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[コラム]臨界値に達した韓国の“大統領リスク”

登録:2016-03-22 01:25 修正:2016-03-22 08:07

 内憂外患が続いている。危機の中心には朴槿恵(パククネ)大統領の個人的な感情が横たわる。自己中心的な思考と憤怒調節障害で起きた大統領の私的な感情が、国政に深く投影され、国の危機を深めている。国外で混乱が続くと、国内の安定化を図り、国内が騒々しくなれば、国外では鎮静化を目指すのが国政運営の基本のはずだが、それどころか国内外が同時に激しく揺らいでいる。国外では、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)政権が核・ミサイルの挑発で騒ぎを起こしており、国内では政権与党が総選挙を控えて、朴大統領の裏切り者を無慈悲に粛清したことで、民心が悪化している。

 問題は、危機のかなりの部分が、濾過されていない大統領の私的な感情によってもたらされ、拡大しているということだ。「共に民主党」のキム・ジョンイン代表は最近、寛勲討論で、大統領のその場任せの経済認識と政策の失敗を指摘し、経済難で国が破局を迎えるだろうと警告したが、私はそれよりも先に、私的な感情を優先する大統領の自制力を失ったリーダーシップが国を危機に追い込むようで、心配でならない。

 表向きにはイ・ハング公認管理委員長がユ・スンミン、ジン・ヨン、イ・ジェオなど、“大統領を裏切った者たち”を除去した主犯とされているが、屏風の後ろには大統領がいて、イ委員長は彼女の意向を代理執行する“太刀取り”に過ぎないことに気づかない人はいないだろう。中国の伝統的な兵法である三十六計の一つ「借刀殺人」(人の刀を借りて敵を攻撃する)の典型的な手法と言える。

 借刀殺人の戦法を使ったとしても、妥当な名分と論理があり、納得できる手順によって行われたものであれば、驚くにあたいしない。「増税なき福祉」の虚構性を批判し、国民年金と基礎年金の連携に反対するなど、党内で批判的な意見を述べたことが、どうして党のアイデンティティに反すると共に、国会議員の品位を損ない、勝算の高い地域で長期間選ばれ続けてきた現職議員を公認から排除する条件になるのか。“公認虐殺”の主な対象のユ・スンミン議員を追い出すのが負担になるとして、自ら離党してもらうことを公開的に求めるさもしさは、何を意味するのか。このすべての行動が、朴槿恵政権が民主と共和の原理ではなく、指導者の私的な感情に基づいて動いていることを示している。報復の強さこそ異なるとはいえ、金正恩(キムジョンウン)政権の粛清劇と本質的には同じだ。

 北朝鮮の核・ミサイル挑発に対応する過程でも、大統領の激しい感情が噴き出す政策が相次いでいる。中国が北朝鮮に対する圧迫に消極的な姿勢を見せたとして、「困っているとき助けてくれるのが真のパートナー」と公然と攻撃し、米国と中国、ロシアとの間で戦略競争を誘発することが明らかなTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を無謀に推し進め、南北協力の最後の砦である開城工業団地を電撃的に閉鎖することにしたのは、指導者の激しい性情を表しているとはいえ、相手に向かって強制力の発動が難しい国際政治の舞台で通じる合理的政策とは程遠い。三十六計の「機会があるときに蜂の群れのように攻撃せよ」という、趁火打劫の計を連想させるが、これが効果を上げるためには、私たち(韓国)に事態を主導的に導ける能力が備わっていなければならない。

オ・テギュ論説委員室長//ハンギョレ新聞社

 ところが、超強力な国連制裁決議の採択にもかかわらず、すでに韓国と関係国の間では制裁の目標をめぐり微妙な違いが現れている。韓国政府が北朝鮮の体制崩壊を掲げているのに対し、中国は制裁と平和協定の同時推進を強調しており、米国は非核化交渉への誘導に重点を置いている。THAAD配備と関連し、中国とロシアが手を取り合って反対を公言している。開城工業団地の閉鎖と政府の追加独自制裁は、朴政権が当初掲げた3大外交・安保政策である対北朝鮮信頼プロセス、北東アジア平和協力構想、ユーラシアイニシアチブをすべて無と化した。

 熟慮もせず量産された感情的な政策には、必ずその代償が伴う。大統領は、国が心配で眠れないと言うが、国民は大統領のことで頭を抱えている。爆発寸前の状態だ。

オ・テギュ論説委員室長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-21 18:30

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/736034.html 訳H.J

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