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[寄稿]新しい時代の到来?

登録:2019-05-05 00:36 修正:2019-05-05 18:27
山口二郎・法政大学法学科教授//ハンギョレ新聞社

 前回の本欄でも書いたように、4月30日に明仁天皇が退位するのに合わせ、日本国内では明仁天皇が在位した平成の30年を振り返るという議論が、政治経済から社会、文化、風俗に至るまで、さまざまな分野で行われている。

 偶然だが、平成は世界の冷戦構造の崩壊が始まった1989年に始まった。また、平成が始まった直後に、日本ではバブル経済が崩壊した。この30年は1つの時代という存在感を持つ。しかし、その存在感は、マイナス、災難、不運と言った否定的なイメージと結びつく。バブル崩壊後、経済は長期停滞に陥った。また、東日本大震災と原発事故という大きな苦難も経験した。さらに、GDPで中国に抜かれ、世界第2位の経済大国というプライドもなくなった。平成末期には日本の総人口も減少を始め、これに歯止めがかかることはないと予想されている。

 しかし、今の日本国内には、現状を危機と厳しく認識し、政治の力を使って社会経済の難題を解決しようという世論は存在しない。4月末に朝日新聞が行った世論調査は、停滞、衰弱に慣れていく民意の現状を明らかにしている。安倍政権への期待について、「期待しない」は57%で「期待する」の41%を上回った。一方で、政治に期待するのは「安定」60%、「変化」34%だった。安倍首相に期待しない層でも、政治に「安定」を期待する人51%が、「変化」43%より多かった。

 政治状況について、いわゆる自民一強への懸念も国民は憂慮している。国会で自民党だけが強い勢力を持つ状況を「よくないことだ」と答える人は80%。自民支持層でも「よくない」は62%を占めた。その一方で、政権交代が今後も繰り返されるほうがよいと思うかを尋ねると、「そうは思わない」が53%で、「繰り返されるほうがよい」40%だった。

 この調査から見えてくるのは、日本の現状について悲観的ながら、同時に前向きの変化を起こすことに対する深い諦めが国民の間に蔓延していることである。安倍政権も発足以来6年を超え、人々は飽きてきたのだろうか。また、安倍政権の経済政策が効果を発揮せず、生活が苦しいと答える人が増えている。それゆえ政権への期待は低いが、政治に変化を期待する人は極めて少ない。

また、自民党政権が続くことについて批判的に見る人は多いが、政権交代への期待は極めて低い。日本では2009年の民主党による政権交代について、失敗という否定的なイメージが定着している。政治を刷新することは世の中をよくすることにはつながらないという悲観を前に、日本における政権交代の必要性を論じてきた者としては、言葉を失う。日本人の諦めは、政治の腐敗に対して市民が戦い、政権交代を勝ち取ってきた韓国と著しい対照をなしている。

 人間の歴史を振り返れば、安穏とした時代よりも、苦難に満ちた時代の方がはるかに長かった。しかし、人間は苦難を乗り越えて文明を築いてきた。今の日本人の諦めは、日本が近代の発展、成長の時代を完全に卒業し、長い停滞の時代に入ったという、ある意味で冷静な現状認識に基づいているのだろう。平成の次は令和という元号が使われる。日本国内では、新天皇の即位とともに新しい時代が始まるという議論が喧しい。しかし、その新しさは空虚である。令和の日本について、再生の希望が語られていない。

 希望は空想とは違う。平成の時代に起こった政策の失敗をしっかり見据え、1つ1つ問題を解決する努力から、次の時代を切り開くしかない。無力感とあきらめと戦うのは、党派を超えたすべての政治家の任務である。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2019-05-05 18:19

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/892699.html

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