「民族統合は私たちの責任の下、私たちの自主的力量で成し遂げなければなりません」。30年前、盧泰愚(ノ・テウ)大統領はこのように語った。1988年7・7宣言で、盧泰愚大統領は北朝鮮を敵ではなく、民族共同体の一員として規定した。それから一世代が過ぎた。なのに今どうなっているのか。30年前の保守は「民族自存」を叫んだが、今の保守は最小限の自尊心もない。30年前の保守は民族の将来について悩んでいたが、今の保守は目先の利益だけを追いかけている。守ることがない保守は品格を失い、残ったのは古い色分け論だけだ。
李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵(パク・クネ)の9年間、失ったのは恥ずかしさだけではない。私たちは朝鮮半島問題で当事者の資格を失った。周辺国はいずれも韓国の立場など考慮しない。この9年間政府は何をしたのか。歴代政権が苦労して積み上げた平和の塔をすべて壊した結果、残されたのは悪化した状況だけだ。無能と無責任で朝鮮半島情勢の管理能力を失った。
今回発足する新政府は「当事者解決の原則」を復元しなければならない。誰も私たちの問題を代わりに解決してくれない。私たちの運命を自ら決めなければならない。民族共助を主張しているわけではない。私たちだけでは北朝鮮の核問題を解決できないだけに、当然周辺国とも協力しなければならない。南北関係とともに、国際的な多国間協力の重要性はさらに高まっている。当事者が解決意志を持って解決策を作り、多国間協力に積極的に乗り出すべきだ。
当事者解決の原則の核心は南北関係だ。30年前、盧泰愚政権が当事者解決の原則を強調した際、米国は歓迎した。太陽政策を掲げた金大中(キム・デジュン)政権に、クリントン大統領は喜んで朝鮮半島問題の運転席を譲った。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が9・19共同声明を採択する際にもそうだった。これまでの南北関係の歴史で周辺国が韓国の当事者の資格を認めたときの共通点がある。南北関係がうまく行っており、北朝鮮を説得できる能力がなければならない。そのような場合に限り、周辺国は韓国と情報を共有し、役割を認めて存在感を尊重してきた。南北関係が韓国外交の地位を決めるということを肝に銘じるべきだ。
大統領選挙後の朝鮮半島情勢は変わらなければならない。長い間不在だった韓国が戻ってこなければならない。周辺国はいずれも北朝鮮核問題の解決を望んでいる。当事者の積極的解決の意志を歓迎するはずだ。幸い、トランプ政権は実用的だ。理念ではなく、利益の面からアプローチすれば、交渉できる。憂慮する見方もあるが、韓米両国はいくらでも立場の違いを縮めることができる。米国の要求と北朝鮮の反発の間に挟まった中国も、韓国政府の帰還を待っている。中国一人の力では朝米両国の差を縮められない。東方経済フォーラムを開き、北方経済の可能性を模索しているロシアも同じだ。
新政府は、李明博・朴槿恵政権があっけなく消尽した交渉手段を新たに作らなければならない。手段は多ければ多いほどいい。南北米と南北中あるいは南北ロの3カ国関係の中で、韓国の役割を見出し、積極的に動いて可能性の空間を広げていかなければならない。北朝鮮核問題の解決過程が始まれば、北東アジア情勢は変わってくる。その過程でTHAAD(高高度防衛ミサイル)問題の出口も自然に見えてくるだろう。全ての事には順序があり、目的地に到達するためには回り道をする場合もある。
理念だけを掲げていた無能で無責任な政府が退いた。有能で責任意識を持った新しい政府が乗り出す番だ。南北関係はこれ以上後退できないほどの瀬戸際に立っている。北朝鮮核問題も、最後の岐路に立たされている。何を選ぶべきか? 一票が朝鮮半島の運命を変えるかもしれない。