本文に移動

[寄稿]“営業利益”と“財産権”が教育にとって代わる時

登録:2018-10-16 20:49 修正:2018-10-17 07:35
キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長//ハンギョレ新聞社

 幼稚園と大学の少なくとも50%は公立にしなければならない。父母と法人の私益を満たす反教育的な機関を、市民が統制する公共教育機関に切り替える法と制度の改善が急がれる。世界のどの国も、教育の入口と出口を営利機関が担当することを放ってはおかない。教育先進国はすべて公教育先進国だ。

 韓国は幼稚園と私立大学の天国だ。7億ウォンの政府支援金でブランド品を買いだめした幼稚園園長に対する父母の怨念の声が高いが、実は学生の授業料を数十、数百億ウォン引き出してきた多くの私学財団の不正に比べれば雀の涙だ。これは、韓国程度の発展水準を持つ国、特に韓国とよく似た教育熱を持っている日本や台湾でも見当たらない現象だ。仮にも教育機関が、このように不正と腐敗の代名詞になっていても、直すどころか政府樹立から70年間にわたり繰り返されてきた国はおそらく韓国しかないだろう。

 国民の税金はいつも湯水のように漏れて、該当する学校の学生と父母の怒りはいつも瞬間のこだまで終わった。監査機関や教育部の監督不良を叱責するなど、マスコミの空騒ぎは、不正の主犯が拘束されたり一時的に退くことで終わった。

 なぜそうなのだろうか。韓国の私立幼稚園と私立大学は、韓国で最も強力な利益集団だ。これらは、与野党政界、教育官僚、マスコミ、宗教界と緊密に絡まっている。それで選出職の国会議員や市・道教育長、自治体首長もこれらの不正に触れることを敬遠する。根源的には、私立学校法上これら私立の幼稚園と大学は公共性を持つことになっているが、営業利益を追求する営利機関の性格も持っている。ところが、韓国では乳児教育と大学教育の80%以上をこれら営利機関が担当していて、私立中心の教育体制を維持する米国よりも比率が高い。

 多くの国家予算が支出されるが、行政的監視や不正に対する法的処罰は米国よりはるかに軽微なので、これらの機関の不正は黙って許されているのも同然だ。裁判所は、紛争が起きても概して私学の営業利益と財産権を守る側に判決を下してきたし、“従前理事”という奇怪な概念まで動員して、縁戚財団を擁護してきた。歴代政府と政界がこれを知っていながら放置した理由は、これらのロビー力のためでもあるが、教育と学問の百年大計、すなわち教育の内容、価値と哲学を確立することには関心がなかったためだ。一方、出世指向の教育熱にかけては世界最高の韓国の父母は、公民の育成としての教育に対する関心は子どもへの愛の10%にも及ばない。

 自律性と多様性を生命とする私学には、明確に存立の必要がある。民族私学の精神を持っている一部の私学は、日帝強制占領期間や解放後に権力の統制に対抗し、自らの教育哲学を実践したケースもあった。しかし解放後、特に軍事独裁と資本主義秩序が定着した後には、そのような私学はほとんどなくなり、私学は反民主、腐敗、反社会性のアイコンになった。韓国に入試予備校ではない「自律型」私立高があっただろうか?自らの学風と哲学がある私立大学があるだろうか?

 毎年2兆ウォン(約2千億円)の税金が私立幼稚園に、そして5兆ウォン(約5千億円)の税金が私立大学に投与されるという。これだけの金があれば、おそらく数千個の公立幼稚園を作ったり運営でき、公立大学を数十校作り、経済と社会の未来を切り開く基礎科学者と人文社会科学者数千名を養えるはずだ。ところがそれができない。私立幼稚園の園長が国公立幼稚園の拡大を決死阻止し、政治家と経済官僚はどうして大学と学問の公共性が重要なのかを知らない。

 幼稚園と大学は教育の入口であり出口だ。すなわち、その社会の最も基本的な論理と精神が子どもたちの新鮮な血と初めて接触するきわめて重要な現場であり、大学は青年が自身の知識を社会にどのように活用すべきかを悩むべききわめて重要な現場だ。ところが、この教育の入口と出口を“営利”の論理が支配しているならばどうなるだろうか。韓国の子どもたちと学生は、社会で市民、公人、職業人、エリートとして生きていく基本徳性と精神を習う機会を持てないまま社会人になる。過去一世紀の間、韓国のエリートのゆがんだ姿はそこから生まれた。

 新任のユ・ウンヘ教育部長官は、教育のパラダイムを変えると話した。どこからどこへ行くということなのか明らかでない。既存の教育のパラダイムとは何か。出世、成功のための私的利益が圧倒する教育、家族と国家が莫大な予算を支出しても国家や社会に公的責任意識を持つ人、真に創意的で自律的な人間を養成できない教育がそれだ。

 幼稚園と大学の少なくとも50%は公立にしなければならない。父母と法人の私益を満たす反教育的な機関を、市民が統制する公共教育機関に切り替える法と制度の改善が急がれる。世界のどの国も、教育の入口と出口を営利機関が担当することを放ってはおかない。教育先進国はすべて公教育先進国だ。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/866076.html韓国語原文入力:2018-10-16 19:08
訳J.S

関連記事