朝鮮半島は東方の周辺国家だが、近代史以後に朝鮮半島で起きたすべての戦争は、ほとんど例外なく当時の超大国間で起きた。 地政学的な特性上、超大国の戦略に編入されたためだ。 清日戦争、露日戦争はロシアの南下戦略と日本の北進戦略、清の守城戦略が朝鮮半島で衝突して起きた。 朝鮮戦争は戦後、米ソ両超大国が朝鮮半島を二つに分けて自分たちの戦略に編入させ内包した。
東西冷戦の終息はグローバル化と地域経済ブロック化を呼び起こしたが、朝鮮半島での超大国の戦略には終止符が打たれなかった。 朝鮮半島は相変らず韓米日の“南方三角”対北朝鮮という冷戦構図の下で超大国の戦略に編入されている。 朝鮮半島を囲む超大国の戦略的軋轢は次第に水面上に上がってきた。 媒介したのは北朝鮮の核だった。 北朝鮮の核はついに韓米日三角同盟を前例なく強化して、中米間の軋轢に飛び火する結果を招いた。 北朝鮮が核を爆発させるたびに中国がターゲットになる所以だろう。
中国が北朝鮮を庇うからか? 中国は北朝鮮の3回目の核実験の後、北朝鮮との関係を悪化させても国連安保理制裁を厳格に履行した。 それでも北朝鮮が4回目の核実験をすると、米国は直ちに中国責任論で中国を圧迫した。 その後には朴槿恵(パククネ)大統領の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備談話も中国に向けた圧力と見られた。 中国は何を間違えたというのだろうか?
韓米は中国が北朝鮮に対する石油供給と貿易取引を断ち切ることを望んでいる。 国境封鎖まで議論されている。 そうなればどうなるだろうか。 北朝鮮の屈服、「苦難の行軍」、北朝鮮の崩壊のようなシナリオがありえる。 韓米は北朝鮮が手を上げなければ崩壊すると信じている。
前回とは異なり、今度は中国により、再びあのすさまじい「苦難の行軍」を体験することになればどうなるか。 中国と北朝鮮は1300キロメートルに及ぶ国境で接している。 「敵対国」北朝鮮は、核を持つ北朝鮮よりはるかに中国にとって脅威ではないだろうか。 韓米の希望どおり北朝鮮が崩壊すればどうなるだろうか。 世界最強の大国の戦略利益が密集した地域が朝鮮半島だ。 過去の歴史は近代史以後の朝鮮半島でのすべての戦争は超大国間の戦略衝突であったことを教える。
北朝鮮核の発端は米国の東アジア戦略と北朝鮮の生存戦略間の衝突だ。 米国の戦略が絡んでいるわけだ。 それこそが解決が難しい理由だ。 その結果が混沌とも言えるほど複雑に展開しているのが北東アジアの現実だ。 韓国が配備しようとしているTHAADも同じ脈絡だ。 韓国はTHAAD配備が主権国家の権利だと主張している。 だが、米中の戦略が衝突に向かえば、THAADの機能は韓国ではなく戦時作戦権を持つ米国が調整する可能性が高い。 中国はTHAADが中米間の戦略的均衡を破り、中国の戦略利益を侵害すると考えている。 核心はやはり米中間の軋轢だ。 韓国が立ち上がって中国を説得し難い理由であろう。
こんな話がある。米国はホットマネーを米国に回すためにアフガニスタン戦争をし、ユーロのスタートを阻むためにコソボ戦争を起こし、今度はドルの地位に対する人民元の挑戦を阻むために中国周辺で紛争を起こすと言う。 どうなろうと昨今の米中関係は尋常でない。 中国の南海、東海、黄海のどこかで紛争が起こりそうな雰囲気だ。 冷戦が終息した後、バルカン半島、中東、コソボのような地政学的要衝地では米国による戦争が絶えなかった。 中国周辺でそのような紛争が起きれば、米国は中国の浮上を確実に抑制できるのではないだろうか。
朝鮮半島は朝鮮戦争以来、最大の危機を体験している。 米国の戦略資産が「東方のバルカン半島」に押し寄せて来ている。 単純な武力示威や抑止力と見るには、その規模があまりに大きい。 すぐにも戦争ムードが熟しそうだ。 第1次世界大戦は、戦争は起きないという信頼から各国が戦争ムードを盛り上げて、偶発的事件により手のほどこしようもないまでに勃発したという。 戦争憂慮は果たして取越し苦労だろうか。