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[寄稿]市民のエネルギーと政治

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 3月上旬、日本政治は内外の激動に揺さぶられてきた。1つは朝鮮半島における緊張緩和を求める動き。もう1つは、日本国内における森友学園に対する国有地の不当な譲渡に関して財務官僚が嘘をついていたことが明らかになったという事件である。

 北朝鮮がトランプ米大統領に直接会談を呼び掛け、大統領が即座にこれを受け入れたことには、私も驚いた。これで北の核・ミサイルの脅威を解消するというゴールに一直線に進むとは思えない。それにしても、直接対話が行われれば何らかの成果はあるだろうし、戦争の危険性は大きく遠ざかることは確かだろう。冬季オリンピックという好機を捉え、北との対話の窓を開いた文在寅大統領の戦略には敬意を表したい。

 朝鮮半島情勢の展開から、日本は取り残されている。オリンピック開会式のために訪韓した安倍晋三首相は韓国に米韓合同軍事演習を行うよう求めた。本人はアメリカの代わりに圧力をかけたつもりだろうが、肝心のアメリカが方針転換を決断した。日本の圧力一辺倒の路線が宙に浮いている。米朝対話のニュース発表の直後、安倍首相は4月に訪米しトランプ大統領と会見すると発表した。年長の子供たちの遊びに加わりたいと付きまとう幼児のような印象である。現状では、日本が朝鮮半島をめぐるゲームのプレーヤーになるのは無理である。朝鮮半島の安定化のための多国間の枠組みができれば、日本も応分の役割を果たすことを願うしかない。

 国際情勢の急展開についていけないのは、日本の政治指導者が1つの正解しか持たない、それに対する疑問や批判に対して一切耳を貸さないという傲慢に陥っているからである。そして、傲慢に対する咎めが森友疑惑の急展開という形で安倍政権を揺さぶっている。安倍首相夫妻と親密な関係にあった人物が経営する学校法人に対して、小学校開設のために国有地が大幅に割引されて売却された件は、この1年国会でも追及されてきた。しかし、首相も、国有地を管理する財務省も、具体的な根拠なしに、首相は潔白であり、売却は適正に行われてきたと強弁してきた。しかし、朝日新聞が、この売却案件は特殊なものだと述べた行政文書を、首相や財務官僚の国会答弁に整合するよう後で改ざんしたと報じて、一気に疑惑は深まった。そして、財務省自身、文書の改ざんがあったことを認めるに至った。

 2012年末に第2次安倍政権が発足して以来、政権はテレビ局にしばしば圧力をかけ、批判的な報道を封じようとしてきた。また、新聞、テレビの幹部と首相がしばしば会食し、親密な関係を作ってきた。安倍一強体制と言われる中、政権の問題点を鋭く指摘するような議論はどんどん少なくなっていった。

 森友疑惑が最初に指摘された時、政権はこの問題を軽く見ていたに違いない。問題ないと強弁を続ければ、メディアも取り上げなくなり、国民も忘れるだろうと高をくくっていたのだろう。しかし、事は行政の公平性や法の下の平等という近代国家の骨格に関わる重大問題である。政府自身が事件の全容をすべて説明するまで国民の怒りは続くだろう。

 韓国では、朴槿恵政権の腐敗に対する市民の怒りが文在寅政権を生み、それがさらに朝鮮半島の緊張緩和につながった。日本でも、公正な政府を求める市民の動きから変化を起こすことを期待する。日本の場合、野党の分断、無力という問題があるが、まずは市民が怒り、声を上げることから政治の修復が始まる。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2018-03-18 17:56

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/836607.html

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