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[寄稿]世宗市に社会科学院を設立しよう

登録:2017-06-13 22:25 修正:2017-06-14 07:58
キム・ドンチュン聖公会大学NGO大学院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 私は、知識の慢性的な外国依存、ソウルの主要大学による韓国国内での地位独占構造を克服し、韓国の政治・社会で提起される問題意識を持つ社会科学博士を養成するために、国家社会科学院を設立しなければならないと考える。ソウルの一局的知識権力独占構造を多極化し、地方国立大学の社会科学研究のハブ機能も遂行するためには、世宗市(セジョンシ)が最適地と言えそうだ。

 ろうそくデモと大統領選挙、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の当選以後、韓国社会は大きな転換点に立った。国家の未来のためにしなければならないことは数えきれない程多いが、その中で省けないことが教育政策、すなわち国家の未来のための高級人材育成と長期的な国家発展展望の樹立だ。ところで教育政策といえば、私たちはいつも大学入試の改編を思い起こすが、本当に重要なのは国家や社会の智力、すなわち学問生産能力だ。智力は国際大学ランキングでの韓国の大学の順位、あるいは教授の英語論文数にかかっているのではなく、大学が国家と社会の必要とする知識をどの程度生産しうるか、人類の未来のための代案を提示できるかという問題だ。

 2011年春、ユネスコと国際社会科学協議会が共同で「世界社会科学報告書」を発刊したが、この報告書執筆に韓国の社会科学界を代表する学者がただの一人も参加できなかったのはもちろん、韓国より学問的には遅れを取っていると考えていた“アフリカ、東南アジア、中国、およびラテンアメリカ”の学者たちが相当数参加したという事実が、韓国社会に大きな衝撃を与えた。

 米国内の留学生数で韓国の学生は世界3位だが、人口比で見れば圧倒的な1位だ。世界中のすべての国が米国の学術市場の影響圏下にあるのは事実だが、数十年にわたり教授や博士研究者を米国の大学から供給されている国は韓国のみだ。ソウルの上位圏大学の社会科学分野で、米国博士の比率は80%以上であり、経済学教授の95%以上が米国博士だ。他界した米国マサチューセッツ工科大(MIT)の経済学者、アムスデン教授は、韓国ほどに財閥大企業問題が重要な国はないが、韓国に大企業研究者が少ないのは本当に理解できないと叱責したことがある。他の重要分野も同じだ。米国の大学院は、韓国の学生たちにそんなことを教えるわけがないためであろう。

 何を誤ったのだろうか?大学の機能は学問と教育だが、今まで韓国で国民の立身出世、地位追求熱望に応じる学部中心の大学入学政策はあふれるほどあれど、国家の未来のための学問政策はなかった。大学院、特に博士課程の育成はいつも無視されてきた。私たちが知っている全世界の有名大学はほとんどが大学院大学だが、韓国の上位圏大学は基本的に学部大学であり、特に社会科学分野の博士課程はほとんどガランと空いている。習う学問的内容と学位取得後の就職可能性がなければならないが、その二つともが否定的だ。「学部は韓国で、博士は米国で」、「理論は中心部で、適用は現地で」は植民地知識循環体系の典型的な姿だ。

 そのためにソウル大や主要大学の学部定員を縮小し、博士課程を充実させようという要求は過去20年あまりの間に数えきれない程提起された。韓国研究財団の研究所支援事業、特に国内の人文社会系博士課程の学生支援もこうした趣旨から出発した。しかし、実質的に変化したことはほとんどない。主要大学が学部大学の既得権を放棄して、自ら研究中心の大学院大学に変身を試みれば理想的だが、今までの経験から見てそうした可能性は大きくない。

 そこで私は、知識の慢性的な外国依存、ソウルの主要大学の韓国国内での地位独占構造を克服し、韓国の政治・社会で提起される問題意識を持つ社会科学博士を養成するために、国家社会科学院を設立しなければならないと考える。ソウルの一局的な知識権力独占構造を多極化し、地方国立大学の社会科学研究のハブ機能も遂行するためには、世宗市が最適地と言えるだろう。世宗市に入居した政府機関、国策研究院の政策議題を受けとめて、地方国立大学と教授・研究ネットワークを構築すれば、大きなシナジー効果が発揮されるだろう。

 国の水準は大学、いや大学院と知識生産能力にかかっている。国家が自ら社会科学博士を養成できないという話は、まだ国家の長期政策がないということと同じだ。人文学、自然科学とは異なり、社会科学は現場性、問題意識、歴史性、そして政治・社会的適用の可能性に基づく普遍性を指向する。社会科学者などの国際的な交流は一層活性化しなければならず、国内の博士課程学生もさらに国際的水準に到達できる力量を育てなければならないが、重要なことは社会科学の独自性と独創性、博士養成の基盤作りだ。「学問」に関心を持った青年が“教授”になるために米国に行ってきて、韓国を理論適用の対象とすることはもう終わりにしなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大学NGO大学院長、新たな百年研究院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/798651.html 韓国語原文入力:2017-06-13 18:15
訳J.S(2159字)

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