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[寄稿]軍艦外交、142年ぶりの再来

登録:2017-04-19 00:28 修正:2017-04-19 07:11

万一、平壌(ピョンヤン)にデリーや北京のように米国大使館と米国企業の支店があり投資が行われ、平壌の指導層の子供が米国留学しているならば、北朝鮮の核やミサイルは果たして“北爆”の対象として議論されるだろうか?答えはもちろん否だろう。

“北朝鮮の脅威”という幽霊を利用して、韓国を永久的にその手中に捕えておくことができると考えるのは米当局者の妄想に過ぎない。結局、THAADのような韓国人にとって害にしかならない米国の火遊びは、韓国人をして米国との距離をおかせ、地域安保の別の可能性の模索に誘導する側に作用する可能性がより大きい。

軍艦外交//ハンギョレ新聞社

 私はこの頃、ロシアにいる家族からしばしば連絡を受ける。朝鮮半島が軍事的危機に包まれているが、あなたと縁のある韓国人が心配だという内容だ。心配の中心には、間違いなく“ニュース”がある。米国のカールビンソン原子力空母打撃群が朝鮮半島に向かっているというニュースは、極東地域が朝鮮半島と境界を接しているロシアの公論の場やメディア空間を激しく強打した。ロシア国会上院の国防安保委員会委員長は、米国の北朝鮮爆撃が現実になりうると言及して、ロシア空軍が戦闘対備態勢を整えたというニュースまで出ている状況で「朝鮮半島」は自然と皆に知られるようになった。韓国国内ではあまり体感されないかも知れないが、朝鮮半島の外側ではシリアとともに朝鮮半島は世界的安保緊張のもう一つの核心と見られている。

 米国は原子力航空母艦を朝鮮半島に再配置する理由として「北朝鮮の核とミサイルの脅威」を前面に掲げる。特にしばしば取り沙汰されるのは、北朝鮮がここ数年で米本土まで攻撃可能な核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルを開発できる段階に至った可能性だ。米国の主流メディアの宣伝どおり、北朝鮮と聞けばすぐに悪魔の王国程度に見る人々はこうした可能性を脅威と見ることができるかも知れないが、論理的に思考しさえすればそのような可能性自体は必ずしも「脅威」ではない。例えば、中国が現在の東風-41号という、米本土を攻撃できるミサイルを開発したからといって、中国沿岸にすぐに原子力航空母艦を送り「先制攻撃」云々することはないではないか? 中国がそのようなミサイルを保有するといって、地球を破壊させる対米核戦争を先に始める国ではないという点は、米国の極右でも認める。同様に、インドが現在開発している大陸間弾道ミサイルのアグニ-6号の射程距離は1万2千キロメートル程度になる計画だが、インドを「脅威」として論じる人は西側世界にいない。

 それは、中国やインドが外交、貿易、投資など様々な分野で米国と不可分の関係を結んでいる国であるためだ。彼らが核とミサイルを保有するといっても、米国極右もこれを「先制攻撃」して除去しなければならない対象とは見ない。それでは、北朝鮮を-たとえ北朝鮮がインドや中国のような大国ではないとしても-同じ範疇に入れることはどうして不可能なのだろうか? 仮に、平壌にデリーや北京のように米国大使館と米企業の支店があり、投資が行われ、平壌の指導層の子供が米国留学しているならば、北朝鮮の核やミサイルは果たして「北爆」の対象として議論されるだろうか?答えはもちろん否だろう。交渉の対象になりうるかは分からないが、今すぐにでも対応しなければならない“脅威”としては考えないだろう。それでは、ここできわめて常識的な質問をしてみよう。米国がなぜよりによって北朝鮮との修交と全般的関係正常化をこれほどまでに忌避するのか? インド、パキスタンを核保有国として事実上認めておきながら、なぜ北朝鮮だけをこれほどまで執拗に「まず核放棄」を強要し交渉自体を不可能にさせているのか? 北朝鮮との関係正常化の代わりに、相当な費用がかかる戦争演習や航空母艦派遣をあえてする下心は何か?

