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[寄稿] 政治の民衆化から!

登録:2017-09-05 23:52 修正:2017-09-06 08:17
朴露子ノルウェー・オスロ国立大教授・韓国学//ハンギョレ新聞社

 職業的政治家と有権者の間の距離が遠い根源的理由は、韓国の主流政治が相変らず“上からの”政治であるためだ。草の根の民衆が彼らの利害関係を代弁するに足る同僚に政治権力を委嘱するというよりは、政治エリートが下からの支持を動員する方式だ。

 ノルウェーの国会には多様な非主流政党がある。169議席のうち29議席を進歩的な少数政党らが占める。少数政党との競争を実感することで、巨大な中道左派政党である労働党も“下”の利害関係に関心を示すことになる。少なくとも国会は、金持ちの豊かな村のおじさん達の遊び場にはできない。

イラスト//ハンギョレ新聞社

 韓国の多くの二律背反のうちの一つは、政治と政治家に対するきわめて矛盾した態度だ。一面では公的な政治とは、大多数の深い不信だけ買う存在だ。韓国のタクシーで政治家に対する批判や悪口は、多くの場合最も人気がある話題として登場する。個別政治家に対する批判の次元を越えて、政治領域自体が不信の対象になる。昨年のある世論調査によれば、回答者の87%が政治家という部類を私利私欲のために動く集団と見て、73%が政治家の話を信じること自体がバカなことだと考えている。韓国人の政府信頼度も34%程度にしかならないが、国会議員など政治領域に対する信頼は行政府程度にもならない。韓国に行って多くの人と対話をしてみれば、多くの韓国人にとって政治家とは「成功した詐欺師」に近いという事実を確認できる。学術的に表現すれば、大多数の韓国人にとって、政治家とは単に地代追求行動だけを日常的に行う行為者に過ぎない。

 だがその一方では、本人が熱心に支持する政治家については例外と考えて、ほとんど無批判的に盲従する場合もある。これは俗称“パ”(追従者)現象という。特定政治家の情熱的支持者らと論争する時、相手が本人の支持する政治家の無誤謬性を信じているという感じを受ける時がある。理性的討論が不可能なほどだ。民主化の水準に大きな差はあるが、政治と政治家に対する方式においては韓国とロシアは驚くほど似ている。ロシアでも国会議員らを「運良く刑罰を避けて成功した犯罪者」と見る視角は一般的だが、本人が熱心に支持するその政治家については盲信するような態度が目につく。ただ、韓国とは異なり、多数が熱狂する政治家はロシアでは複数ではなく単数、唯一プーチン大統領だけだ。

 こうした現象はどこに起因するのか?本人が支持する政治家と自身を完全に一致させるかのような盲従は、窮極的に伝統社会で“門中年配者(一族のリーダー)”、“国王”、“師匠”など“君師父”に対する態度を彷彿とさせる。当時は個人が所属集団から抜け出せる時代ではなかったので、一点の疑いもない“盲信”は当然のことだった。こうした伝統社会がすでに遥かな記憶になったこの期に及んでも、そうした態度がたびたび現れる理由は、極端に原子化された新自由主義時代の多くの個人が“所属”を切実に要求するからだ。彼らは特定政治家を中心とする“想像の共同体”を組織したりもする。

 政治全般に対する不信は、独裁時期の国家に対する民衆の疎外から始まった。軍事独裁時期の御用政治家たちは言うまでもなく、制度圏野党の指導者も実際の草の根の民衆と共有できるものは多くなかった。階級所属からして違ったためだ。それゆえに“地域情緒”や“地域開発に対する約束”のような方式でなければ政治家は支持を訴えられなかった。当初から彼と有権者との間の壁があまりに高かったのだ。

 今は与野党が政治的位置を互いに変えるなど、制度的民主化はある程度成り立ったが、政治家と有権者の間の距離は相変らず途方もない。多くの政治家は今でもその社会・経済的身分上、平均的有権者とは全く違う生活を送っている。第20代国会議員の平均資産は約4億円だが、韓国の世帯当り平均資産は3600万円に過ぎない。すなわち、国会議員は彼を選んだ有権者より平均で約11倍も金持ちであるわけだ。「土の匙」をくわえて生まれてきた多数者が、「金の匙」をくわえて生まれてきて国会議員になった少数者を冷笑的に見るというのは十分に予想できることではないだろうか?もちろん政党別に見れば、少しずつ違いを発見することはできる。国民の党の議員の平均資産が6億円ならば、共に民主党の場合には3億6千万円程度だ。有権者の平均資産と類似した資産を保有しているのは正義党の議員(3700万円)だけだ。だが、国会で彼らはわずか6人だ。

