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[インタビュー]米国が北朝鮮に無関心なのは韓国に自国利益を保護する勢力があるから

登録:2016-02-21 23:28 修正:2016-02-22 10:04
ノーム・チョムスキーMIT名誉教授
米マサチューセッツ工科大学(MIT)ノーム・チョムスキー名誉教授 //ハンギョレ新聞社

進歩的知識人が語る米国、そして朝鮮半島

 世界的な言語学者で進歩的知識人のノーム・チョムスキー米マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授が、有力な米国大統領候補の対外政策に批判的見解を明らかにした。 共和党候補は言うまでもなく、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官は「強硬論者」であり、バーニー・サンダース上院議員は「経験がない」ということだ。 インタビューは先月17日、チョムスキー教授の研究室で米国に暮らしているシモン・チョン博士(韓国政策研究所研究員)が行い、質問はハンギョレと共同作成した。 シモン・チョン博士は現在、朝鮮半島の平和と和解、人権伸張のために努力する団体と個人の国際的連帯組織である「コリア・ピースネットワーク」(Korea Peace Network・KPN)を作るために活動している。

次期米大統領の外交政策に関する質問に
共和党候補が当選すればひどい変化も
民主党もヒラリーは強硬論者、サンダースは経験不足

北朝鮮の核を巡る韓国診断
南北関係の改善は保守政権の権力喪失を招く
限りない戦争が保守政権に有益…平和政策を取る理由ない

-多くの人が次期米国大統領の外交政策を心配している。 次期大統領の外交政策に大きな変化があると展望するか?

 「共和党候補が大統領に当選すれば、大きくひどい変化があり得る。今回ほど共和党の大統領候補に失望したことはなかった。 例えば、テッド・クルーズ(上院議員)のテロに対する対応策はじゅうたん爆撃だ。 それは大量殺傷も同じことだ」

-バラク・オバマ大統領と比較してクリントンの外交政策は大きく違うと見るか?

 「クリントンの記録を見れば、外交政策においては強硬論者だ。 クリントンは強硬外交でもたらされるおぞましい結果に対して、別に道徳的責任を感じもせず、傷つくスタイルでもない。 例えば、リビアの事例を見よ。 リビア爆撃を強硬に主張したのもクリントンだった。 リビア爆撃の結果はどうなったか? 一国家を完全に破壊した。 爆撃後、リビアはイスラム急進テロ勢力の心臓部になりつつある。 また、アフリカや中東などの兵器輸入および避難民と難民の中心部になった。 完全に惨事と言える。 だが、米国はそのような結果を別に意にも介さない。 米国のいわゆる「テロとの戦争」を見ればいい。 約15年前、アフガニスタンの小さな部族の村で始まったテロリズムが今や全世界に拡張された」

-米国民主党の大統領候補バーニー・サンダースの外交政策はどのように評価するか?

 「サンダースは予想したより善戦している。 だが、外交政策では別に意思表明をしていない。 サンダースは「ニューディール民主党」と考えれば良い。 主に国内問題に重点を置いている。 外交政策については別に経験がないようだ」

-サンダースが大統領になれば、非介入的外交政策を展開すると予想するアナリストもいる。

 「内部の動力は別の結果をもたらすことがある。 国内政治を強調するために攻撃的外交政策を展開することもある」

-アメリカ人がもう一つの戦争を支持するかは疑問だ。

 「大衆は嘘に簡単に惑わされる。 嘘を言えば言うほど戦争に対する支持度は高くなる、すなわち嘘が政治に及ぼす影響力を分析した重要な論文が、政治学術雑誌に発表されたこともある」

-メディアが虚偽を流布する媒介の役割をするということか?

 「批判しないメディアのことだ。言論の中立性という言葉があるが、これは単にワシントンの政界の中だけに適用されることだ。 ワシントンの政治以外の領域では、民主党も共和党もほとんど差がない。 例えばイラク戦争。 サダム・フセインと9・11テロを結びつけるために多くの嘘を利用した。 そのような嘘偽りが大衆に受け入れられた」

米マサチューセッツ工科大学(MIT)ノーム・チョムスキー名誉教授が先月17日、自身の研究室でシモン・チョン博士(韓国政策研究所研究員)に米国の対外政策と北朝鮮核の解決法などに関する見解を明らかにしている //ハンギョレ新聞社

-イラン核交渉の妥結についてどう思うか?

