を受けている。少し前にはCOVID-19パンデミックにも関わらず、世界で唯一、国会議員選挙を順調に行った。第一の提言は、COVID-19診断キットの設計図面を無償で世界に供給すべきだということだ。今が、診断キットを作ることが可能な国家に設計図を無償供給すべき最適の時期だ。設計図があっても生産能力に欠ける国家には、無償で診断キットを提供すべきだ。COVID-19事態に関連して大韓民国が世界の指導者として示すことができる姿だ。国内の診断キット開発・生産企業が被る損失は、当然政府が補償しなければならない。第二の提言として、防疫の最前線でCOVID-19ウイルスとの戦争を指揮したチョン・ウンギョン疾病管理本部長と人材を世界保健機構(WHO)に急きょ派遣すべきだ。米国と欧州各国でCOVID-19拡散の傾向が収まるとは思えない。私たちが防疫に成功しても世界的大流行を防ぐことができなければ、私たちも安全を保障されるのは難しい。世界の防疫の中心の役割を果たさなければならない理由だ。
私は過去40年間、「殺人ダニ」(フタトゲチマダニ)の防除制と重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスのワクチンを開発するために研究を進めてきた。初めは韓国や中国、日本で毎年100~200人が原因も分からないまま死んでいくのを見て、重症熱性血小板減少症候群ウイルスを運ぶ殺人ダニを撲滅する殺虫剤を開発すればいいとの考えで、10年の時間を過ごした。しかし殺虫剤の開発は終りではなかった。消費者は、農家や登山道、野原が極めて広くて全部に撒くことはできないので、持って歩いて殺人ダニが近づくのを防ぐことができる忌避剤を開発してほしいと要求した。10年間、殺人ダニの殺虫剤を開発してきて経験が蓄積され、2~3年後に疾病管理本部の「防疫連携汎部署感染病研究開発事業団」の支援により忌避剤を開発することができた。
念頭に置かねばならない点は、過去10~15年間、非常に多くの研究者の犠牲と献身が必要だったということだ。研究者は、いつどこで殺人ダニに露出するかもしれないため、研究をしながら恐れた。 殺人ダニの殺虫剤と忌避剤を開発した後、重症熱性血小板減少症候群ウイルスのワクチンを開発してほしいという根本的な要求に直面した。しかし、研究費不足、2年ごとの研究者(大学院生)の交替、殺人ダニに対する恐怖など、現実の壁が塞いでいる。このような話を持ち出すのは、個人的な苦しみを吐露しようとするのではなく、COVID-19ウイルスに対する話をするためだ。
COVID-19ウイルスの突然変異のために、ワクチン開発には長い時間が必要になると考えられる。どんなに早くても2021年を越してからワクチン開発が可能になるだろうと予測される。しかもワクチンの臨床の第1相、第2相、第3相実験は、途方もない金と時間を要求する。風邪ウイルスは突然変異がしばしば発生し、毎年ワクチンの種類が変わる。COVID-19ウイルスも同じだ。予想が外れればよいが、今年秋にCOVID-19ウイルスが再び発生する可能性が高い。政府は、今のワクチン研究所よりさらに大きく、多様な形態の研究者が参加する研究所を作らなければならない。世界のワクチン研究者が韓国に来て研究ができるよう、門戸を大きく開かなければならない。今のように大韓民国が世界の注目を受けている時、政府が科学に果敢で革新的な投資を行えば、大韓民国が世界の指導国家として浮上するという希望を持ってみる。
イ・フェソン全北大学農生学部生物環境化学科・医学部兼任教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )