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[寄稿]朝鮮戦争終戦宣言の虚と実

登録:2019-07-22 09:17 修正:2019-07-22 13:31

 朝鮮戦争停戦協定締結66周年が近づいている。今年の停戦記念日(7月27日)は、これまでとは一味違う。まさに停戦協定を締結した板門店で南北米首脳の会同があり、朝米首脳の会談が行なわれた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこれを事実上の「終戦宣言」だと規定した。米国連邦議会では、今年に入って停戦状態を公式的に終わらせるべきだと主張する決議案を推進する動きがあった。終戦宣言は果たして何を意味するのだろうか。

 額面どおりなら、朝鮮戦争は停戦協定で休戦状態に入り、この休戦状態はまた停戦協定によって維持されなければならないだろう。しかし、停戦協定後の朝鮮半島は完全に停戦協定によってのみ維持されたのではなかった。停戦協定はすでに本来の機能がかなり形骸化し、停戦協定のシステムである軍事停戦委員会と中立国監督委員会も崩壊して久しい。

 停戦協定が締結された後の東西冷戦時代に、南北間の軍事対決と衝突を抑制したのは、停戦協定というよりも米ソの冷戦構図だといえる。米ソ冷戦が終わった後、朝鮮半島は非対称の新しい冷戦構図が作られ、北朝鮮の核を含む新しい朝鮮半島問題が派生してきた。

 米ソ冷戦時代にバランスをとっていた抑制力が消え、朝鮮半島は冷戦時代には経験しなかった戦争危機を負ってきた。危機は、朝鮮半島を何度も戦争直前まで追い込んだ。その危機が戦争に至らないよう抑制したのは事実上、停戦協定ではなく朝鮮半島特有の地政学的要素だというべきだろう。

 停戦協定の趣旨は「朝鮮半島問題が平和的に解決されるまで朝鮮半島で敵対行為と一切の武装行動の完全な停止を保障すること」だ。停戦協定の機能であるこの保障は、別のある要素によって「無力化」されてきたと言える。まさに停戦協定の当事者間の関係の変化だ。

 停戦協定当時は敵対関係だった米国と中国は、敵対関係を終わらせ戦略的協力パートナー関係になり、韓国と中国関係もまた敵対関係から協力関係に発展した。南北関係も「7・4共同声明」から「南北基本合意書」「6・15共同宣言」「10・4首脳宣言」を経て、昨年「板門店宣言」と「平壌宣言」に至り、事実上終戦を繰り返し明らかにした。朝米関係も3回も首脳会談をし、敵対関係を終わらせる終戦宣言をしたのと変わりはない。

 このまま行けば実際、終戦宣言は水が流れ自然と堀ができるという「水到渠成」(時がたてば自然と望んだとおりになるということ)で達成されるべきだろう。ところが終戦宣言はたやすく成し遂げられてはいない。なぜだろうか。

 北朝鮮の核問題を解決するための6カ国協議で、北朝鮮と米国は「非核化」と「平和協定」の前後をめぐり熾烈な攻防を繰り広げた。北朝鮮は「平和協定が先」を、米国は「非核化が先」を主張した。停戦協定を締結する時とは異なり、朝鮮半島の平和の最大の脅威として北朝鮮の核が浮上したためだ。そうして、北朝鮮核の解決と平和体制構築はコインの両面になった。北朝鮮の核解決なしには終戦宣言はないという主張は、そのような背景からなる。そうして「双軌並進」、つまり「非核化」と「平和協定」を並進させなければならないという中国の主張が出た。しかし、中国のこの主張も米国に影響を与えられない。それはまたなぜだろうか。

金景一・北京大教授//ハンギョレ新聞社

 米国は終戦宣言と平和協定の締結をすると、中国を牽制しようとする米国のインド太平洋戦略に決定的な支障を来たすと懸念している。米国のこのような懸念を見ると、米連邦議会で終戦宣言を公論化したことに大きな意味を与えることができるだろう。スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮政策特別代表も、米国が「シンガポール共同声明の公約を同時的・並行的に進展させるために、北朝鮮と建設的な議論をする準備ができている」と話した。米国が朝鮮半島非核化と平和体制の構築を同時的・並行的に推進すれば、大きな戦略の枠組みでの“悪魔”は消え得る。

 このような意味から、終戦宣言は象徴的機能を超えて、米国の朝鮮半島非核化と平和体制構築の意志を推し量る試金石と見てもおかしくはないだろう。

金景一・北京大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/902692.html韓国語原文入力:2019-07-21 19:16
訳M.C

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