最近示された中で、最も頷ける北朝鮮核問題の解決策は「90日間の休止期」案だ。
同案は米国が国連安保理の全面支援を得て90日間の「休止期」を北朝鮮に提案することを出発点とする。この期間中に米国は新たな対北朝鮮制裁を加えず、北朝鮮は核・ミサイル挑発で追加挑発を行わないことを約束してから、6カ国協議の代表らが集まり、2005年の共同声明に基づいた完全な対話に復帰できるかどうかを探索してみようということだ。提案者は、米下院外交委東アジア太平洋小委員長を歴任したドナルド・マンズーロ韓米経済研究所(KEI)所長だ。
同案は中国とロシアが主張する双中断(北朝鮮の核・ミサイル挑発と韓米軍事演習の同時中断)より出発が容易で、次の段階に向けた探索時間を持つメリットがある。また、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の言葉の爆弾による衝突で危機が高まるリスクを減らすこともできる。もし今のような状況が来年初頭まで続き、韓米合同軍事演習が再開されれば、危機指数がさらに高まるのは必至だ。
しかし、トランプ大統領はこのような案にはあまり関心がないようだ。彼は、国内外の強い反対にもかかわらず、イランの核協定への「認定を撤回」し、議会に代案作りを押し付けた。これは彼が核問題を真剣に解決しようとするよりは、国内支持層の結束を狙った政治的行動を重視していることを示している。イランは2015年に協定を妥結して以来、これに反する措置を取っていない。にもかかわらず、同協定を認めないのは対北朝鮮との交渉にもあまり興味がないということだ。
幸いにも、他の安保理理事国と欧州諸国はトランプ大統領と相反する態度を示している。米国が協定を破っても、イランが同調しない限り、協定はとにかく維持される。しかし、北朝鮮核問題においてはこのような構図は成立しない。何よりも米国と北朝鮮の関係が改善しない限り、いかなる核協定も生まれない。
トランプ大統領が掲げている米国優先主義は、米国ではなくトランプ本人の利益に集中する「トランプ優先主義」であることが改めて明らかになっている。彼はレックス・ティラーソン国務長官などが対北朝鮮対話について語れば、それを嘲笑うかのようにツイッターで「対話は時間の無駄」だと言い、「嵐の中の静けさ」「最後の選択」「全面破壊」などの荒々しい言葉で軍事措置を暗示する。彼はこのような行動を通じて、既存の政治秩序を信頼しない国内支持勢力を結集し、強い指導者イメージを誇示しようとしている。朝鮮半島の一定の緊張と対北朝鮮武力誇示は、米国の軍産複合体に新たな機会を提供し、韓国と日本を確実に包摂する道でもある。実際、米国の軍需産業はトランプ政権発足後、最大の恩恵者となった。
トランプ優先主義が続く場合、私たちにとっては二つの可能性が大きく懸念される。まず、北朝鮮核問題が解決の糸口をつかめず、悪化の一途を辿る可能性が高い。北朝鮮は核武装以外には代案がないことを重ねて表明している。これを北朝鮮の悪い意図と決めつけてしまうのは簡単かもしれないが、時間が経つほど核問題は新たな次元に飛び火するだろう。解決の糸口は米国と北朝鮮が対面することから見出すしかない。
短期的にさらに懸念されるのは、トランプ大統領が内部の矛盾から覆い隠すために外交・安保問題を活用することだ。彼は任期初期にもかかわらず、類を見ないほどの低い支持率を記録し、反対勢力も増えつづけている。「ロシアスキャンダル」に対する特検の捜査結果が出る来年の春頃には、彼に対する弾劾の動きも活発になるだろう。これらを甘んじて受け止め、恥をかくのは彼のスタイルではない。彼はあらゆる手段を動員して状況を覆そうとするだろうし、その中で対外軍事行動が含まれれば、最優先順位となるのはおそらく中東と東アジアだろう。かつて、ビル・クリントン大統領も性的スキャンダルの真っ最中、アフガニスタンとスーダンのテロ基地をいきなり爆撃したことがある。
韓国政府の役割が重要であることは言うまでもない。明確な戦略や政策、強い実践意志が必要な時だ。米国の力を必ず借りなければならないが、米国に任せっきりでは決して解決策が見つからないのが北朝鮮核問題だ。私たちの強い外交がなければ、朝鮮半島問題にかかわるいかなる国も新しい道に進もうとしないのが厳然たる現実だ。
来月初めに開かれる韓米首脳会談が重要な機会だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は自ら掲げた「朝鮮半島問題の運転者」らしく、主導力を発揮すべきだ。90日間の休止期のように実現がさほど難しくない提案を、どうして米国から示されなければならないのか。