ウォン・セフン元国家情報院長の選挙法違反などの事件の破棄控訴審が10日、ソウル高裁刑事7部(裁判長キム・デウン)審理で開かれた。この事件は、警察の捜査から検察、裁判所に至るまで多くの波乱を経た。警察と検察の高位層は捜査を妨害し、法務部は選挙法違反罪の適用を邪魔した。その渦中で、警察署の捜査課長は異動させられ、検察の捜査チーム長は左遷され、検察総長は婚外子疑惑で追い出された。すべて政権レベルの妨害があったことは想像に難くない。裁判所の判決も1,2,3審まで一進一退する間に事件発生から4年余りの歳月が流れた。こうした憲法蹂躪行為が今後再発しないようにするには、今からでも情報機関の組織的な選挙介入行為に対する厳重な断罪が必要だ。
法廷論議の核心は、国家情報院心理戦団安保5チーム員のK氏が作成・保管してきたコメント工作関連ファイル2種類を証拠として認定するか否かであった。2審裁判所は「425指論ファイル」と「セキュリティファイル」を通じて確認されたアカウント716個、ツイッター文27万4800件の証拠能力をすべて認め、選挙法違反罪などで懲役3年を宣告し、ウォン・セフン元院長を法廷拘束した。2つのファイルを刑事訴訟法315条2号の「業務上の必要で作成した通常文書」と見た。しかし、最高裁(大法院)全員合議体は、刑事訴訟法の規定を狭く解釈し、2つのファイルの証拠能力を認定できないとし、事件をソウル高裁に差し戻した。性売買事業主の手帳までを「業務上文書」として幅広く解釈した最高裁の既存判例とは異なる判断だ。検察で3度も作成事実を認めたK氏が、法廷で「覚えていない」とした絶妙な返事で、情報機関の組織的選挙介入の証拠が排斥されるならば、正しい裁判とは言えない。
おりしも国家情報院が2011年11月に作成し、大統領府政務首席室に報告したという「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の選挙影響力診断、および考慮事項」文書を世界日報が報道した。19代総選挙と18代大統領選挙に備えるために、オン・オフラインの力量を総動員して、ツイッターとフェイスブックを掌握しなければならないという趣旨であり、コメント事件も原点から再照明が避けられないと見える。国家情報院のコメント工作が選挙に影響を及ぼすためだったのみならず、当時の大統領府までが関連した可能性も大きいためだ。国家情報院改革発展委がこの文書の調査方針を明らかにしたが、国家情報院と大統領府の責任者に対する検察の捜査も必要だろう。