「白昼夢(目覚めている時に現れる、夢のようなと意識状態)のような11分間の休戦協定調印式は、すべてが象徴的だった。…休戦会談に韓国を公的に代表する人は一人も見られなかった。… “奇異な戦争”の終幕らしい奇異な場面だった。」
また7・27がやってきた。毎年この時期に手に取ってしまう。“伝説の戦争記者”チェ・ビョンウが『奇異な戦闘の停止』という題名で書いた停戦協定調印式の現場記事だ。チェ・ビョンウは、停戦協定調印式が終わった時間を「1953年7月27日午前10時12分」と記録した。
「調印が続く間、国連の戦闘爆撃機がすぐ近くの共産軍陣地に浴びせている爆弾の炸裂音が、緊張した式場の空気を震わせた。…これはあくまでも“停戦”であって“平和”ではないとの説明をよく理解できた」
66年の歳月が矢のように流れた。私たちはどこまで来ているのか?昨年4月27日、板門店で会った文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長は、互いの手を取り合って軍事境界線を行き来した。6月30日にはドナルド・トランプ米大統領が、南と北の最高指導者とともに板門店で会った。トランプ大統領が金委員長と共に軍事境界線の南と北を行き来する姿は、超現実的でありさえした。
まだ、そこまでだ。板門店での南・北・米3者首脳会合の感動が残っているが、朝米はまだ交渉の最初のボタンもかけられていない。韓米合同演習が議論されると、北が短距離発射体を東海上に打ち上げた。私たちは、まだ戦争の恐怖から抜け出せていない。“停戦”であって“平和”ではない。
「南と北は、非武装地帯をはじめとする対峙地域での軍事的敵対関係の終息を、朝鮮半島全地域での実質的な戦争の危険除去と根本的な敵対関係の解消につなげることにした」
昨年9月19日、南と北は平壌共同宣言1条でこのように約束した。南と北が作り出した事実上の“終戦宣言”だった。宣言に合意した後、文大統領は「戦争のない朝鮮半島が始まった。朝鮮半島の全地域から戦争を起こしうるすべての危険をなくすことに合意した」と感極まって述べた。金委員長も「朝鮮半島を核兵器も核の脅威もない平和の土地にするために、積極的に努力していくことを確約した」と応じた。
まだ、そこまでだ。“対峙地域での軍事的敵対関係終息”のために、南と北は非武装地帯に設置した警戒所を爆破したが、“実質的な戦争の危険”は除去されなかった。朝米間の“根本的な敵対関係”が解消されていないためだ。“停戦”は“終戦”ではない。戦争を終わらせてこそ平和に進むことができる。南と北が昨年、板門店宣言の3条3項でこのように合意した理由だ。
「南と北は、停戦協定締結65年になる今年に終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に切り替え、恒久的で堅固な平和体制構築のための南・北・米3者、または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」
“終戦宣言”は終わりではない。敵対の終わりを知らせる開始であり、平和に進む暫定措置だ。戦争に終止符を打った後には、関係正常化と制裁緩和が続かなければならない。米国の対北朝鮮制裁自体が戦争から出発した“敵対関係の産物”であるためだ。
“終戦宣言”は、非核化の第一歩ともかみ合っている。“新しい朝米関係”は、体制安全保障の連結の輪であるためだ。終戦宣言が本格的な非核化プロセスを追求できる呼び水の役割を果しうるという意味だ。
だから“終戦宣言”は交渉の結果として受け取れる“プレゼント”ではない。新しい関係、新しい出発のための踏み石だ。交渉の入り口でためらう理由がどこにあるのか?“奇異な戦争”をもう終わらせなければならない。