本文に移動

[コラム]中国は「新型コロナ戦争」で勝利したのか

登録:2020-04-15 01:36 修正:2020-04-15 07:21
中国湖北省武漢市の封鎖が解除された4月8日、漢口駅が乗客で賑わっている。この日、鉄道などによって10万人近い市民が武漢を発った//ハンギョレ新聞社

 新型コロナウイルスが暴き出した米国と欧州の文明の混乱には、世界が衝撃を受けた。短くは冷戦終焉以後30年の米国一極体制、長くは19世紀から続いてきた西欧による支配体制が終着駅に向かっているという分析が続く。

 米国の指導力は嘲笑の的となった。大統領の無責任、公共性が失われた医療システム、米国の軍事力を象徴する航空母艦で感染者が続出する状況は象徴的だ。状況が悪化してドナルド・トランプ大統領が真っ先に取った措置は欧州からの入国禁止で、その次は中国と世界保健機関(WHO)に対する非難だった。米国は同盟を紙切れ扱いし、危機克服へと導く指導者の役割も投げ出した。

 では「中国の時代」がやってくるのだろうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡散を抑え込んだ中国は、震源地武漢の封鎖を終え、勝利宣言を準備している。中国当局は防疫から経済へと焦点を移した。習近平国家主席は経済視察などを通じて経済再稼働を強調し、地方政府は「人民は金を使え」というサインを絶えず送っている。

 しかし、中国が勝利を誇るのは早すぎる。友好国ロシアから流入する患者が増えるなど、2次感染拡散の不安は消えていない。中国政府は「感染力が弱い」として集計していなかったが、最近になってようやく管理を始めた無症状感染者による再拡散の可能性や、地方政府が経済回復の妨げになることを懸念して感染者数を隠蔽する可能性があるとの声もある。その背景には、中国政府による統計の信頼性に対する懐疑がある。COVID-19診断も治療も受けられず死亡し、統計に含まれていない人が多いからだ。

 不安と不確実性は経済回復の足を引っ張る。中国当局は5G分野などに大規模な投資を行って成長率を高めようとしている。国有企業などの大規模工場の生産も回復している。しかし、主な輸出市場である米国や欧州の危機がどれだけ長引くかが変数となっている。2カ月以上にわたり全国が「オールストップ」したことで、多くの企業が破産の危機に追い込まれ、外出や外食を控える人が多いため、中小企業とサービス業の状況はさらに深刻だ。約2億人の労働者が職場に復帰できず、「摩擦的失業」状態だという分析も出された。今年大学を卒業する800万人の青年も働き口を探さなければならない。経済成長を共産党統治の正当性の指標として掲げてきた中国指導部にとっては、困惑する状況だ。

 当局による初期対応の失敗で大きな苦しみを経験した民意も、薄氷のようになっている。76日の封鎖に耐え、家族が十分に治療も受けられないまま死にゆくのを見守らねばならず、封鎖解除後も差別を受けている武漢と湖北の人々の怒りと悲しみ、傷は簡単には拭えない。

 国際的には、米国が揺らぐことで生じた地政学の空白の中へと、中国が進軍しているように見える。中国は120カ国以上にマスクと診断キットを援助または販売し、医療陣を派遣して「中国貢献論」の序章を開こうとしている。一方、中国外務省の報道官は「COVID-19が米国軍人らによって伝播された可能性がある」という陰謀論を持ち出し、新華社通信は「堂々と語ろう。世界は中国に感謝すべきだ」という文章を載せ、中国の犠牲が世界を救ったと主張した。「中国責任論」を消そうとする宣伝戦だったが、盗人猛々しいとの反発を招いた。中国は、米国の混乱と対比される指導力を示し得た重要な機会を逃した。「マスク大乱」を経験したことで中国に生産基地を集中させてきた副作用を痛感した米国や欧州などが、グローバル・サプライチェーンの大手術に乗り出し、中国からの工場の撤退に本腰を入れれば、さらに大きな挑戦が訪れるだろう。

 権威主義による効率を誇示した「中国モデル」に対する懸念の中で、「韓国モデル」は代案として注目されている。韓国の保守派の政治勢力とマスコミによる根拠のない非難を除けば、韓国は民主的方法と市民の自発的努力によって、経済を犠牲にせず、効果的に対応してきたという世界的な評価を受けているということは明らかだ。リーダーが消えた「Gゼロ」時代に、韓国は大国のモデルに従う事大主義から脱し、自ら地図を作りながら進む、その出発点に立っている。「コロナ革命」が世界を再設定したことで、重要な課題が迫ってきている。

 経済と雇用の危機、グローバル化の退潮とグローバル・サプライチェーンの再調整に一足先に備え、公正で平等な共同体を目指して深く考え準備する時だ。明日、投票所で誰と共にその課題を解決し得るのか、問いを投げかけなければならないだろう。

//ハンギョレ新聞社

パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/936997.html韓国語原文入力:2020-04-14 15:52
訳D.K

関連記事