朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する歴史的な弾劾審判宣告が10日午前に下される。憲法裁判所の宣告を控えて、政界は嵐の前の緊張の中にいる。緊張と心配がより大きいのは、弾劾審判の結果に従わず極端な行動が起こりかねないという一部極右団体や個人の発言が相次いでいるためだ。そうした憂慮の中心には残念ながら朴槿恵大統領がいる。朴大統領は国家指導者として、これ以上対立と葛藤を煽る行動をしてはならない。それが国民に対する最低限の礼儀であり、大統領としての責務だ。
元アナウンサーのチョン・ミホン氏は9日、フェイスブックに「弾劾が認容されるならば私が先に命を差し出す」と主張した。「朴槿恵を愛する会」(パクサモ)は10日午前10時に憲法裁判所前に総集結し“最後の戦闘”をしようと呼びかけた。憲法裁判所が朴大統領の罷免を決めれば、全面的な不服従闘争を行おうと扇動している。憲法と民主主義の価値に対する一抹の尊重も彼らの行動には見られない。
極端な行動に力を与えたのが、まさに朴槿恵大統領であるという事実に多くの国民は失望せざるをえない。朴大統領は先週、弾劾反対運動を主導するパクサモに向けて「有難く、感謝申し上げる」という内容の手紙を送った。弾劾反対運動を一層熱心にしてほしいという露骨な扇動に過ぎない。たとえ国会の弾劾訴追には同意しなくとも、分裂と葛藤だけは避けようと訴えるのが国家指導者の正しい姿勢であろう。ところが、一部の支持者の熱狂的な行動を逆に煽り立てるとは、自らの顔に泥を塗る振る舞いだ。これ以上の分裂を防ぐためには、朴大統領がまず極端な態度を示す一部の支持者に自制を呼びかけなければならない。それが先の大統領選挙で朴槿恵氏を18代大統領に選んだ国民に対する使命だ。
憲法裁判所に対する無差別な攻撃が「大統領を愛する方法」だと勘違いしているパクサモのような団体は、韓国カトリック主教会議の要請文を心に刻む必要がある。主教会議は「韓国国民は憲政史上例のない国政壟断事態で弾劾をめぐる尖鋭な対立と葛藤に直面した」として「韓国カトリック教会は憲法裁判所が公正な判決で法治主義の実現と民主主義の跳躍を見せることを期待する」と明らかにした。大統領弾劾審判は国政壟断事態から始まったのであり、この事態が法治主義と民主主義を一段階跳躍させる契機として作用しなければならないということを強調したのだ。
朴大統領は4年前に国民の前で「私は憲法を遵守して…大統領としての職責を誠実に遂行することを厳粛に宣誓する」という就任宣誓を再確認しなければならない。今この瞬間、大統領として最も重要な職務は「これ以上、国家と国民を分裂させる行動をしないこと」だ。最後の瞬間まで国民が大統領を恥じなくて済むことを望む。