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[寄稿]私学と教育部、そして「韓国社会の99%は犬や豚」

登録:2016-07-12 23:44 修正:2016-07-13 08:44

理事長の独断の下、教師と教授は学内の非教育的な問題に目を閉ざす。それを見て育つ学生たちは、自尊心と権利意識を持つ民主市民になることができようか?私学を理事長の“財産”と考える人々は、学生たちが服従を美徳と理解する“犬豚”のように生きることを願うのではないか?

 「国民の99%が犬や豚」と言った教育部官吏ナ・ヒャンオク氏は、国会聴聞会長に出てきて「死に値する罪を犯した」と話した。酒席の本音とでも言おうか。彼の本当の罪は、高位官僚、最高裁など韓国社会最上部の普段の思考と行動、すなわち「公然の秘密」を暴いたことにある。

 ここにその証拠がある。尚志(サンジ)大事態だ。6月23日ソウル高裁は、2010年にキム・ムンギ一家を尚志大正理事に復帰させたかつての私学紛争調停委員会(私紛委)の決定は無効と判決した。この判決で過去7年間、大学を反教育の現場にしてきた尚志大事態は新たな局面に入ることになった。この決定は歓迎すべきだが、その間の傷があまりにも大きい。

 キム・ムンギの尚志大は、韓国私学不正の代名詞だった。彼が官選理事として降りてきて、尚志大財団を所有物にした後、1978年から93年まで僅か一度の理事会も開かれないなど、私たちの想像しうるほとんどすべての不正がこの期間に行われた。結局93年、キム・ムンギが拘束され臨時理事体制が維持され、尚志大は大学の姿を取り戻した。ところが私学不正の前科者を「従来の理事」という非法律的用語で包装し復帰の道を開けた2007年の最高裁判決で悪夢は再び帰ってきた。キム・ムンギが「所有権」を取り戻すと「非所有者」には「奴隷化」の道が開かれた。

 2008年以後、尚志大以外の多くのかつての不正大学が、教育部と私紛委の「旧財団」復帰決定で大混乱に陥った。李明博(イミョンバク)、朴槿恵(パククネ)両政権下の教育部と裁判所は、それを「左派」に「奪われた財産」を元所有者に戻すことだと考えた。その後、不正私学は与野党の一部政界関係者にとっては政治資金源になり、一部の教育部官僚には「未来の職場」になり、一部の私紛委委員弁護士には自分のローファームの顧客になった。それは私学の自律と自由という美名で正当化されたが、教授、職員、学生たちにとっては「専制王政」の復帰だった。

 欧米はもちろん、日本や台湾などアジアのどこでも起きない私学財団の専横と不正が、唯一韓国だけで過去半世紀以上繰り返されたことは、本当に恥ずかしいことだ。歴代の独裁政権が崩壊すれば、その政権と癒着した私学不正が常に全面に浮上したが、それは私学不正が単純に財団理事長の権威主義や、理事長に過度な権限を与える私立学校法上の問題だけに起因するのではなく、「韓国の1%の縁戚世襲集団の利益」とそれを守る種々の権力集団の利害が固く結びついているためではないか? 朴槿恵大統領が野党代表時期に開放理事制導入などを内容とする私学法改正案に反対し、6カ月に及ぶ伝説的な場外闘争をしたことも、これと関係がなくはないだろう。

 まず、このすべての事件の分岐点になった最高裁と教育部の「財産戻し」決定は、その根拠もなく法的にも問題があった。私立学校法上でも、私学財団は出捐者の個人財産ではなく、私立学校の自律性と自主性は理事長に全権を付与するものではなく、教育の公共性という憲法上の価値の下にある。尚志大もそうだが、解放から1960年代まで代表的な私学財団はほとんど民間人の志ある寄付で建てた民立大学だった。ところが朴正煕(パクチョンヒ)政権はこのように作られた民立大学を縁戚集団の所有物にした。嶺南(ヨンナム)大、朝鮮大、仁荷(インハ)大、徳成(トクソン)女子大など、有名私立大学はすべて民立大学として始まったが、政権自身、あるいは政権と密着した一、二人の理事がそれを私有財産として、その時から私学は「教育」の価値とは遠ざかった。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、「新たな百年」研究院長//ハンギョレ新聞社

 今でも大多数の国民は、これが少数の不正大学だけの問題と考えている。ところが、韓国は大学の85%、高校の45%が私立という典型的な私立中心の教育体制だ。理事長の独断の下、教師と教授は学内の非教育的な問題に目を閉ざす。それを見て育つ学生たちは、自尊心と権利意識を持つ民主市民になることができようか?私学を理事長の“財産”と考える人々は、学生たちが服従を美徳と理解する“犬豚”のように生きることを願うのではないか?

 だからこそ、私たちは私学の民主化と公営化が、韓国の大学教育はもちろん、社会の正常化の絶対的な関門であることを改めて確認する。寄付者が建学の哲学と理念を定着させた後、美しく後に退く姿を私たちはいつになったら見ることができるのだろうか?

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、「新たな百年」研究院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-07-12 20:20

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/752056.html
訳J.S(2068字)

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