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[寄稿]今こそ朴正煕の成長神話に終止符を

登録:2016-04-20 01:15 修正:2016-04-20 07:36

 韓国社会で朴正煕(パクチョンヒ)の成長神話は、いずれ越えなければならない山のような存在だった。 総選挙で与党が大きく敗北した今こそ、その時期なのかもしれない。 事実、朴正煕の神話は文民政府以後に経済がうまくいかない時、民主的な手続きに消耗を感じる度、国民の記憶の倉庫から引っ張り出されてきた。 建設会社社長出身の李明博(イミョンバク)や朴正煕の長女の朴槿惠(パククネ)が大統領になったのも、すべてその神話が作用した結果だった。

 果たして「奇跡」の歴史は繰り返されたか? この二つの政権を経る間に韓国は低成長、両極化、所得不平等、高齢者貧困、青年失業が慢性化した国家になった。 李明博大統領は4大河川と資源外交に数十兆ウォン(数兆円)を無駄にした。 過去8年をたどりながら1千兆ウォン以上の家計債務と700兆ウォンを超える国家債務が積もった。 朴槿恵政権3年間の国家債務は、盧武鉉(ノムヒョン)政権5年の9倍に達する。 朴槿恵政権は開城(ケソン)工業団地の閉鎖で多くの中小企業家とそこで雇用されていた人々を破産と貧困に追いやり、500万人の自営業者を崖っぷちに追い込んだ。

 そもそも朴正煕の指導力という「神話」も実際とは距離があるが、百歩譲り60~70年代の成長における朴正煕の功労を認めたとしても、民主化・多元化された今の世の中で大統領が軍隊の指揮官方式で国家経済を導くことができるということ自体がナンセンスだ。 21世紀のグローバル化時代に、そして韓国の資本主義が組立加工の段階を越えているのに、大企業バックアップによる成長戦略が受け入れられるわけもなく、1人当り所得を国家発展の指標とすることも時代遅れの話だ。

 にもかかわらず朴槿恵大統領は「経済」をまるで呪文のように唱えながら、歴代のどの大統領よりも財閥大企業偏向的政策を展開した。 過去3年間、朴槿恵大統領の公開日程468回のうち、企業家たちに16回会う間、労働界の代表とはただの一度も会ったことがない。 この政権のサービス産業発展基本法や「労働改革」法案を見れば、社会を壊して経済を生かそうという内容で、国家が大企業の請願解決者のように見えるほどだ。 大統領選挙当時、公約集の16%を占めた「福祉」という単語は当選直後に完全に痕跡をなくし、「経済活性化」が経済民主化の席を取って代わった。 世界最長の労働時間、最悪の労災国家であり非正規労働者、青年失業者が絶望のドロ沼で苦しんでいる状況で「経済発展」と「国民幸福」は虚しいスローガンに過ぎない。

 朴槿恵政権の3年間、私たちが記憶するに足る福祉・労働・教育政策は全くなく、実体が曖昧な「創造経済」が未来指向的な産業政策であったかも疑わしい。 少子高齢化への対処、知識経済のための社会政策準備は国家の未来と関連することであり、タイミングを逃せば国家を回復不能な状態に追いやりかねない事案だ。

 盧武鉉元大統領が自身を「旧時代の末っ子」と吐露した時に、韓国は成長主義パラダイムから福祉と暮らしの質向上のために国家の目標と戦略を完全に新しく立てていなければならなかったし、福祉のための租税改革と未来指向的人材養成のための教育革新と労働市場政策を立てるべきだった。 朴槿恵大統領自身が大統領選挙当時に公約した経済民主化や福祉を腰を据えて推進していたならば、経済はこれほどまでにはならなかったかもしれない。 セウォル号やMERS事態でもたらされた国民の国家不信を治癒するのにも、国家債務以上の葛藤解決費用が必要かもしれない。

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授 //ハンギョレ新聞社

 「大統領弾劾」に次ぐような朴槿恵政権の総選挙敗北は、国民も成長神話から目覚め始めた証拠だ。 企業フレンドリー政策は「成長」も実現できないということを分かり始めた。 遅くはなったが福祉、租税改革、経済民主化、教育革新の議論を再開し、南北関係を改善し、北方に突破口を作らなければならない。 共に民主党、国民の党の両野党は、第20代国会が始まり次第、すべての経済社会関連法案を原点から再検討しなければならない。 政権交替、大統領選挙を云々せずに、新しい国家パラダイムをそれぞれ提示し競争しなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/740405.html 韓国語原文入力:2016-04-19 19:15
訳J.S(1874字)

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