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[寄稿]トランプと金正恩の合意はニクソンと毛沢東より難しくない

登録:2017-09-25 03:36 修正:2018-06-04 06:33
ジョン・フェッファー 米国外交政策フォーカス所長//ハンギョレ新聞社

 1960年代初め、米国は中国の潜在的核の脅威を非常に懸念していた。ソ連が核兵器を保有しているだけでもよくない状況なのに、毛沢東体制の中国はソ連よりも徹底的に反米を貫いているように見えた。

 中国は1964年、初めて核兵器の実験を行った。そして2年後、文化革命の政治的混乱に陥った。中国の政治・経済状況が非常に危険になり、数千人の中国人が安全な避難先を求めて北朝鮮に雪崩れ込んだという“にわかには信じ難い”噂も流れた。

 中国指導部は、紅衛兵たちが核施設団地を掌握し、核兵器を使うかもしれないと憂慮していた。毛沢東の妄想症や痴呆症が日増しに深刻になってからは、状況がさらに悪化した。

 当時、米国の一部強硬派は中国が政治的危機に直面しており、経済的混乱に悩まされているうえに、核兵器も比較的少ないため、中国と対決するのにはいい時期だと思っていた。

 しかし、文化革命が進められていた当時も、米国政府はその反対の決定を下した。リチャード・ニクソン政権は歴史的デタントとなった中国指導部との秘密交渉を開始した。

 ニクソンはそのような選択をするとは思えない指導者だった。彼は反共産主義で名声を築いてきた人物だった。アジアで共産主義が拡散されるのを防ぐため、米国をベトナム戦争に巻き込んだ。彼は「マッドマン・セオリー」(狂人理論)も作り出した。米国の国益を増進させるためには核兵器の使用も辞さないほど狂っていると、全世界を信じ込ませることを望んでいた。

 しかし、ニクソンはもう少し精巧な地政学的ゲームを展開していた。彼は、共産圏ブロックを弱体化させるため、ソ連と中国を仲違いさせたいと考えていた。古い「分割支配」戦略の一環だった。その結果、米国は1971~72年、大胆にも中国に門戸を開いた。

 今も米国は似たような苦境に立たされている。独裁者が支配する他のアジア国家の持つ核の力量を懸念している。米国の一部強硬派は今北朝鮮を攻撃すべきだと主張している。北朝鮮の核プログラムの水準がまだ低いため、米国を攻撃できるより精巧な兵器を開発するまで待つよりは、今の方が適期ということだ。

 同時に、世界中の多くの人たちは、再び「マッドマン」がホワイトハウスの主になったと思っている。北朝鮮を「完全破壊」できるというドナルド・トランプ大統領の国連演説は、核兵器をも含むすべての兵器を動員し、相手を抹殺する可能性を示唆している。

 しかし、ある面では、米国と北朝鮮の現在の状況は、米国と中国の1960年代の状況よりも、交渉を通じた解決がもっと容易かもしれない。

 第一に、北朝鮮指導部は毛沢東周辺のイデオロギー的核心グループよりも実用的だ。北朝鮮は「ウィンウィン」(Win-Win)となる交渉ができるなら、教会や多国籍企業など、誰とでも手を結ぶだろう。さらに、中国の文化革命時期に比べると、平壌(ピョンヤン)の政治的混乱ははるかに少ない。

 第二に、北朝鮮は超大国を標ぼうしていない。北朝鮮は外部の攻撃を抑止するために核兵器の開発を望んでいる。

 第三に、トランプにも北朝鮮との交渉を望む理由がある。彼はバラク・オバマ大統領も避けて通った北朝鮮の核問題を解決できる能力があることを証明したいと思っている。北朝鮮との外交的解決は、中国と北朝鮮の亀裂を広げるのに役立つだろう。また、トランプは自身の事業を始め、米国企業が北朝鮮市場に進出できる道が開くことを熱望している。

 米国が1960年代に中国と戦争を繰り広げたならば、すべての人たちが憂慮していた通り、災いをもたらしただろう。今も、すべての当事者たちは朝鮮半島での戦争が終末論的災いになることを知っている。ホワイトハウスのハーバート・マクマスター国家安保補佐官やジェームズ・マティス国防長官など、トランプ政権の主要参謀たちですら、朝鮮半島での戦争が米国や地域の同盟国に破滅的結果をもたらしかねないと認めている。

 「ウィンウィン」の解決策を見出すにはまだ遅くない。1970年代に米国のマッドマンと中国のある老人が合意に達したように、トランプと金正恩(キム・ジョンウン)にも同じことができる。

ジョン・フェッファー米国外交政策フォーカス所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/812311.html韓国語原文入力:2017-09-24 20:30
訳H.J(1918字)

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