昨年、韓国の1人当り国民総所得(GNI)が2万7561ドルと暫定集計されたと、韓国銀行が28日発表した。1人当り国民総所得は一国の国民が国内外で稼いだ総所得を人口で割った数値だ。その国の国民の生活水準を示す指標と言える。韓国の1人当り国民総所得は2006年に2万ドルを突破し、その後11年間3万ドルの壁を越えられずにいる。2万ドルから3万ドルになるまでにドイツが4年、日本は5年、米国は9年かかったことと比較すれば、過度に長く「2万ドルの泥沼」から抜け出せずにいる。
李明博(イ・ミョンバク)-朴槿恵(パク・クネ)政権の「1人当り国民総所得4万ドル」公約は要するに雲をつかむような数字遊びだった。李明博元大統領は2007年の大統領選挙の時「747公約」で10年以内に1人当り国民総所得4万ドルを達成できるようにすると公言した。朴槿恵前大統領は2014年2月に発表した「経済革新3カ年計画」で、3年以内に1人当り国民総所得を4万ドルにする礎石を固めると大言壮語した。19代大統領選挙ではこうした甘言で国民を欺くことがあってはならない。
ドルで表示される1人当り国民総所得は、一定部分為替レートの影響を受ける。昨年は年平均ウォン-ドル為替レートが2015年に較べ2.6%上昇した。韓国ウォンの価値が下がればドルに換算した国民総所得がそれだけ減る。しかし、韓国の1人当り国民総所得が足踏みしているのは成長動力が時間の経過とともに落ちているのが最大の原因だ。経済成長率が2011年に3.7%を記録した後、2012年には2.3%に墜落し、以後2014年を除いて毎年2%台に留まっている。今年も2.5%と展望される。「低成長の固定化」を憂慮せざるをえない。
少子・高齢化が世界的に例のない速さで進んでいる中で、急増する福祉需要を満たすには成長は依然として重要な課題だ。租税改革のような分配政策のみでは限界がある。 支出を増やさなければならない所があまりに多いためだ。だが、現在のような財閥中心の経済体制では、低成長脱出の突破口を探すことは難しい。大企業の輸出増加が雇用創出と消費増大に好循環する“落水効果”は望めない。財閥中心の経済体制はもはや成長の障害物になった。財閥の経済力集中が革新的な中小ベンチャー企業の誕生と発展を遮っている。
公正な市場経済が作動してこそ創造的破壊が可能で、目前に迫って来た4次産業革命時代を解決することができる。経済民主化は両極化解消のための分配政策だけでなく、韓国経済の新たな成長モデルでもある。