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[寄稿]今こそ国際協調を

登録:2019-07-14 09:39 修正:2019-07-14 18:19
山口二郎・法政大学法学科教授//ハンギョレ新聞社

 日本では参議院選挙が行われている。安倍晋三首相が執着する憲法改正を実現するためには、参議院でも与党が3分の2以上の議席を確保する必要がある。安倍首相にとっては負けられない選挙であり、この選挙戦を有利に進めるために外交も利用されている。

 まず、6月に大阪で開催されたG20である。通常、G20はG7の後に開催される。しかし、安倍政権は7月の参議院選挙に合わせて6月にG20を設定した。世界の首脳を日本に集め、外交舞台でのパフォーマンスによって人気を高めたいという思惑の反映であった。しかし、その意図は空振りに終わったと言ってよい。G20自体では何ら実効的な合意は構築できなかった。また、この会議の直後、トランプ米大統領が電撃的に北朝鮮の金正恩委員長と会談し、大阪での国際会議の記憶は消えた。拉致事件の解決を追求してきたはずの安倍首相は、朝鮮半島の動きについて何の情報も持っていないことが明らかとなった。

 7月に入ると、日本の孤立主義はさらに明らかになった。日本はIWC(国際捕鯨委員会)から脱退し、7月1日から商業捕鯨を再開した。鯨肉を食べるのは日本の食文化という主張がこれを正当化している。しかし、これは誤りである。第2次世界大戦後の食糧不足時代には鯨肉は日本人にとってのたんぱく源となったが、これは伝統ではない。調査捕鯨でクジラを捕獲したが、鯨肉の需要は低迷している。捕鯨は政府の補助なしでは成り立たないのが現状である。

 さらに、政府は韓国に対する半導体原料の輸出規制を発動した。朝日新聞はこれについて7月2日に次のように報じている。

 「菅義偉官房長官は2日午前の閣議後会見で、韓国への輸出規制強化について、韓国人元徴用工問題への「対抗措置ではない」と述べた。一方で、「(日韓)両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上に(元徴用工問題で)G20(サミット)までに満足する解決策が示されなかった。信頼関係が著しく損なわれたことは言わざるをえない」とも話し、今回の措置の背景の一つにあることは明言した。」

 G20では日本は自由貿易の旗手としてふるまったはずだが、韓国に対しては政治的意図で輸出規制を行ったことになる。これは韓国の半導体産業だけでなく、日本の半導体産業にも悪影響を与えることが懸念されている。日本国内でも、この輸出規制はWTOのルールに違反するという見解が有力である。しかし、TBSの世論調査ではこの措置について、「妥当だと思う」という人は58%に上り、「妥当だと思わない」の24%を大きく上回った。一般市民のレベルでも、自国中心主義を支持する気分が強いことがうかがえる。

 日本政治の最大の問題点は、主観が客観を駆逐している点にある。一国の内部でも世界においても、様々な人間が世の中を構成していることを認識することが政治の大前提である。自分とは違う見解を持った人間の存在を認めないというなら、そんな考えの為政者は独裁政治を敷くほかない。各国が自国中心主義に走る時、世界の緊張は高まる。しかも、自国中心主義はその国の為政者の威信を高め、人々の支持を、少なくとも短期的には高める効果を持つ。主観的な自己満足の追求は民主主義と平和の敵である。

 だからこそ言わなければならない。選挙に向けて自国中心主義を煽るのは、責任ある政治家のすることではない。この参議院選挙では、国際協調主義か偏狭なナショナリズムかが問われなければならない。日本の第2次世界大戦後の民主政治は、日本が自国中心主義でアジアの秩序を壊したことに対する反省から出発している。国際協調を目指す冷静な声を日本で持続しなければならない。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2019-07-14 17:52

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/901753.html

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