 下心は様々あるだろう。最も明らかなのは、現実として浮上する中国を牽制する目的だ。すなわち、日本と韓国を中心にした北東アジア圏域で、米国の覇権を維持するために、在日および在韓米軍基地の存続、そしてさらに包括的には持続的軍備拡大のための一つの口実として「北朝鮮の脅威」を切実に必要としているということだ。「中国を押さえ込み、北東アジアでの覇権を守るために軍隊を継続駐屯させる」ことよりは「北朝鮮の脅威」を振りかざすことがはるかに外交的な方法だろう。第一に米国の有権者を説得するうえでもはるかに有効だ。率直に「日本と韓国という米国の軍事保護領を維持しなければならない」と包み隠さず言えば、「なぜあえてアメリカの納税者の金でアメリカ本土とは縁もない北東アジアで覇権ごっこをしなければならないのか」という孤立主義的な反発は必ず出てくる。ところがアメリカ人の意識の中にはすでに極度に悪魔化されていて、公然と“米国の敵1号”と認められている北朝鮮の「米本土攻撃可能ミサイルの脅威」を論じさえすれば、いかなる孤立主義者も反発は難しいだろう。米国の主流放送と新聞を通じてのみ世界のニュースに接する大多数の米国人が、「気がふれた暴君、金正恩(キム・ジョンウン)」が、すぐにも米本土を攻撃する可能性が高いと考えるのは自然だろう。その程度にマスコミの悪魔化戦略はよく受け容れられる。

 ところで「北朝鮮の脅威」というカードは、単純に米軍基地の存続とペンタゴンの予算増額だけを狙っているわけではなさそうだ。中国も米国の牽制対象だが、米国の極右派の表現を借りれば「いつ中国側に寝返るかもしれない」韓国国民も事実上牽制の対象に含まれる。航空母艦の朝鮮半島派遣のタイミングはきわめて絶妙だ。「太陽節」(金日成の誕生日である4月15日)にあるかもしれない何らかの兵器試験に合わせたにしても、すぐに行われる韓国大統領選挙を控えて行われたことでもある。当初は中国と米国の間で均衡を取ってみるふりをして、決定的な瞬間に米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備要求に乗り移り、親米一辺倒の本性を現した朴槿恵(パク・クネ)が市民によって追い出された直後でもある。もちろん、ホワイトハウスは原子力航空母艦の派遣と韓国の内部事情との間のいかなる関係にも言及したことはない。ところが、米国の多くの極右メディアは朴槿恵弾劾認容に前後して「親中国左派がこの隙を利用して韓国で権力を握りかねない」という憂慮を示した。もちろん、その当時に最も有望と見られた大統領候補の文在寅(ムン・ジェイン)は、決して“左派”ではない。それでも彼は一時、THAAD配備に反対するような発言をして、“中国牽制”に血眼になっている米国の極右に若干の緊張感を抱かせたようだ。

 だが、航空母艦の派遣を含む米国による脅威の雰囲気造成は直ちに状況を変えてしまった。もう一方の候補である安哲秀(アン・チョルス)は、すでに2月からTHAAD配備に賛成していたが、戦雲が漂う今の状況で安哲秀に追撃され始めた文在寅でさえも“安保”コードに自身の立場を合わせ始めた。現在までの彼の発言を総合してみれば、彼が「北朝鮮が核挑発を続けるならば、THAAD配備を押し切ることがありうる」と感じているようだ。米国の対北朝鮮挑発と言える軍艦派遣が行われ、さらに強力な対北朝鮮挑発である韓国への米軍核兵器の再配置まで言及される状況で、北朝鮮の核問題は解決されるはずがない。だとすれば文在寅も事実上THAAD配備に賛成すると見なければならないだろう。結局、米国の軍事脅威ムード造成は、中国のみならず韓国まで牽制したわけだ。相当数の有権者の“安保心理”を刺激して、最も有望な大統領候補2人に安保保守主義競争をさせたのだ。今や一時は“左派”と名指しされた文在寅は「金正恩が最も恐れる大統領、米国が最も信頼する大統領になるだろう」と南北間対話の可能性まで犠牲にして米国に忠誠誓約をする。結局、彼はここまで牽制されたのだ。

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学//ハンギョレ新聞社

 東アジアにおける軍艦外交は帝国主義の同義語だ。日帝の朝鮮侵略も、1875年の軍艦雲揚号の侵入から始まった。その時から142年も過ぎたが、軍艦を前面に出した外勢による朝鮮半島内政介入は続いている。米国では今「ロシアの米大統領選挙介入」が広く知られているが、事実シリアに対するミサイル攻撃から原子力航空母艦の派遣まで一連の行動で朝鮮半島“安保旋風”を吹かせた米国の行動こそが結果的に韓国大統領選挙に介入したと見ることができる。しかし「北朝鮮の脅威」という幽霊を利用して、韓国を永久にその手中に捕えておくことができると考えるのは、米当局者の妄想に過ぎない。結局、THAADにような韓国人にとって害にしかならない米国の火遊びは、韓国人をして米国との距離をおかせ、地域安保の別の可能性の模索に誘導する側に作用する可能性がより大きい。

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/791283.html 韓国語原文入力:2017-04-18 19:00
訳J.S(3741字)

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