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[寄稿]エンゲルスの「合力」と朝鮮半島の地政学

登録:2016-04-17 23:01 修正:2016-04-18 07:55

 朝鮮半島の地政学要素における核心は、大国の戦略に編入された朝鮮半島で、大国の戦略的利益が相互膠着した力学関係を作り上げるということだ。過去もそうであり、現在もそうだ。 この戦略的利益を押し上げるのは力だ。 フリードリヒ・エンゲルスの「合力」の論理に従えば、朝鮮半島の歴史は、まさにその力がぶつかり合って成り立った合力によって作られたのだ。

 エンゲルスが言う合力とは、色々な形の力が互いに妨害し、牽制し、衝突し、相殺して互いに追求し促進して融合される総体的結果の力を言う。 一言で言えば相互膠着した力と力の平行四辺形が押し合うことによってできる全体的な力だ。 この理論を朝鮮半島に適用するとどうなるか。

 朝鮮半島は現在、世界でほとんど唯一、米国、中国、ロシア、日本という4大国の戦略利益が密接に交差している場所だ。 そこに当事国である韓国と北朝鮮まで合わせると、少なくとも6カ国の力が相互膠着している。 冷戦が終息した後、この6カ国は北朝鮮の核を巡って力学関係を作り上げた。 様々な形で膠着した6カ国の力と押し合いの結果である平行四辺形は、一つひとつの合力を作り上げ、それは「9・19合意」のような結果を導き出した。 その「9・19合意」が崩れたのも、やはり力が相互に膠着・牽制・衝突をして相殺され新しい合力が作られたためだ。

 結局、北朝鮮の核に関連した6カ国の力には強弱があり、力が傾く方向も同じであるはずがない。 追求力は国ごとの国家利益だ。 国家利益の構図は基本的に軋轢の構図だ。 このような国家利益が相互作用して影響を及ぼし、牽制したり相殺したりして、力の強弱と方向がぶつかる膠着点で合力が成り立つ。 そのような意味で見る時、今日の北朝鮮核の政局を作り上げた合力は、北朝鮮だけを非難する程に単純ではないだろう。

 とにかく現在の北朝鮮核の政局は、北朝鮮を力で制圧しようとする姿を見せている。 すると力と力が膠着して作り上げられる合力は、今度はどんな新たな歴史を作り出すだろうか?

 国連安全保障理事会2270号決議に強く反発する北朝鮮の力は、関連国の力とは完全に逆の方向に働く。 互いに相殺し合うということだ。 そこに関連国の力の強弱と方向も完全には同じになれない。 同じ制裁とは言っても、目的が違うこともある。 韓国の目標は北朝鮮の「暴政終息」にあるようだ。 米国はアジア太平洋戦略次元で接近している。 中国は北朝鮮核問題を談判の軌道に乗せることが目的という。 目的が違えば意志が異なり、追求する力の強弱と方向が違ってくることもある。 結局、関連国の力も互いに相殺されうるという意味だ。 再びエンゲルスの言葉を借りれば、その結果はどこの誰も希望しなかったことになりうる。

 北朝鮮は現在の21世紀グローバル時代とは相反するように核とミサイルで韓米日を脅している。 その力はどこから出てくるのか。北朝鮮が人里離れた島ならばいざ知らず、結局、その力の源泉は朝鮮半島の地政学にある。 北朝鮮は地政学的劣勢を優勢に変えて「強大国を勝手気ままにしている」と言われるが、皮肉なことに、朝鮮半島を自分たちの戦略に編入させた超大国の力較べが北朝鮮に力の空間を作り出している。 米国の「忍耐政策」も結局は北朝鮮核に力を与えたと言えるのではなかろうか。

 今日まで朝鮮半島を巡る力は、互いに障害物になったり、牽制しながら、衝突したり相殺したりする作用がより大きかったと言える。 結局、肯定的合力を作る力は外部ではなく朝鮮半島の内部にあるだろう。 それは感情的次元ではない戦略的次元の力であろう。

金景一・北京大教授=資料写真//ハンギョレ新聞社

 そのような意味で、朝鮮半島問題の究極的解決は、やはり対決の地政学的力を弱化させ、協力の地政学的力を広げることだけだ。 エンゲルスも歴史の合力の諸要素の中で、窮極的に決定的役割をするのは経済要素だと述べた。 その合力はいかなる理由であれ、民衆の暮らしまで疲弊化させ経済破綻に至らせる合力ではないだろう。

金景一・北京大教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/740088.html 韓国語原文入力:2016-04-17 19:45
訳J.S(1762字)

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