ドナルド・トランプ米大統領が21日(現地時間)発表した対北朝鮮制裁に関連した大統領令は、金融や貿易を網羅する包括的な内容だ。トランプ大統領が11月初めの中国訪問を控え、北朝鮮と取引をやめるよう、中国に対する圧迫のレベルを最大限に引き上げている。
まず、大統領令の内容によると、金融分野では制裁リストに上がった北朝鮮個人・団体と直接取引を行ったり、取引を支援する外国の金融機関に対し、制裁を科すことができる権限を財務長官に与えた。スティーブン・ムニューチン財務長官はこの日の記者会見で「取引が禁止された北朝鮮企業・人を手助けする世界の金融機関との全ての取引を凍結または遮断する点に、非常に重要な意味がある」と述べた。
これは今回の大統領令の最も重要な目標が、北朝鮮の米国金融網への接近の遮断にあったことを意味する。ただし、「すでに制裁を受けている北朝鮮の個人・団体と取引する」という条件がついており、米国政府が正常な取引についても制裁を加える、厳密な意味の「セカンダリー・ボイコット」とは距離がある。
また、今回の大統領令が、北朝鮮の物品およびサービス、技術に対する輸出と輸入に従事するいかなる個人や団体にも制裁を加えられるようにした点や、北朝鮮に行ってきたすべての船舶や飛行機は180日間米国に入港できないようにする処置も、強力な内容と言える。北朝鮮の交易を全般的に遮断するという意味であり、一部ではこれについては「貿易封鎖への扉を開いた」と評価している。
今回の大統領令が中国の企業・銀行を狙っていることは明らかだ。米国の金融および捜査当局は最近数カ月間にわって米国に進出した中国銀行に対する広範囲な調査を行い、北朝鮮関連疑惑の口座を多数摘発してきたという。エド・ロイス下院外交委員長が前日の20日、中国の招商銀行と農業銀行を具体的に名指しし、米政府の独自制裁を求めたのもこれと関連がある。
しかし、今回の大統領令は、北朝鮮との過去の金融取引内訳については問題視しないという妥協策を提示した。かつての取引まで問題視して制裁する場合、中国銀行と取引をしている米国企業も少なくない打撃を受ける恐れがあるからだ。ムニューチン長官が今回の大統領令が「未来志向的」と述べたのも、そのためだ。
今回の大統領令が中国の銀行にとってはかなりの負担になる可能性がある。慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「中国の銀行が(北朝鮮側と)借名口座などを通じて非公式的に取引していた部分があった」とし、「中国の銀行に今後摘発された場合は座視しないと警告する意味がある」と分析した。
北朝鮮にとっては、最近数カ月間にわたり、既に対応策を模索してきた可能性が高いため、それほど大きな打撃にはならないと見られる。もちろん、長期的には危険を冒さなければならず、取引費用が増える恐れがある。また、米国はロシアに対しては中国ほど強く圧迫しておらず、北朝鮮がロシアを迂回路として活用することもあり得る。
米国の対中国圧迫はこれからも続く可能性が高いとみられる。匿名を希望した外交消息筋は「トランプ大統領が中国訪問を控え、成果を出すために対中圧力を高めていくだろう」と見通した。別の消息筋は「トランプ行政府は原油(供給)の中止にこだわっている」と話した。
トランプ大統領が同日、韓米日首脳会議の冒頭発言で大統領令に署名した事実を伝えたのも、韓米日の単一戦線を誇示し、中国を圧迫する形を演出するためとみられる。彼は「外国銀行は選択を迫られるだろう。米国と取引するか、それとも北朝鮮の違法政権の貿易を助けるかを選ぶべき」とし、「恥ずべき慣行に対する寛容はもう終わりにしなければならない」と主張した。