北朝鮮が29日、再び弾道ミサイルを発射した。今回は日本上空を通過し北太平洋まで飛んだ。正常角度で発射した場合、射程距離3000キロメートル以上の中長距離弾道ミサイル(IRBM)に相当する。グアム打撃が見えすいた脅しではなく、実際に爆撃能力があることを誇示しようとしたものと見られる。
この日のミサイル発射で、対話局面に入るかに見えた朝鮮半島の状況が再び緊張状態に陥った。ドナルド・トランプ米大統領と安倍晋三首相は、電話会談を行い「今は対話する時ではない」と線を引いた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「強力な対北朝鮮報復能力を誇示せよ」と指示した。
北朝鮮の態度はこれまでもみられた典型的なものだ。対話の可能性が伺える状況で、威嚇の強度を最大限に引き上げて、有利な条件での対話を主導するという特有の“瀬戸際戦術”だ。しかし、今回の発射から何が得られるだろうか。強硬派一色のトランプ行政府内で「炎と怒り」を自制させ、どうにか対話に導こうとしていた穏健派の立場は萎縮し、強硬派の声が強まるだろう。日本では再武装世論が一層高まりかねない。北朝鮮の防波堤の役割をしてきた中国も困惑させた。
北朝鮮が願うことは、経済制裁が解かれ、さらに朝鮮半島平和協定、朝米修交まで続き、安保と政権の安全を保証され、国際社会の一員となって経済を起こすことだ。ところが正反対に向かっているではないか。ワシントンポストは「金正日(キム・ジョンイル)は17年に及ぶ執権期間中に16発のミサイルを撃ったが、金正恩は今年だけで18発の発射を敢行した」として「挑発を止めろとの国際社会の要求を明確に拒否した」と評価した。
北朝鮮が交渉より核とミサイルの高度化に進むという意志を改めて明確にしただけに、朝鮮半島は再び強対強の対決構図に陥る可能性が高まった。対北朝鮮制裁は一層強化されるだろうし、北朝鮮の住民はそれだけ困難を経験することになるだろう。北朝鮮は今からでもミサイル試験を中断し、対話の場に出てくることをもう一度促す。
文大統領は「北朝鮮のミサイル挑発があったが、それだけに必ず南北関係の大転換を成し遂げなければならない」と強調した。対話局面への転換に対する意志を改めて強調したのだ。
こうした側面で韓米当局が検討している「米国の戦略資産展開」には一層慎重なアプローチが必要に見える。戦略資産とは、B-1B戦略爆撃機、B-52長距離核爆撃機、ステルス戦闘機、イージス駆逐艦、原子力潜水艦など、戦争遂行に多大な影響を及ぼす目標を打撃する攻撃型兵器体系だ。米国の戦略資産展開は、朝鮮半島の緊張を戦争直前まで引き上げかねない超強硬対応だ。たとえ北朝鮮が残念な姿を見せ続けようとも、韓国政府は「朝鮮半島での戦争は絶対に起こしてはならない」という大原則に基づいて、対話のための絶え間ない努力をあきらめてはならない。