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[コラム]北朝鮮の核をめぐる交渉が今回も座礁すれば

登録:2019-12-11 06:31 修正:2019-12-11 08:21
米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が6月30日、板門店北側区域で並んで立っている=板門店/ロイター・聯合ニュース

 年末が近づくにつれ、朝米交渉が破局に向かう手続きを踏み始めたようだ。ドナルド・トランプ米大統領が最近数日間で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長について、「ロケットマン」という言葉を再び取り出したのに続き、「必要なら軍事力を使用できる」、「北朝鮮が敵対的に行動すれば、事実上すべてを失うかもしれない」と威嚇した。これに対し、北朝鮮も直ちにトランプ大統領を卑下した「老いぼれ」という言葉をちらつかせ、「これ以上失うものはない」と言い返した。これまで両指導者の間に残っていた慎重さは跡形もなく、狭量な個人攻撃に近い発言だけが舌先を離れない状態になった。

 朝米がここまで来たのは言うまでもなく、今年2月末のハノイ朝米首脳会談で明らかになった隔たりを最後まで埋められなかったからだ。両者の間で非核化と制裁解除の対象と範囲、方法、そして平和体制の構築案などの争点をめぐり、接点を見出すことが難しいほど立場の違いが大きかったのは事実だ。にもかかわらず、互いに歩み寄りを見せず、平行線を辿った背景には「あえて譲歩してまで合意を物乞いする理由はない」という判断があったとしか思えない。

 当初、米国では昨年初めに北朝鮮がいきなり交渉局面に切り替えた時、「2016年以降強化された対北朝鮮制裁に耐え切れず、屈服した」として、歓声を上げる雰囲気があった。米国がハノイ会談で突然合意を見送ったのも、「もう少し強く出れば(北朝鮮が)白旗を挙げるしかないだろう」という楽観的な見通しを念頭に置いた行動だった可能性が高い。

 国連の対北朝鮮制裁が、2016年1月の北朝鮮の4回目の核実験を基点にはるかに強力になったのは事実だ。それまでの制裁は核・ミサイル関連技術や物資の北朝鮮への流入を防ぐことに焦点を合わせたものだったが、2016年以降は石炭・鉄鉱石など鉱物はもちろん、石油取引まで制限するなど、一般民生経済に打撃を与える方向に切り替わった。

 制裁の強化で北朝鮮経済が苦しんでいることは、いくつかの指標でも確認できる。韓国銀行の北朝鮮の国内総生産(GDP)の統計によると、2017年-3.5%、2018年-4.1%と2年連続で後退し、2000年代以降回復の兆しを見せていた対外貿易も2017年から減少に転じた。2018年には対外貿易総額が半分以上減っており、貿易収支の赤字も23億6千万ドルで、1990年以降最大規模だ。北朝鮮がハノイの会談で、寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄する見返りとして、2016年以降に加えられた制裁5件の解除を求めたのは偶然ではない。

 しかし、この程度の圧力で北朝鮮が白旗を挙げると期待するというのは別の問題だ。北朝鮮経済は基本的に閉鎖的であるため、外部に知られた数値だけで実際の状況を判断するのは限界がある。実際、北朝鮮経済は公開された指標とは違って、深刻な危機的局面に陥っている兆候は確認されておらず、今のところ制裁の影響がいくつかの部門に限られているという分析が多い。これを踏まえると、1990年代末に国中が飢えに苦しんだ「苦難の行軍」も乗り越えた北朝鮮体制が、この程度の制裁に屈服すると信じるのは妄想に近いかもしれない。

 北朝鮮制裁は中国の影響のため、初めから抜け穴が多かった。制裁で北朝鮮を圧迫しようとしても、1400キロメートルに達する国境を接している中国の協力がなければ、効果を期待できないのが現実だ。それでも米国が軍事・外交はもちろん、貿易分野までためらわず中国との対立戦線を広げる矛盾した態度を見ると、北朝鮮の核問題が米国の政策優先順位においてどのくらいの位置にあるのかが気になる。米国は本当にこの問題を解決する意志があるのだろうか。もしかしたら、解決しなくてもいいと思っているのではなかろうか。

 北朝鮮の次の行動は、年末に招集された労働党中央委全員会議で決定されるものと見られる。北朝鮮がどのような道を選ぶかは、まだ推測の域を出ないが、現在の状況からして見通しはそれほど楽観的ではない。ただし、一つだけ言いたいのは、今回も交渉が最終的に頓挫すれば、今後しばらく「北朝鮮核交渉論」が説得力を得ることは難しくなるという点だ。北朝鮮の核をめぐる交渉努力は1994年の朝米枠組み合意、2000年代中盤の6カ国協議合意に続き、今回が三度目だ。また失敗すれば、あえてその挫折の重みに打ち勝とうとする者はいないだろう。

//ハンギョレ新聞社
パク・ビョンス論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/920333.html韓国語原文入力:2019-12-11 02:39
訳H.J

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