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[ルポ]月300万以上売り上げてもコンビニ店主は赤字だった

登録:2018-07-19 06:50 修正:2018-07-19 14:44
ある店主の精算書を見てみると 
 
品物の価格除けば67万円残るが 
本社に加盟手数料24万円 
19個の負担費用に7万円超える賃貸料 
 
「最低賃金の上昇は大変だが 
本社の二重三重の収奪が本当の問題」
コンビニ店主キム・ミンチョルさん(仮名)の5月の主な清算内訳//ハンギョレ新聞社

 18日、ソウル江北(カンブク)の閑静な住宅街に位置したコンビニエンスストア。このコンビニを8年間運営してきたキム・ミンチョルさん(仮名・49)は「最低賃金が引き上げられると、当然大変だ。しかし、本当に問題なのは店主らがいくらあがいても金を稼げないコンビニフランチャイズ産業の収奪構造だ」と語った。

 収奪構造とはどういうものか、気になった。キムさんは、記者を人一人がやっと入れる広さの事務室に連れて行き、今年5月分の「加盟店精算書」を出力してくれた。飲料やアイスクリーム類の購入が多い夏と寒い冬の売上げにはかなり違いが出るが、5月は1年中で最も平均的な月だという。「項目があまりにも複雑で、私も1カ月にいくら稼いでいるのか、よく分からない」と彼は言った。

 精算書を実際見てみると、キムさんの言葉は大げさではなかった。収入・支出項目だけでも70項目にのぼる。まず、一番上の「商品売上額」を見ると、3100万ウォン(約307万円)だった。「よく見てください」。キムさんは一つ一つ説明し始めた。3100万ウォンの売り上げの中で、2400万ウォンが「商品売上原価」だ。簡単にいうと、品物の値段だ。在庫コストなどを合計して、最終的に計算された利益は670万ウォン(約67万円)だ。備考欄には「GP率21.53%」と書かれている。マージン(売買差益)だ。キムさんは売上原価が不透明だとして、疑問を呈した。彼は「購買力のあるコンビニ本社が納品コストを少し下げるだけでも、店主らが泣き言を言うようなことはないだろう」と話した。

コンビニ店主キム・ミンチョルさん(仮名)の5月の清算内訳//ハンギョレ新聞社

 ここからロイヤリティと呼ばれる加盟手数料が差し引かれる。売り場ごとに異なるが、キムさんの売場は35%だ。670万ウォンから約240万(約24万円)の加盟手数料を差し引いた432万ウォン(約43万円)がキムさんの取り分だ。キムさんはこれが「二重収奪」だと話した。商品の供給ですでにばく大な流通マージンを残すコンビニ本社が、あえてロイヤリティまで取る必要がないということだ。実際、チキンなど外食中小フランチャイズは流通マージンだけを取る。ロイヤリティは取らない。韓国フランチャイズ産業協会のパク・ホジン室長は「現在、ロイヤリティを別に取るフランチャイズ本社はないと言ってもいい」と話した。

 それでも1カ月に432万ウォンなら韓国の賃金労働者の月平均所得329万ウォン(約32万7千円)よりは多い。問題はこれが手取りでないことにある。清算書の2ページ目には「加盟店の負担費用」項目が載っていた。合わせて19項目だ。消耗品費(8万8千ウォン)、店舗の維持・補修費(1万2千ウォン)、電算維持・補修費(5万1千ウォン)、電気料(34万ウォン)、包装費及びレジ袋保証金(9700ウォン)、カード手数料(26万ウォン)などが次々と出ていく。このうち「商品廃棄」項目はかなり大きな70万ウォン(約7万円)だ。賞味期限が過ぎた商品を廃棄処分して発生した損失だ。最近、弁当やおにぎりなどが人気で増えているという。これらの製品の賞味期限は一日だ。最少量を注文しなければならないが、商品棚が空いているとマーケティングに不利なため、仕方なく必要以上にたくさん注文している。

 加盟店の負担費用に加えて「その他の金額」がまた差し引かれる。「未送金」(132万ウォン)と「在庫商品不足」(40万ウォン)が目を引く。未送金は毎日発生する現金の売上を本社に送金しなければならないが、欠落した金額だ。事実上の“利子”に他ならない未送金違約金(7000ウォン)まで納めなければならない。在庫商品不足は盗難などで販売額と品物の在庫量が合わない場合だ。これも店主が負担する。代わりに本部支援金という項目で、加盟本社から販売奨励金(100万ウォン)や電気料支援金(17万ウォン)、カード手数料支援金(9万ウォン)などが入金される。これが185万ウォン(約18万4千円)ほどだ。

