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[寄稿]米中ロの核ゲームと在韓米軍のTHAAD配備

登録:2016-05-03 21:43 修正:2016-05-04 07:24

 先月29日、中国とロシアの外相は、「米国が北朝鮮の核を口実に高高度防衛ミサイル(THAAD)の朝鮮半島配備を推進してならない」と強調した。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「北朝鮮の行為を口実に地域内の軍事力を増強し、特に米国がTHAADの朝鮮半島配備を推進することの危険性を確認した」として反対意見を表明した。王毅・中国外交部長も、米国がTHAADを韓国に配備すれば「中国とロシアの戦略的安全保障に直接的な影響を及ぼすだろう」とした上で、「すでに火がついて緊張が高まった状況に油を注ぐことで、(朝鮮)半島の戦略的均衡を崩しかねない」と警告した。

 中国とロシアが確認したとする「THAAD配備の危険性」とは何なのか。そして、なぜTHAADの韓国配備を戦略的均衡を崩す「油を注ぐ行為」と認識するのか。核兵器の国際政治は、核保有国の間で非常に特異な様相を帯びる。核保有国は、相手が先に核(兵器)で攻撃できないように、密かに報復攻撃能力を強化する。核抑止力と呼ばれるこの能力は、核抑止力は核兵器で報復できる2次攻撃能力によって実現されるものだ。したがって、核保有国の間では、この報復能力が相手の先制攻撃の意図を諦めさせることができると信じられている。このような計算は、核保有国同士が共有する重要な信念となる体系だ。こちらが先制攻撃をしたくても、相手の2次攻撃能力のために核を使用できない状態を維持する。これが彼らの核ゲームの法則だ。しかし、ミサイル防衛網は、核ゲームに変化をもたらす。ミサイル防衛網の目的は、相手の核ミサイルを空中で破壊することだ。これは、先制攻撃を受けた国の立場からすると、自国の報復能力が無力化されただけでなく、相手の先制攻撃がさらに容易になったことを意味する。核ゲームの法則が破られる可能性があるということだ。冷戦時代、米国とソ連が防衛技術に敏感な反応を示し、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約を通じて互いの防衛能力を制限したのも、そのためだ。

 私たち(韓国)が見落としているのは、ロシアと中国が核武装国家ということだ。彼らの戦略的利益は、私たちの利益構造を超越する。私たちが北朝鮮のミサイルと核の脅威のために、米国のTHAADを配備するのだと主張しても、中ロにとって韓国のTHAAD配備は、米国のミサイル網の拡散にしか映らない。朝鮮半島へのTHAAD配備により、北東アジアと極東地域に細かく配置されている中ロの2次攻撃能力が弱体化されるのだ。

チェ・ジョンゴン延世大学政治外交学科教授//ハンギョレ新聞社

 THAADは単なる武器自体ではなく、戦略的なネットワークだ。中国とロシアは、韓国のTHAAD配備を北東アジアの小さなNATO(北大西洋条約機構)の出現として受け止めているのかもしれない。韓国のTHAAD配備により、韓米日同盟の相互運営性と互換性がミサイル防衛を中心に強化されることで、中ロの核能力は弱体化を余儀なくされる。ミサイル網の中にある国としては、この防衛網を破るために、より多くのミサイルを開発するしかない。結局、米中ロの間の戦略的な緊張状態に油を注ぐことになる、北東アジアの軍備競争にもたらしかねない。

 仮に米国の韓国内THAAD配備が北朝鮮(の核とミサイル)に備えるためだとしよう。しかし、これは中国、ロシア、そして米国との間の核戦略のゲームを破る「油を注ぐ決定」にならざるを得ない。これがTHAADという国際政治の素顔だ。私たちは知らぬ間に、核大国の国際政治に巻き込まれたのかもしれない。したがって、中ロが主張する北朝鮮との交渉は、THAADの国際政治から逃れる唯一の脱出口という警告でもある。彼らの警告に耳を傾けなければならない。

チェ・ジョンゴン延世大学政治外交学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-05-03 19:13

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/742336.html 訳H.J

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