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[コラム]潘基文事務総長の名はなぜ削除されたのか

登録:2016-05-20 05:34 修正:2016-05-20 07:42
28日午前、中国北京の釣魚台国賓館で開かれた「第5回アジア信頼醸成措置会議(CICA)」外相会議の開幕式後、習近平・中国国家主席(左)が王毅・外交部部長(中央)と共に歩いている=北京/ EPA聯合ニュース

 アジア信頼醸成措置会議(CICA)は1992年に設立されたアジア地域の協議体で、2年ごとに首脳会議と外相会議が交互に行われる。 2014年5月に上海で首脳会議が開かれ、先月は北京で外相会議が開かれた。

 ユン・ビョンセ外交部長官は3週間前、この会議に出席するため北京を訪れた。外交部は「韓国の外交長官として初のCICA外相会議に出席」と強調したが、これは見え透いたごまかしだ。韓国がCICAに加入した2006年6月に開かれたサミットには潘基文(パンギムン)外交通商部長官(当時)が出席した。それ以降もずっと外交部次官が「代理出席」してきたのだが、「外交長官の外相会議への出席」を強調するため「外相のサミット出席」を隠したのは奇妙なことだ。さらに、外交部が誇るスター的存在の潘基文総長であるのに、当時次官補だった現在のユン・ビョンセ長官が外交部から彼を削除してしまった「下剋上」の意図は、果たしてどこにあるのか。

 CICA当日、記者団に会ったユン長官の次の説明が疑問に応えてくれるかもしれない。 「CICAは過去に北朝鮮とかなり友好的な関係を維持していた国で構成された。これまで長官級ではなく次官級が出席してきた理由でもある」。この日、ユン長官は自らのCICA出席とCICAの北朝鮮糾弾宣言採択について、「北朝鮮が完全に国際社会から孤立し、仲間外れになったと思う」とも述べた。

 つまり、これまではCICA加盟国が北朝鮮と友好関係にあったので参加しなかったが、今回は、これらの国と共に北朝鮮バッシングに成功したということだ。このような幼稚な文脈で「潘基文削除」の背景を類推すると、「親北」の集まりに一時外相を送った「ミス」を否定しようとする意図が透けて見える。

 CICAは中国とロシアを主軸としているが、中央アジア(カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴルなど)、南アジア(インド、パキスタンなど)、東南アジア(タイ、ベトナムなど)、中東(トルコ、イラク、イスラエル、アラブ首長国連邦など)の主要国が加盟している。米国と日本はオブザーバーとして参加する。韓国外交の地平を広げるには、これほどいい機会もないが、韓国外交の基準はなぜ「親北(朝鮮)」と「反北朝鮮」の二分法しかないのかと思う。北朝鮮はCICA加盟国でもない。

 もちろん、北朝鮮の4回目の核実験の影響はあるかもしれないが、外交の目標が単純になったという印象はぬぐえない。最近、外交部が出した報道資料には、米国や日本をはじめ、インド、イギリス、ドイツ、イラン、モンゴル、スリランカなどの様々な国々と接触し、「北朝鮮の核問題への協力を要請した」という内容が目を引く。ある外交部の高官は、寄稿などを通じ「サイバー空間に接続する機器ごとに与えられるインターネット・プロトコル番号の場合、韓国が約1億2000万、北朝鮮が1000ほど知られている」と公然と自慢している。何を意識しているのか分からないが、「サイバー大国」を自任する大韓民国と、インターネットの基盤すら整っていない北朝鮮を比較するのは恥ずかしくなる。

キム・ウェヒョン北京特派員//ハンギョレ新聞社

 このような傾向は、冷戦時代の南北対決を連想させる。国際舞台で互いを誹謗する決議案などの採択を目指し、南北はアジアとアフリカの「非同盟」票の獲得に向けて競い合っていた。当時外交部の予算には、「北傀(北朝鮮)制圧(のための)総力外交」という項目があり、その資金で独裁者に金のステッキをプレゼントして歓心を買ったこともあるという。

 今年1月に当選された蔡英文・台湾総統が今日就任する。両岸(中国と台湾)関係の発展にもかかわらず、中国はずっと「一つの中国」を前面に出して外交的に台湾を孤立させた。このため台湾の反中国感情を拡散させた側面がある。孤立されればされるほど、分離・独立への欲求は強くなるものだ。朝鮮半島では、それがまさに分断の固定化を意味する。これが私たちの外交の目標ではないことを願う。

キム・ウェヒョン北京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力: 2016-05-19 20:11

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/744643.html 訳H.J

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