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[コラム]“なじみのない”文在寅、“腰の低い”文在寅

登録:2018-12-14 08:51 修正:2018-12-18 09:35
文在寅大統領が11日午前、忠清南道世宗市の政府庁舎で開かれた閣議に出席し冒頭発言を終えた後、新たに任命されたホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官を紹介している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)氏はたいてい直接電話を受けた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の最高実力者だったが、記者らの電話に対して所管業務を忠実に、丁寧に説明した。業務中なので返答できなければ、夜遅く直接電話をかけてきたこともあった。通話は10分を軽く超えたりもした。

 このような記憶が、私を少なからず困らせる。「それは昔の文在寅だ」という人々とよくぶつかる。彼の誠実さを弁護すれば「見て分からないのか」と責められる。何人かの知人は「ようやく作った政権なのに…。このまま行けば結末が見える。胸がつぶれそうだ」と言った。「厳しく批判してほしい」という注文も多い。いずれもろうそく革命に参加し、文在寅大統領に票を投じた人々だ。

 「文在寅の弁護」は、1日の国外歴訪中の専用機内での記者懇談会でいっそう説得力を失った。思い通りに解決しない北朝鮮核問題を「金正恩(キム・ジョンウン)の年内答礼訪問」に持っていこうとする切迫感は理解できる。それでも、国内の懸案には答えないとして、直接記者たちの言葉を切ってしまったのは、少なからぬショックだった。「低い姿勢」で疎通するのが彼の最大の魅力であり資産なのに、とてもなじみのない姿だった。非正規労働者との隔てのない対話、涙ぐむ遺族を抱きしめた光州5・18記念式…。「不通の朴槿恵(パク・クネ)」を身にしみて経験した国民は胸が動かされた。政治的反対者も感動した。社会全体が癒されるような気持ちも共有した。もう遠い昔のようだ。

 ある瞬間から「不通」のイメージが重なる。保守マスコミの巧妙なフレーム、野党の攻勢のせいが大きい。大統領府関係者も悔しさを訴えた。どの大統領よりも多くの人に会い、会議と行事を通じて絶えず疎通しているという。悔しい面もなくはない。自ら招いたことも少なくない。国務会議、首席補佐官会議で文大統領のメッセージは溢れている。しかし、言いたいことや指示ばかり多いという感じを拭えない。「最低賃金引き上げの肯定的効果が90%」「自動車の生産が再び増加し、造船分野も1位を奪還した。水が入ってくるときに櫓を漕げという言葉のように…」というのが代表的だ。専用機記者懇談会の「なじみのない文在寅」は、そのように徐々に変わってきた「低い姿勢の文在寅」かもしれない。

 「限界効果の体感」のせいもある。感動イベントを作り続けるのも難しいが、それすらも繰り返されれば単なる「大統領の行事」になる。辞任の圧力にもかかわらずポストを守っていたタク・ヒョンミン儀典秘書官室先任行政官が今年6月に辞意を表明したとき、大統領府関係者は「これ以上新しくすることがないという負担のため」と言った。実際、南北首脳会談を除けば、今年は昨年ほど記憶に残る感動的な名場面はない。

 政権2年目、その位置を成果に替えるのが正常な経路だ。ところが、これといったものがないという。雇用が伸びないといってわめき立てる。住居の安定を叫んだ政府で住宅価格が暴騰し、多くの人々を絶望させた。改革のためにチョ・グク民政首席を留任させたというが、検察・警察改革はいまだ遅々として進まない。国家情報院法改革も五里霧中だ。むしろ大統領府の参謀たちが次々と事故を起こしている。

シン・スングン論説委員//ハンギョレ新聞社

 今年も終わりゆく。執権3年目になる。文大統領の支持率は就任後最低値を更新し続けている。警告灯がついた時、初心を思い出すのが国民の支持を得る近道だ。誤った統計・民生情報を入力し、体面を汚した歴訪日程を組んだ参謀が誰なのか、なぜそんなことが起きたのか、問いたださなければならない。大統領の支持率に頼り役割を果たせなかった参謀を選り分け、新年には刷新をしなければならない。苦言を言える人材を探して、ぜひ側近に置いてほしい。

 就任時、随時疎通するとした約束も肝に銘じなければならない。言いたい言葉よりも、国民が知りたいという懸案に答えなければならない。「国民との対話」であれ、新年会見であれ、質問する機会を与えなければならない。いつまで外国メディアのインタビューばかり書き写さなければならないのかも疑問だ。大統領は国内メディアのインタビューにも応えてほしい。

シン・スングン論説委員skshin@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/874339.html韓国語原文入力:2018-12-13 19:41
訳M.C

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