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[コラム]乙と丙の戦争、会心の笑みを浮かべる者は

登録:2018-07-20 22:28 修正:2018-07-21 10:02
全国コンビニ加盟店協会の会員たちが16日午後、ソウル城北区の協会事務所で最低賃金引き上げ共同対応記者会見を開き、取材陣の質問に答えている=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 最近、コンビニは機能の多角化、単身世帯の増加などで、2017年の売上が前年比10.9%増えて、売上規模が23~24兆ウォン(約2兆4千億円)に達すると推測される。流通市場占有率も、2016年の15.7%から16.4%に拡大した。大企業が主軸のコンビニ本社は増えた売上で笑っているが、全国のコンビニ店主は生存の危機で泣いている。どれほど矛盾的な状況なのか。

 さらに大きな矛盾は、コンビニ本社の一人占めと貪欲を制御して、コンビニ店主の収益向上を図ることは正しいが、一部のコンビニ店主とかろうじて最低賃金を受け取るアルバイト労働者の間に葛藤が生じているということだ。こうした乙(弱者)どうし、乙と丙(最弱者)が葛藤する時、その陰で会心の笑みを浮かべる、この事態の本当の責任者は誰か?

 一つの事例を見よう。19日付ハンギョレの1面に報道されたコンビニ店主、キム・ミンチョル氏(仮名)の今年5月の収入・支出内訳を見れば、3100万ウォン(約310万円)の売上があったが、本社の物品代金2400万ウォン、ロイヤリティー240万ウォン、賃貸料100万ウォン、カード手数料35万ウォンなどを支払った結果、逆に72万ウォン(約7万円)の赤字だった。この店舗の人件費は250万ウォンだった。これを見れば、自営業者の生存権危機が最低賃金ではなく収益がざっくり減る過当競争構造、本社の暴利、過度な賃貸料やカード手数料にあるということを即座に知ることができる。

 本社はすでに物品供給の代価としてマージンを付けて2400万ウォンを持って行ったが、そのうえなぜロイヤリティーとして何と35%も適用して240万ウォンを持ち去るのか、問い詰めずにはいられない。このように多くの加盟店主や賃借店舗の商人が、ロイヤリティー、店舗賃借料、カード手数料としてそれぞれ数百万ウォンを負担していたため、この問題さえ解決されれば最低賃金の引き上げ負担に耐えながらも収益がさらに増えると期待している。

 それでも一角では、自営業者の生存の危機があたかも最低賃金の引き上げに起因しているように世論を糊塗する。最低賃金の引き上げが一部負担を与えるとしても、自営業者600万人のうち雇用員がいる自営業者は160万人余りで、その影響は限定的だ。数十年にわたり中小企業・中小商工人を収奪し、生存権を脅かしてきた財閥と大企業が、毎年最低賃金の決定時期になる度に、中小企業・中小商工人を強く愛しているかのように豹変するのは一層嘆かわしい。最低賃金の引き上げに反対し、さらには削減まで主張する態度を見せている。

 彼らは実際には零細自営業者を心配しているのではなく、これまでまともに待遇されなかった労働の価値が上昇し、正しい評価を受けることが嫌なのだ。また、最低賃金が上がれば、結局は中小企業、中小商工人の支払能力に対する論議がおき、自分たちの貪欲と一人占めを規制する共生政策、経済民主化措置が並行されることを恐れるためだ。

 コンビニ本社がすべて財閥で、大企業の事業場に比べて自営業者に高い率の手数料を賦課しているクレジットカード会社もすべて財閥・大企業で、事業時に過度な通信料金を受け取る通信会社もすべて財閥で、預貸マージンで暴利を貪る金融会社もすべて大企業だという事実を忘れてはならない。

アン・ジンゴル民生経済研究所長・尚志大学招へい教授//ハンギョレ新聞社

 今、彼らが一部の中小企業や中小商工人に最低賃金も払えないようにした自分たちの貪欲・収奪・一人占め構造を隠すために、乙どうしや乙と丙の間の葛藤と争いをそそのかし、その陰で会心の笑みを浮かべている。しかし、最低賃金の大幅引き上げと、それにともなう一部の中小企業や中小商工人の支払能力向上、および関連支援対策は十分に並立可能で、私たちの社会は必ずそのように進んでいかなければならない。

アン・ジンゴル民生経済研究所長・尚志大学招へい教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/854204.html韓国語原文入力:2018-07-20 19:04
訳J.S

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