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[寄稿]中国漁船の不法操業続く西海に国家はない

登録:2016-06-28 22:36 修正:2016-06-29 07:20
6日午後、延坪島に近い西海北方限界線(NLL)付近では今も中国漁船が集まって不法操業を行っている。中国漁船は南北の軍事対峙状況を悪用し、海洋警察が取り締まると北方限界線を越え北朝鮮側に逃げる=延坪島/キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 北方限界線(NLL)近辺に押し寄せる中国の漁船を眺め、西海(黄海)の漁師たちは問う。国家はどこにあるのか、と。 政府は世論に押され、武力示威に出たが、取り締まりの効果はあるのだろうか。恐らくないだろう。政府が問題の本質から目をそらしているからだ。北方限界線近辺で繰り広げる中国漁船の不法操業は、韓中関係ではなく南北関係の結果である。

 中国の漁船は北方限界線に沿って韓国領域に入り込み、取り締まれば北側へと逃げ込む。北朝鮮の警備艇がそこまで来られないことを知っているからだ。2009年の「大青(デチョン)海戦」を思い起こしてみよう。中国の漁船を取り締まるため北方境界線まで南下してきた北朝鮮の警備艇を、韓国の艦艇が撃沈した。2014年にも同じような状況が演出された。韓国軍の最優先目標は北方限界線の死守だ。目標は達成された。だが結果はどうだったか。北朝鮮が取り締まることができず韓国の漁船は接近しづらい間隙を縫って、中国の漁船が押し寄せた。緊張の海は、中国の漁船の立場からすれば機会の海となった。平和の海にならなければ中国の漁船を取り締まることはできないというのが問題の核心である。

 西海に緊張の波が押し寄せてからもう9年目となる。漁師たちの絶望は深い。政府は常に支援対策を持ち出すが、いつも口先だけだ。魚は捕れず、観光客も来なくなっているのに、何の対策があるというのか。海洋の生態系も急速に悪化している。漢江河口の生態系が崩れれば、しまいには西海中部地域まで影響を及ぼす。漁師は答を知っている。いや、誰でも理性の目で見れば出口がわかるはずだ。与党の議員と与党所属の仁川市長が「南北共同漁労」や「南北海洋市場」を口にするのは当然のことだ。2007年の10.4宣言を破棄しておきながら、今さら何を言えるのかと批判する人もいる。しかし今さらであれ、誰かが答を見つけてくれるのだろうか。歓迎すべきことのはずだ。

 ただし、南北共同漁労の概念を正確に理解する必要がある。北朝鮮の漁場をカネで買うと考えがちだが、そのような話ではない。共同漁労の水域とは、海の非武装地帯を作るということだ。平和水域を作ろうというのである。どの国の海ではなく、共同の海を作ろうという試みだ。北方限界線という直線に固執するならば、衝突は避けられない。点線の知恵を受け入れれば、南北の漁師たちの協力が可能となる。経済的な接近だけではなし得ず、平和と経済が共に進まなければならない。

 共同漁労の水域はどこに作られるべきだろうか。利益のある場所には争いがあり、そこから互恵の協力を始めなければならない。延坪島(ヨンピョンド)沖合が衝突の海となった理由は、まさにそこが黄金漁場だからだ。衝突の海を共同繁栄の海に転換した海外の事例は少なくない。考え方を変えれば、いくらでも方法は探すことができる。

キム・ヨンチョル仁済大学統一学部教授//ハンギョレ新聞社

 誰でも答えは分かっている。朴槿恵政権が現実を見つめることを願うばかりだ。西海は南北関係と北朝鮮核問題のつながりがなぜ問題なのかを教えてくれる。西海のように今すぐ解決しなければならない懸案が少なくない。このようなときに必要なのは、まさにモーダス・ヴィヴェンディ(暫定協定)という知恵である。非核化に全ての懸案をかけるべきではないということだ。長期的に解決すべき課題と、急いで解決すべきことを分ける必要がある。最低限、韓国の利益となり国民の命と財産を守ることに政府が取り組まなければならない。

 西海は逆説の空間でもある。冷戦の現場となった西海が、朝鮮半島の朽ち果てていく「平和」の大切さを教えてくれる。平和はいつも争いの地に花開く。関係が悪化すれば相接する境界は戦線となるが、関係が改善されれば境界から協力が始まる。西海で崩壊した平和を再び立て直さなければならない。漁師の暮らしを維持すること、それが西海を守ることになる。国家はどこにあるのかと問う漁師たちに、政府が応える番だ。

キム・ヨンチョル仁濟大学統一学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-06-26 17:33

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/749737.html 訳M.S

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