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[寄稿]ろうそく集会に参加できない人々

登録:2017-02-21 23:04 修正:2017-02-22 07:52

 弾劾以後の政局で大統領候補は、にわか作りの公約ではななく、人々に信頼と希望を与えられる政策議論で勝負を賭け、人々が発言する空間を開かなければならない。既成の政党、既成の大統領候補を通じて自身の要求と利益を代弁できないと考える不安な労働者層を地域、労組、オンラインの政策ディベートルームに引き出してこそ、ろうそく集会は一段階進化でき、韓国の民主主義は質的に深化されるだろう。

 ろうそく集会は本当に多くのことを成し遂げた。国会の大統領弾劾決議を引き出し、特検の捜査を圧迫し、ついにはサムスンのイ・ジェヨンを拘束するところまで来させた。弾劾が認容されるか否かは未だ分からないが、韓国社会の躍動性を確認できたことだけでも大きな成果だ。

 昨年末以後の政局は「ろうそく集会」が引っ張ったといっても過言ではない。ところで、弾劾が認容された瞬間、直ちに大統領選挙政局が開かれるだろう。ろうそくの灯は消えて“広場”の市民が各大統領候補陣営に割れるだろう。ところでろうそく集会の市民たちの“行動”が消えた空間、すなわち大統領選挙政局は、今までろうそく集会に出てこなかった、あるいは出て来られなかった人々によって左右されるかもしれない。彼らの個人的“選好”がマスコミ上の大統領候補支持率という“数値”になって…。

 その中でも私は、仕事に忙しく、朴槿恵(パク・クネ)弾劾が自身の人生を変えそうでもないので、ろうそく集会を観望していた人々に特に注目する。おそらく彼らはろうそく集会に出てきた人よりも概して暮らしが厳しく、そして孤立している人々だろう。大多数の失業青年、非正規労働者、アルバイト、零細自営業者、そして貧困高齢者たちがその彼らだ。そのうち青壮年の行動が最も重要だ。今の状況から見れば、今年の大統領選挙は野党候補者間の争いになる可能性が高いが、これらを観望する不安な青壮年層を投票場に引き出せる人が勝者になるだろう。しかしそれは単なる始まりに過ぎない。

 米国の選挙を見れば、サンダースに熱狂した人々はクリントンが候補になった瞬間に投票に参加する理由を喪失したし、そのうち低学歴の白人壮年労働者は働き口第一主義を掲げたトランプ側に大挙して移った。事実、現在米国、英国、日本など世界のすべての国では不安階層が支持した右派国粋主義者が勢力を拡大している。大恐慌以後、最大の貧富格差、雇用不安が日常をガチガチに締めつけている状況で彼らは、口では民主主義を語るものの、自身の既得権は何一つ手放そうとしない中道左派、あるいは急進自由主義勢力に背を向けた。これらの国の不安階層は極度の人種差別政策や戦争までも受け入れる態勢だ。

 韓国はどうか? 青年失業率は歴代最高水準だ。昨年一年間に離職した人が560万人にもなる。非正社員の賃金は正社員の54%に過ぎず、零細自営業者の半分はほとんど貧困ライン以下で生活している。華麗な弁舌を誇るオバマに熱狂したアメリカの青年と労働者が、この民主党の二重性と悪化した労働市場を体験してクリントンに対する拒否感を持ったように、韓国の壮年不安階層も金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の二つの民主政権をすでに体験したので、政権が変わったとしても果たして自分の人生が変わるのか、深い疑問を持っている。

 特検の活躍でイ・ジェヨンが拘束された事実は彼らに大きな期待を与えたかもしれない。しかし韓国の人々は、財閥主導成長主義の福音をまき散らし経済両極化克服、労働者保護、社会的連帯、普遍的福祉を主張したすべての集団を“左派”に追い立てた勢力が依然として強大な力を持っていて、政権は危機に瀕しても自身の職場生活は変わらなかったという事実を知っている。彼らは政権交替になればひとまず期待をかけるだろう。しかし、現在のきわめて不透明な国内外の経済状況を考えてみれば、彼らは久方ぶりに“開かれた空間”でよどみない要求と抗議を表出し、そして大きく失望して再び期待をたたむ可能性も大きい。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 今、どの党にも、どの大統領候補にも、彼らの問題を解決することは難しい。それでもそのままにしていれば、彼らは将来トランプのような右派扇動屋について行くだろう。だからこそ弾劾以後の政局で大統領候補はにわか作りの公約ではなく、彼らに信頼と希望を与えられる政策議論に勝負を賭けて、人々が発言する空間を開かなければならない。二つの野党はかつての執権期にはなぜ財閥改革、法適用、非正社員保護措置を正しくできなかったのかを説明してこそ、彼らの信頼を得ることができ、急造された働き口公約ではなく労働/福祉/教育を1セットに括った一貫した社会経済改革モデルを提示してこそ、人々に小さな希望でも与えることができる。

 既成の政党、既成の大統領候補を通じて自身の要求と利益を代弁できないと考える不安な労働者層を、地域、労組、オンラインの政策ディベートルームに引き出してこそ、ろうそく集会は一段階進化でき、韓国の民主主義は質的に深化されるだろう。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/783616.html 韓国語原文入力:2017-02-21 18:28
訳J.S(2246字)

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