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[寄稿] 国家社会政策委員会が必要だ

登録:2017-03-21 23:02 修正:2017-03-22 07:34
キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 韓国は実際、8・15解放時点に匹敵する体制転換の局面に置かれている。大統領候補は票を得るための公約に夢中になったり、枝葉末節の問題で争うのではなく、労働差別と入試過熱という「生存戦争」体制を乗り越え、誰にも機会が開かれ、「等しく良い暮らしをする社会」をどのように作るかの方案を提示しなければならない。それはろうそく市民の能動性を動員せずには不可能だ。

 外国為替危機がさく烈して20年になった。その間に政治は2回の「進歩改革」政権と2回の保守政権回帰などシーソーのように上がり下りした。朴槿恵(パク・クネ)氏がろうそく集会の圧力で大統領職から中途下車した今、どの時よりもシーソーが上に力強く上がっている。ところで、青少年や青年たちもシーソーに乗って上がっていると感じるだろうか?

 最近20年間、政治はシーソーのように上がり下りしたかもしれないが、教育・労働・人権の領域ではほとんど変わらなかったか、あるいは一層悪くなった。すなわち、金大中(キム・デジュン) 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で少し良くなって、その後の9年で悪くなったわけではない。外国為替危機の直後には、失職した家長たちが自殺することは多くても、今のようにコールセンターで実習中の学生が自殺したり、九宜(クイ)駅で働いていた19歳の青年労働者が電車に挟まれて死ぬことはなかった。

 今、世界は1%の金持ちが99%を略奪する世の中だと言われる。しかし、唯一韓国は育ちゆく青(少)年に苛酷で、これは非人間的な教育と殺人的な労働現場が相まって相互に強化し合うためだ。韓国の過度な入試万能教育は、労働者の無権利状態と社会的連帯感解体の別の表現だ。学校の入試学習塾化は、労働市場の深刻な差別と不安定、就職の壁が別の形であらわれたものだ。上位10%の労働者が賃金や職業安定性で特権的地位を得て、残りの90%が不安定な低賃金労働から抜け出す兆しがほとんど見られないならば、労働現場の危険と暴力は黙って耐えるしかない宿命となり、子供を上位10%の職場に押込むことができるならば、老後福祉を犠牲にしても子供の教育投資に出るという父母の出血戦争は続くだろう。

 従って入試過熱は反労働、セーフティネット不在という現実と一つの輪で連結されている。それは弱者が労組や政治的代表体を通じて権益を保証され得ない社会に現れる現象だ。九宜駅で死亡した青年は、140万ウォン(14万円)の収入のうち100万ウォンを貯蓄して大学に行くために、命を賭けなければならない仕事場に出て行った。今やSKY大学(ソウル大・高麗大・延世大)はほとんどが裕福な家庭の出身者で満たされて、その彼らでさえ安定した職業を得ることはできない世の中になったが、不安定で非人間的な労働現場を避けられる道は、名門大学閥、公務員合格しかないというのがこの時代の命題だ。

 最近20年間、非正規労働者を犠牲にして高賃金を得てきた組織労働者が、こうした結果をもたらしたという批判がある。部分的には当たっているが、私の表現によれば、労働問題を教育、福祉、財閥問題とワンセットで見られないようにした企業労組主義にこそ原因がある。労働界の責任を2とすれば、短期利潤確保だけにまい進してきた財閥大企業、教育と労働を経済の付属品程度にしか見ない経済官僚、国家の長期的政策に無関心な野党には8の責任がある。

 すなわち非正規労働者の使用制限、賃金格差縮小、労働時間短縮、労組組織率向上など、労働の絶望を解消しようという各大統領候補の公約は、政権が交替しても大企業の経済論理の反撃に直面するだろう。一方、学校教育の正常化、学閥主義の克服など教育関連政策案も労働現場の差別解消、職場の民主化と労働の自力化を伴わなければ、解決の出口を開くことができないだろう。賃金が減っても雇用の安定性が高まるならば、そして人為的危険を避けるセーフティネットがさらに拡充されるならば、青少年と青年は希望を持って進むことができる。働き口と住居不安に苦しむ青年たちにとっては、結婚も出産も想像すらできないことだ。

 今、私たちは1987年が成就した“半分の民主化”を乗り越えなければならない。しかし、今日の時代的要求はさらに深層的で厳重で、韓国は実際8・15解放時点に匹敵する体制転換の局面に置かれている。大統領候補は票を得るための公約に夢中になったり、枝葉的問題で争うのではなく、労働差別と入試過熱という「生存戦争」体制を乗り越えて、誰にも機会が開かれていて、「等しく良い暮らしをする社会」をどのように作るかの方案を提示しなければならない。それは、ろうそく市民の能動性を動員せずには不可能だ。

 社会政策はワンセットで括られている。従って、それぞれを離しては解決できず、長い目で見通さなければならない。現在のような5年単任大統領は、始めても途中で辞めることになる。今後は国家教育委員会、いや国家社会政策委員会を樹立しなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/787428.html 韓国語原文入力:2017-03-21 19:25
訳J.S(2171字)

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