不透明な品物の値段 
月売り上げ310万円のうち240万円分占める 
本社、大量購買に流通マージン残しながらも 
最初から当納品コストを相対的に高く設定 
差し引かれるロイヤリティ 
8年間運営しても加盟の手数料は35% 
中小フランチャイズにはない二重収奪 
加盟店の負担費用まで合わせると“三重” 
コンビニ店主の願い 
「費用多いため、人件費が負担に 
本社は手数料引き下げるか廃止し 
政府は近接出店禁止制度を設けるべき」

 精算書の最後のページには、すべての項目に対する「加盟精算実金額」が書かれている。「278万ウォン」(約27万7千円)だ。1カ月3100万ウォンの売り上げを上げたキムさんに最終的に入金された金額だ。これで終わりではない。アルバイト二人の人件費(250万ウォン)と賃貸料(100万ウォン)も支給しなければならない。すなわち、72万ウォン(約7万2千円)の赤字だ。キムさんの店舗の一年の売上は3億ウォン(約3千万円)程度で、コンビニの平均売上(約6億ウォン)より低いため、一般的な状況ではないかもしれないが、零細コンビニ店主の苦労がより大きいことを裏付ける。

 店主らが人件費に敏感なのは、既に(多くの項目で)差し引かれた金額から、最終的に人件費を支払わなければならないからだ。実際には本社に入金する費用がはるかに多いが、最終収益から人件費を差し引く仕組みであるため、相対的により大きく見えるのだ。

 キムさんは「コンビニはお金を儲けるための場所ではなく、生き残るために必死になるところ」だとし、「できるだけ長く持ちこたえなければならない。そうすれば、チャンスが生まれる」と話した。チャンスとは、近所のコンビニ店主が先に廃業することをいう。

 キムさんのコンビニから歩いて5分の距離に、コンビニが8店ある。現行制度ではこれを規制できない。コンビニが爆発的に増加し、一つの建物の中で2店が営業するなど、社会的問題になったことを受け、公正取引委員会は2012年、250メートル以内にコンビニ出店を制限する取引基準を作った。しかし、この基準は2014年に密かに廃止された。企業活動を過度に制約するという規制緩和の世論の流れに乗ったのだ。その後、コンビニは同一ブランドでなければ、いくらでも近接出店が可能になった。

 キムさんも2010年の出店後、しばらくはコンビニ2店舗を同時に運営していた。月に800万ウォン(約80万円)の収益が出たこともある。しかし、近接出店禁止制度がなくなってから、収益が急激に減り始めた。これは人件費の上昇というよりは、制度による影響が大きい。

 人件費が上がれば、大変なのは事実だ。本社に納める費用が引き続き発生するのに、人件費の上昇分が追加負担になるからだ。法定最低賃金を守ろう努力してきたキムさんは、昨年1カ月当たり平均220万ウォン(約21万9千円)の人件費を支出した。これが今年からは250万ウォン(約24万9千円)となり、来年には270万ウォン(約26万9千円)になるものと予想している。

 しかし、彼は人件費より本社との不公正な関係と制度の改善が急がれると語った。「人件費は大幅に引き上げられるとしても、時間当たり1000ウォン程度だ。一方、無制限にコンビニの出店が可能になってから、コンビニ本社は数千億ウォンを稼いだ。その収益は店主らから出たものだ」とキムさんは話した。店主の事情はどうあれ、いったん加盟店を増やせば、本社が流通マージンを残すと共にロイヤリティも得るため、さらに大きな利益を得られる構造なのだ。

 彼は、加盟本社は加盟手数料を減額または廃止しなければならず、政府も基本的に近接出店をしないように制度を作るべきだと主張した。また、「店主らが団体で加盟本社と交渉できる権利を持たなければならない」と話した。キムさんは零細コンビニを「難破船」とし、「周辺に加盟本社と政府という救命ボートがあるにもかかわらず、誰も助けに来ない」と嘆いた。

 キムさんに「コンビニを開店しようとする人がいれば、何とアドバイスするか」と尋ねた。彼の答えは「誰かがとなりで死んで行く姿を見たければ、そうしろと言う」だった。

イ・ジョングク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/853920.html韓国語原文入力:2018-07-19 05:01
訳H.J

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