 財産だけだろうか?韓国の国会議員に高卒はほとんどいず、半分以上は大学院まで卒業している。もちろん、韓国は世界で平均学歴水準が最も高い国の一つだ。だが、30歳以上の成人人口で、大卒者の比率はまだ40%に過ぎない。大学院まで卒業した高学歴の議員が、貧しくて大学進学すら難しかった有権者をどこまで代弁できようか?韓国の労働人口のうち、大多数を占める人々はサービス業従事者、零細自営業者、そして製造業の労働者だ。しかし、この職群の一線担当者に国会で会うことはほとんど不可能だ。弁護士出身議員が16人もいるのにだ。

 職業的政治家と有権者の間の距離が遠い根源的理由は、韓国の主流政治が相変らず“上からの”政治であるためだ。草の根の民衆が彼らの利害関係を代弁するに足る同僚に政治権力を委嘱するというよりは、政治エリートが下からの支持を動員する方式だ。「土の匙」をくわえて生まれてきた草の根の民衆は、この動員の主体ではなく対象物に過ぎない場合が大部分だ。国会議員地方区選挙なら、該当地域の“名士”や、その支援を受ける人が出る場合が多く、全国区比例代表でも公認を受けられるだけの人望やネットワークを持っている有産層“人士”がはるかに有利だ。それで韓国の典型的な国会議員とは、相当な財産を保有した俗称“名門大”出身の40~50代男性だ。今でもソウル大を卒業した国会議員の比率は20%を超えるが、15年前には何と48%にもなった。一つの大学をこれほど多くの国会議員が卒業するのは、世界史で前例を見つけることすら不可能だ。ところが、女性議員の比率は相変らず17%に過ぎない。世の中の半分は女性なのに。20~30代は3人だけだ。ソウル大など“名門大”とは縁のない若い「土の匙」が、彼らに支持を訴えに来た金持ちの“身分の高い”方を、なぜよりによって信頼するのか?

 類型的に見れば今日の韓国議会政治は米国と似ている。米国でも半分程度が100万ドル以上の財産を保有した富豪が国会両院を埋めて、ニュアンスは違っても大企業の利害関係の標ぼうにおいて格別差のない巨大主流政党が政治舞台を独占している。このような社会では、政治や政府に対する不信は当然だ。それでも民衆が政治家を信頼できる国々は、概して草の根の住民たちの利害関係を代弁する非主流、少数、民衆政党が政治でより大きな持分を占める所だ。

 内閣制国家のノルウェーでは、議会と内閣に対する信頼度が70%に達し、韓国や米国の2倍にもなるが、ノルウェーの国会には多様な非主流政党が代表を送ることができる。169議席のうち29議席を進歩的傾向の少数政党が占めている(左派党、社会主義左派党、緑色党、そして農民の党である中道党)。少数政党との競争を実感する結果、巨大中道左派政党の労働党も“下”の利害関係に細心な関心を見せることになる。そして、急進主義との競争を意識するだけに、少なくとも国会を金持ちの豊かな村のおじさん達の遊び場にはできない。議員の半分近くが女性で、平均年齢は46歳だが、約4分の1は20~30代だ。私が在職する大学の学部生の中にも国会議員がいる。そして半分が大卒ではあるが、高卒出身で肉体労働をして、労組活動により結局政治家になった人も相当数いる。この程度なら、少なくとも政治に対する極端な不信と嫌悪から免れることができる。

 良い資本主義というものはなく、いかなる資本主義的政治体制も窮極的には総資本の支配を後押しする。それでも、北欧のように選挙制が完全に政党名簿投票に変わり、死票を心配する必要がなく、民衆政党の党勢が拡充されれば少なくとも今日のような民衆と政治の乖離も若干克服できるはずだ。ヘル朝鮮が暮らすに値する国になるためには、政治の民衆化、政治参加の大衆化・日常化こそがそこへ行く近道だろう。

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー・オスロ国立大教授・韓国学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/809780.html 韓国語原文入力:2017-09-05 19:09
訳J.S(3570字)

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