本文に移動

[社説]朝鮮半島平和の道標立てた板門店の南北米首脳

登録:2019-06-30 22:32 修正:2019-07-01 07:52
北朝鮮の地を踏んだ初めての米国大統領
全世界が驚いた第3回朝米首脳会談
今後の交渉で「包括的合意」を成せ
文在寅大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長、ドナルド・トランプ米大統領が6月30日午後、板門店南側地域の自由の家で会合を終えた後、ともに軍事境界線に移動している=板門店/キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 世界の耳目が集中した中で、分断と冷戦の象徴である板門店(パンムンジョム)で南・北・米首脳が30日、手を握りあった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支援のなか、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は板門店の軍事境界線で会ってかたい握手を交わした。昨年4・27の南北首脳会談の時のようにトランプ大統領は金委員長と共に板門店の北側へ渡り、再び南側に下ってきた。これでトランプ大統領は北朝鮮の地を踏んだ初めての米国大統領になった。真に歴史的な場面に違いない。金委員長は「過去を清算して未来に進もう」と第一声を出した。トランプ大統領は「米国大統領として軍事境界線を越えることができたことを光栄に思う」と話した。北朝鮮と米国の首脳は板門店の自由の家で事実上3回目の朝米会談を行った。分断の象徴を平和の象徴に変える意味深い事だ。南・北・米三首脳の出会いと電撃的な朝米首脳会談という、誰も予想できなかった破格の連続に世界が驚かされたものだ。

 三首脳が一堂に会したのは南北首脳会談や朝米首脳会談とはまた他の次元の歴史的な出会いだ。朝鮮半島問題の運転者として文大統領の積極的ながらも一貫した「促進者」の役割が作り出した成果であり、朝鮮半島非核化と平和体制に向かった金正恩委員長とトランプ大統領の決断が成し遂げた世界史的“ビッグイベント”というに値する。分断と戦争の当事者である三首脳が板門店で会うことによって、66年の間持続した朝鮮半島の停戦体制が終息する事実上の終戦宣言効果を作り出した転換点で記録されるに値する。三首脳の板門店での会談が、朝鮮半島平和と完全な非核化、朝米関係の画期的改善に向かう大きな足取りになるよう祈ってやまない。

 三首脳の板門店の対面は3、4日前だけでも想像しがたかった。昨年の春以後進められきた南北と朝米の首脳会談は破格の連続だったが、今回の板門店の南・北・米首脳の出会いこそ破格の決定版といえる。誰も思うことが出来なかった瞬間になされたトランプ大統領の「ツイッター提案」と、5時間後に北朝鮮からきた迅速な応答が、一日で朝鮮半島の冷戦解体の道に戻ることはできない大きな道しるべをたてた。

 この画期的な出会いは南・北・米間で水面下交渉が進行されなかったとすれば成し遂げられなかっただろう。金委員長とトランプ大統領が親書をやりとりしたのがこの出会いの土台になったと推定するのが自然だ。もちろん金委員長は事前にトランプ大統領の提案を全く知らなかったと話したが、いくら予告のない出会いだとしても水面下の動きがなかったとすればこのような電撃的な出会いがなされることは容易ではなかっただろう。板門店の歴史的な出会いは、非核化交渉を生かして中断された対話の出口を開くための南・北・米3者の努力が編み出した結実といえる。

 三首脳が一堂に会したと同じくらい重大な事は、板門店という歴史的な現場で北朝鮮と米国の首脳が事実上の首脳会談をしたという事実だ。朝米両首脳は2月のハノイでの2回目の会談の決裂が作った澱をきれいに洗い落とし、劇的な転換点を作り出した。会談が終わった後、トランプ大統領は今後数週間実務チームが北朝鮮側と会って「包括的合意」のための実務交渉をすると話した。板門店の会談で朝米の首脳は重要な争点を確認し、今後の合意のための仕組みを描いたと見られる。

  長びいた膠着状態を絶って新しい開始の道を開いたという点で、今回の略式会談はその意味が大きい。2、3分と予想した出会いが1時間近い単独会談として長くなったのも、それ自体今後の交渉を明るくすることだ。金委員長は即答はしなかったが、トランプ大統領が金委員長をホワイトハウスに招請したのも朝米関係の急展開を見せるものに違いない。

 板門店での出会いは、朝米対話でトップダウン方式が相変らず有効で事実上唯一の解決法であることを立証したといえる。ハノイの決裂で一時萎縮した金委員長の位置づけも、今回の3者会合で再び強化されたといえる。文大統領も北朝鮮と米国の関係の促進者として自らの役割を落ち着いてやり遂げることによって、朝鮮半島問題のかじ取り役としての地位を高めた。この出会いで朝鮮半島の平和プロセスは過去になく速い水流に乗る可能性が大きくなった。

 しかし、今回の出会いは朝米の非核化交渉の進展のための重大な突破口ではあるが、まだ本論に入ったのではない。実質的な非核化と朝米関係の進展が続かなければならない。これに先立ってスティーブン・ビーガン米国北朝鮮政策特別代表は「北朝鮮と米国の交渉の柔軟な接近の必要性」を強調し、シンガポール合意の精神に戻ってすべての事案を「同時・並行的に解決していく意向がある」と明らかにした。北朝鮮が主張してきた段階的・同時的解決法とある程度軌道を共にしているといえる。今後開かれる朝米の実務交渉で、この問題に関連して確実な進展があることを期待する。特に北朝鮮が「体制安全保証」と「非核化に対する相応措置」を重大な関心事として表明しただけに、この問題で朝米間に実質的な合意が成されねばならない。

 南・北・米三首脳の出会いと朝米首脳の板門店での会談は、朝鮮半島の冷戦解体と停戦体制終息につながる巨大な事件として記録されるだろう。このような歴史的な意味に見合った今後の対応が出てくる時だけに、今回の会談が朝鮮半島の平和進展の真の推進力になりうるということは改めて言う必要もない。2月のハノイの決裂のトラウマを洗い落として、朝米が新しい歴史を刻んで行けるように両国の積極的で意欲的な交渉が成されねばならない。世界を驚かせた南・北・米首脳の板門店の会談が、朝鮮半島冷戦の永久的解体と完全な平和体制構築、非核化交渉と朝米関係転換の迅速な進展につながることを期待してやまない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/899932.html 韓国語原文入力:2019/06/30 20:06
訳T.W

関連記事