 「イランは中東地域や世界を脅かさなかったのだから、イランとの核交渉は初めから必要なかったと見る。 イランが脅威になったとすれば、極めて簡単に解決する方法があった。 中東非核地域を宣言すれば良い。 すべての国家が願ったことだ。 アラブ国家も中東非核地域提案を支持した。 反対した国家は米国とイスラエルだけだった。 理由は、中東非核地域が実現すれば、イスラエルの核兵器も調査対象になるためだ。 米国はそれを望まない。 つい先日も中東非核地域問題が議論されたが、米国は拒否した。 どのマスコミもこれを報道しなかった。 米国とイスラエルは、他国が攻撃抑止能力を持ったり、イランが自国安保能力を持つことを願わない。 とはいえイラン核妥結がないよりはあった方が良い」

‐北朝鮮も核プログラム開発を米国の攻撃抑止と自国安保のためと主張している。

 「北朝鮮の主張は十分理解できる。 なぜなら、他国の攻撃、特に米国の攻撃を抑止する能力がなければ、北朝鮮のような国は攻撃されれば一気に破壊されかねないからだ」

-北朝鮮核問題解決のために最も建設的な方法は何だと考えるか?

 「2005年に6カ国協議を通じて理性的で常識的な協定を締結した。 その交渉が北朝鮮の核問題を解決しただろう。 まさにその交渉後、ジョージ・ブッシュ大統領が北朝鮮のマカオにある銀行口座凍結等を通して、北朝鮮を外部世界から孤立させた。 2005年の交渉を米国が弱化させ破棄した。 バラク・オバマ大統領がイラン交渉の締結を発表した日、北朝鮮に対する新たな制裁を発表したことも本当に興味深い」

-なぜ米国が北朝鮮との協定を弱化させたと見るのか?

 「米国にとって北朝鮮は政策優先順位の対象ではない。 北朝鮮がいつかは核を保有すると予想して、米国は例年軍事ゲームを韓国と実施している。 米国は北朝鮮に無関心であり別に心配もしていない」

-米国が北朝鮮を心配していないとはどういう意味か?

 「ジョージ・ブッシュ大統領が当選すると、北朝鮮が強硬に出てくるよう誘導するためのすべての政策を遂行した。 2005年の協定は事実意味のある協定だった。 ただし、問題は米国の立場としては北朝鮮がさほど重要な関心事ではないということだ。 歴史的に見ても、米国は全世界で核兵器を止めるための努力をほとんどしてこなかった。 1950年からの歴史を調べれば、米国は核兵器を止めるための努力をほとんどしなかったし関心もなかった。 当時唯一の脅威はソ連だった。 ソ連は米国に比較にならないほど核開発で低開発状態だった。 米国に意志さえあったとすれば、核開発は遮断することができた。 米国にはソ連の核保有を遮断しようとする意志も努力した記録もほとんどない」

-米国のアジア再均衡政策に対してどう思うか?

 「中国牽制政策だ。 中国はすでに海と陸で韓国、日本、台湾、フィリピン、グアムなどの非友好的国家に囲まれている。 米国は軍事基地をさらに構築しようとしている。 先日、B52が中国国境付近まで飛行した。 極めて好戦的な動きだ。 核戦争は全てを破壊し尽くす。 だが、米国はいつも火力で対応する」

-日本が再び軍事力を強化すると見るか?

 「日本の安倍晋三首相は再軍事化をすでに進めており努力もしている。 成功するかどうかは分からない。 沖縄を見ればいい。 軍事基地の必要がない所だ。 平和運動家が中止させるために熱心に努力している。 では北朝鮮との和解ムードや、太陽政策に関して韓国内では関心があるか?」

-7年以上にわたり李明博(イミョンバク)、朴槿惠(パククネ)保守政権が執権し、現時点では希望が見えない。 韓国はあたかも60-70年代の反民主・権威主義政治体制に復帰しているようだ。

 「それこそが核心だ。 米国が北朝鮮問題に別に関心もなく、脅威も感じない理由は、韓国内の米国の利益を保護する保守・守旧勢力、権威主義・反民主政権が健在なためだ」

‐北朝鮮問題と関連して韓国内の保守、極右勢力が米国以上の障害物になっていると主張する人々もいる。 例えば、選挙の度に従北、北朝鮮脅威論などが保守層の支持・結集のための選挙の手段として使われてきたし、野党を分裂・弱化させる役割を果たしてきた。

 「そうだ。南北関係の改善は保守政権が権力を失う原因になる。 したがって韓国の保守政権には南北平和政策を展開する理由がない。 常に外部から危機を受けているという点を強調し、危機意識を呼び覚ますことが保守にとり利益になって、既得権守護に重要だ。 絶え間ない戦争状態、テロとの戦争が既得権に有益なのと似ている」

ワシントン/イ・ヨンイン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/731329.html 韓国語原文入力:2016-02-21 15:57
訳J.S(3880字)

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