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[特派員コラム]トランプの残余任期は5年10カ月?

登録:2019-03-28 21:36 修正:2019-03-29 08:13
ドナルド・トランプ米国大統領//ハンギョレ新聞社

 先日、ワシントンのある小劇場で、30人余りの白人の前に座る機会があった。ある観客が「韓国の人々はトランプと金正恩(キム・ジョンウン)のどちらをより恐れるか」と尋ねた。「純粋に個人的な意見」であることを前提に「私はトランプの方が恐ろしい」と答えた。ベトナムのハノイで“ノー・ディール”で席を立ち、行政府の発表内容を翌日ツイッターで覆す、そして「金正恩と来月会う」と翌日にツイートを飛ばしてもおかしくないトランプの予測不可能性と即興性が恐ろしいと答えた。客席から「自分の考えも全く同じだ」という反応が出てきた。北朝鮮の金正恩国務委員長を「核放棄の意思がない残忍な独裁者」と描写する米国で、「トランプ大統領の方が恐ろしい」という話に、人々が首を縦に振る。

 今度は客席に向かって「来年11月の大統領選挙でトランプが再選に成功すると思うか」と尋ねた。驚くべきことに、20人余りが手をあげた。

「わあ…。各自の希望とは関係なくということでしょう?」

「そうだ…」

 ある人は手を下ろしてうなだれもし、またある人は深くため息をついた。

 トランプを恐ろしくひどいと感じながらも、来年の大統領選挙の勝者もまたトランプだろうと見る米国人の複雑な思いがはっきり見て取れた。

 わずか30人ほどのワシントンの人々の反応だけで米国大統領選挙を予測することは無謀だ。だが、その日の経験は米国にあふれている多くの世論調査の数値よりはるかに生々しくと迫ってきた。世論調査でのトランプの国政遂行支持率は、再選とは距離が遠く見える40%台序盤だ。だが、実際の米国の空気は、世論調査と異なることが多い。「子犬にでも投票してやる」としてトランプ嫌悪を表わす人がいるが、「トランプを倒すのは容易でない」ということにも大多数が共感する。

 ロバート・ミュラー特別検察官の「ロシアスキャンダル」捜査報告書は、トランプの再選街道にさらに力を与えそうだ。ミュラー報告書が「トランプ‐ロシア大統領選挙共謀を確認できなかった」と“免罪符”を与えることによって、トランプは就任後任期の85%にもなる時間をしばっていた鎖を投げ捨てた。ミュラー報告書が再選保証カードではないが、大統領職を脅かしてきた雷管を取り除いたトランプは、はるかに自信を持って再選に集中できることになった。

 米国大統領選挙の本当の勝負はミュラー以後からだ。最大の変化要因は経済だ。米国の専門家たちは、比較的高い経済成長率と可処分所得の増加、低失業率、低いガソリン価格などをあげて「今日投票すればトランプが勝つ」と診断する。CNNの最近の調査では、回答者の71%が「米国経済は良い」と答えた。ただし、トランプに有利な経済状況が来年も続いているかは分からない。

 民主党の大統領候補も重要な変化要因だ。世代、性別、人種、理念指向など多様な15人が参入して興行を試みている。しかしまだ、これといった“トランプキラー”は見えない。

 一方、トランプは「全国からの均等な支持」をあきらめ、核心支持層を攻略して「大統領選挙の勝利に役立つ票」をしっかり固めている。トランプは2016年の大統領選挙で、全体得票率46.1%でヒラリー・クリントン(48.2%)に負けていながら、州別勝者独り占めという制度のおかげで選挙人団で勝利(306人対232人)した。今回も彼は徹底的にこの公式に則り競合州の攻略に出ると見られる。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 残余任期が1年10カ月でなく5年10カ月になるかもしれないトランプは、朝鮮半島にとってはどんな存在だろうか?彼の前には、北朝鮮と果敢に交渉する方案と、緊張管理さえできれば核心談判は後回しにする方案が置かれている。この選択肢の前で、トランプがあせっているとは思えない。北朝鮮もよく考えるべき点だ。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/887809.html韓国語原文入力:2019-03-28 19:07
訳J.S

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