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[寄稿]大韓民国100年、清算なき歴史

登録:2019-02-10 21:30 修正:2019-02-11 10:24
キム・ヌリ中央大教授・独文学//ハンギョレ新聞社

 2019年は歴史的な年だ。2・8独立宣言、3・1革命、上海臨時政府樹立がすべて100周年をむかえる。“大韓民国”が、自主独立運動の火の手に乗って遠い他国で誕生してから1世紀を迎えたということだ。

 大韓民国が経てきた過去の1世紀は、実に残酷な時代だった。近代史のあらゆる矛盾と葛藤を、私たちほど尖鋭に体験した国は世界中どこにもない。植民支配、冷戦と分断、戦争と軍事独裁で綴られた韓国現代史は、そのまま帝国主義、民族主義、社会主義、資本主義、民主主義という近代のすべての理念が互いに衝突し絡まった歴史の現場だった。

 過去100年の韓国現代史を振り返り最も驚くべき点は、苛酷な歴史による多くの悲劇にもかかわらず、過去がまともに清算されたことがただの一度もないという事実だ。大韓民国ほどに、過去が清算されなかった国が他にあるだろうか?日帝の高等警察の刑事が解放後にも独立闘士を尋問した国、日本軍の将校が解放された国の大統領になり、それでも足りずにその娘までが大統領になる国、ファシスト親日派が作った歌を“愛国歌”として歌う国―それが大韓民国だ。親日の過去清算と関連してみれば、解放された空間で親日派が民族主義者を制圧した「反民特別委」の武装解除が歴史の行方を決定づけた分岐点だった。

 問題は親日の過去だけではない。良民虐殺の過去、軍事独裁の過去、司法殺人の過去、拷問犯罪の過去、御用学問の過去…。何一つまともに清算されたことがない。今も変わらず多くの盧徳述(ノ・ドクスル)、宋堯讚(ソン・ヨチャン)、朴正煕(パク・チョンヒ)、梁承泰(ヤン・スンテ)、李根安(イ・クンアン)、葛奉根(カル・ボングン)が、この社会を支配しているのが私たちの現実だ。

 清算されなかった過去は、韓国社会の隅々に漂っている微妙な悪臭の震源だ。特に親日の歴史、独裁の歴史は、現在進行形だ。新聞を広げてみよう。「慰安婦」被害者と強制徴用賠償問題、スパイ操作事件、5・18(光州民主化運動)に対する妄言などは、すべて清算されなかった過去から発散される日常化された悪臭だ。

 過去清算は、社会改革の前提条件だ。過去清算なしには社会改革もない。ドイツの場合を見てみよう。ドイツの68革命は「過去清算革命」であったし、これを通じてドイツは「過去清算の国」としてよみがえることができた。これが70年代の全面的な社会改革の強固な土台になった。私たちの場合、ろうそく革命の熱気がこれほど簡単に冷えていった理由は、ドイツとは異なり政治革命が過去清算革命に一歩進むことができなかったためだ。

 過去の清算はまた、国家発展の動力でもある。ドイツは徹底した過去清算を通じて国際的に道徳的権威を回復し、国内的には社会的正義を実現した。これが国家発展の踏み台になったことはもちろんだ。それに対して、韓国は過去清算の不在により国際的に道徳的権威を認められず、国内的には冷笑主義と虚無主義が拡散する国になった。韓国社会を取り巻く巨大な無力感と敗北主義の根源は、清算されなかった過去につながっている。

 新たな100年を目前に控えた大韓民国の最優先課題は、清算されずにきた過去が吹きだす“百年間の悪臭”を取りはらうことだ。これ以上、過去の清算を猶予できない。裁判所、検察、警察、国家情報院、国会、学校など、社会の各領域で、過去に対する断罪までではなくとも、少なくとも冷徹な評価作業は実施されなければならない。

 過去をめぐる闘争は、未来に向けた闘争だ。過去を支配する者が未来を支配する。韓国の民主改革勢力の度重なる失敗は、まさに“過去闘争” “歴史戦争”を放棄したところに起因するという事実を忘れてはならない。

キム・ヌリ中央大教授・独文学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/881541.html韓国語原文入力:2019-02-10 19:34
訳J.S

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