保守団体も執行停止仮処分を申請
「学校への教育資料配布は日常的
新たに手続きを問題視するのは異例」と指摘
ソウル市教育庁がソウル地域の中高校図書館に備置する計画の「親日人名辞典」を巡り賛否論議が起きている。 教育庁が各学校に本の配布予算を送ることの手続き上の適切性と、民族問題研究所が編纂した親日人名辞典が政治的に偏向しているかどうかが主な争点だ。
12日、教育部はソウル市教育庁に対し、親日人名辞典の購入と関連して学校図書館振興法規定などが守られたか29日までに報告させる公文書を送ったと明らかにした。学校図書を購入する際、購入前1週間公示して学校運営委員会と学校図書館運営委員会の審議を経ることになっているが、教育庁がこの手続きを守ったか確認するという趣旨だ。 教育部はこれと合わせて、特定民間団体が発行した書籍を教育庁が一括的に各学校に購入させる予算を送ることが適切だったか検討し、報告するよう求めた。 教育部関係者は「教育庁が適切な手続きを守らなかったとすれば、図書館に本を備置することはできない」と話した。 これに先立ちソウル市教育庁は今月2日、ソウルの中高校583校の図書館に親日人名辞典を一式(3巻)ずつ配布することにし、学校当たり購入予算30万ウォン(約3万円)を交付した。
ソウル市教育庁はこれに対して「ソウル市議会の議決に基づき予算を編成した目的経費なので、別途に学校運営委員会の審議を経る必要はない」として「事前に弁護士2人に諮問してあり、法的に問題がないため配布した」と説明した。
教育部や教育庁が学校に教育資料を配布するのは日常的なことであり、教育部が新たに配布手続きを問題視していることが異例という指摘もある。 たとえばソウル市教育庁は昨年6月、教育部傘下の東北アジア歴史財団が作った学生用の独島教材『独島、正しい理解』を小中高校に配布したが、この時も学校運営委員会を経ていない。 ソウル地域の中学校教師はハンギョレに「教育部や教育庁が必要と判断した教育資料を関連機関や団体とともに製作し配布するのは珍しいことではなく、親日人名辞典だけについて配布の手続きを問題視するということは理解し難い」と話した。
保守団体を中心に政治的偏向性を挙げて親日人名辞典の配布にブレーキをかけようとする動きも出ている。 「自律教育父母連帯」は11日、ソウル行政裁判所にソウル市教育庁の親日人名辞典配布のための予算執行停止仮処分申請を出した。 同団体は「親日人名辞典は親日行為の究明より政治的混乱を持たらしかねない」と申請の理由を明らかにした。
だが、これに対して「すでに学界と司法府で広範囲に事実性と客観性を認められた学術資料に対して、政治的偏向性を問題視する方がむしろ政治的」という反論が出ている。 朴正煕(パクチョンヒ)元大統領、パン・ウンモ元朝鮮日報社長、キム・ソンス東亜日報設立者らの親日行跡が含まれているため、保守勢力が政治的に反発しているという指摘だ。 親日人名辞典に収録された4389人のうち、朴正煕元大統領の息子パク・ジマン氏を含め子孫6人は、2008年以後に民族問題研究所を相手に発行および掲示禁止仮処分申請などを出した。 民族問題研究所はこのうち5件で勝訴し、1件は裁判所の和解調停で訴えが取下げられた。
民族問題研究所のチョ・セヨル事務総長は「すべての親日行跡に対して事案ごとに出処を表示したので、学界も司法府も共に客観性を認めた」として「野党議員の父や祖父の親日行跡はもちろん、民族問題研究所の精神的支柱であり『親日文学論』の著者であるイム・ジョングク先生の父親イム・ムンホ、イム・ホニョン民族問題研究所長の師匠ペク・チョルの親日行跡まで全て載っているほど厳正に作った」と話した。 チョ事務総長はさらに「教育部と国家報勲処(庁)を含む政府部署も、民族問題研究所に依頼して特定人物の親日行跡に関する照会をするほど、研究所は親日附逆(反民族的親日)問題に関する公信力を認められている」と付け加えた。