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[寄稿]平和は大地で、経済は花だ

登録:2019-01-20 22:05 修正:2019-01-21 07:40
キム・ヨンチョル統一研究院院長//ハンギョレ新聞社

 大地がなければ花が咲けないように、平和がなければ経済もない。美しい花を望むなら、汗を流して大地を耕さなければならない。経済が難しい時ほど、平和が大切だ。もちろん手で実際に触れることのできない平和は飛んで行きやすく、日常の生活が良くなってこそ平和も持続可能だ。北朝鮮にも平和経済論を適用してみることはできないだろうか?北朝鮮と米国の交渉でも、おそらく平和と経済の関係が核心となる。

 非核化交渉の失敗を展望する「懐疑論」は、実のところ理念であり、盲目で原理主義だ。懐疑論者は北朝鮮の動機と利害を常に固定不変なものと見る。しかし存在する全てのものは変わる。変わらないのは偏見だけだ。金正恩(キム・ジョンウン)体制の戦略を分析する時、過去との共通点と差別性を区分しなければならない。決定的差異は経済だ。2011年12月、新しい指導者の最初の指示は「生産者が生産活動において主人としての責任と役割を尽くせるようにする方法」を探してみろということだった。その後「ウリ式(私たちのやり方)経済管理」という名前で多様な経済措置が登場した。

 改革とは呼ばないが、“事実上の改革”と見られる措置は、最近7年間で粘り強く進化した。計画自体が分権化され、企業と農場の自律性が計画内に入ってきた。市場は、金正日(キム・ジョンイル)時代には計画の外側に“自然発生的”に存在したが、金正恩(キム・ジョンウン)時代に計画内に入ってきて定着した。企業の経営権を法的に許容し、分権と自律を法律で保障した。価格制定権を下におろし、変動価格を基準とし、外貨の流通を合法化した。

 消費領域の変化はどうか。国営商店も、価格を決め、個人も国営流通網に投資できる。供給者ではなく消費者が商品を決め、北朝鮮の衣服と建物と都市は計画時代の白黒から市場時代の色に塗り変えられた。商品の包装紙が変わり、商業広告が登場し、中国の改革開放初期に見られた「赤い資本家」が登場した。「国家経済発展5カ年戦略」(2016~2020)の核心が改革と開放だ。

 金正恩は最近、なぜ4回も中国を訪問したのか。北朝鮮は、中国の改革開放経験を学ぼうとしている。改革開放はこれまで経てきた歴史だけではなく、今後の未来も学習対象だ。北朝鮮指導者の中国訪問経験は、直ちに北朝鮮の主要政策として登場する。昨年、中国の農業科学院を訪問した後には営農の科学化を、今年同仁堂を訪問した後には製薬産業の現代化を推進している。

 北朝鮮の指導者は、米国にも「経済発展の夢」を話しただろう。しかし、これまで米国は誤解した。金正恩委員長が未来の夢と劣悪な現実を率直に話した時、ことによると“制裁の効果”と誤認して、北朝鮮の弱い輪を発見したとも考えられる。しかし、経済がいくら重要であっても、平和を放棄することはない。生きてこその経済であり、死ねば何の役に立つだろうか。北朝鮮は、経済のために平和が必要だ。制裁のために核兵器と経済を同時に持つことはできないことも知っている。しかし、米国が“経済の門”を閉じれば、交渉の動機はなくなる。今後も同じだ。米国が経済の門を開けなければ、北朝鮮は中国と「新しい(経済発展の)道」を模索するだろう。

 2回目の朝米首脳会談を準備して、2018年下半期の失敗を繰り返さないことを願う。もう時間もない。米国が望む非核化の水準は、結局のところ制裁緩和の水準にかかっている。この間、制裁は核開発を阻み北朝鮮を交渉に戻らせる圧迫手段だった。非核化交渉の局面では、当然制裁の用途が変わらなければならない。

 すべての手段の効果にはみな適切な時がある。今こそ制裁緩和という手段を活用する時だ。制裁を緩和し北朝鮮住民の生活経済を改善し、生活の質を向上させることができるならば、換言すれば、北朝鮮指導者の夢と北朝鮮住民の新しい未来を一致させられるならば、それこそ「復元不可能な転換」であり、非核化の強力な動力になるだろう。

 北朝鮮は、経済改革という虎の背に乗った。ゆっくり歩く虎を、今は走らせなければならない。虎が走れば、下りたくとも下りられない。虎はどのようにすれば走るだろうか。制裁を緩和しなければならない。花を咲かせたい北朝鮮は大地が必要で、だからこそ核を放棄する意志がある。花を咲かせる機会を与えなければ、大地を耕す理由も消える。北朝鮮で花が咲けば、朝鮮半島と北東アジアと米国でも花が咲く。そして「雇用なき低成長のトンネル」に絶望している韓国の若者の胸にも花が咲くだろう。花咲く春のために、凍った大地を進む時だ。

キム・ヨンチョル統一研究院院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/879127.html韓国語原文入力:2019-01-20 19:20
訳J.S

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