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[寄稿]安倍政権で露呈する政治の軽さ

登録:2016-02-15 01:21 修正:2016-02-15 05:27

 先日、甘利明経済再生担当大臣が資金疑惑の責任を取って辞職した。さらに、この数日、安倍政権の女性閣僚が無知や不見識を次々と露呈している。放送業界を監督する任にある高市早苗総務大臣は、テレビ番組が不公平な報道をしたら電波の停止を命じることもあると発言した。安倍政権はテレビが政権批判をしないよう様々な圧力をかけてきたが、監督権限を持つ大臣が法律に基づいて電波停止の可能性に言及することはかつてない威嚇である。そもそも不公平とは何かを誰がいかにして判定するのか。与党の議員である総務大臣が判定するなら、自党を批判する報道を不公平と断定することもありうる。高市氏は報道の自由を無視しているというしかない。

 また、丸川珠代環境大臣は、福島第一原発の事故による放射能汚染対策の中の、年間被ばく量1ミリシーベルト以下という基準について、反放射能派が騒いで根拠もなしに決められたと述べた。丸川氏は、放射線被ばくによる健康被害に関する学問的な議論を全く無視して、福島における線量低下を訴えようとしたのだろう。しかし、その無知は大臣失格である。そして、島尻安以子沖縄北方担当大臣は、スピーチの中で歯舞諸島の漢字が読めず、立ち往生した。

 このように、安倍政権の閣僚の質の低さは目を覆うばかりである。それにもかかわらず、安倍首相は順調に政権運営を続けている。甘利氏の辞任のあとに行われた各紙、各局の世論調査では、内閣支持率はむしろ上昇し、調査によっては50%を超えている。

 具体的な問題についての質問では、多くの国民は甘利氏の弁明を信用しておらず、原発再稼働や憲法改正に関する安倍政権の政策を支持していない。この政権支持の大きさをどう説明するか政治学者としては頭を抱える。

 アメリカでは大統領候補者を決める民主、共和両党の予備選挙が熱を帯びている。特に注目したいのは、民主社会主義を唱えるサンダース上院議員の躍進である。サンダース氏は大学授業料の無償化、最低賃金の引き上げ、国民皆保険などを訴えており、若者の間で支持が広がっている。これらの政策は特に大学生や若い労働者の生活に密接に関係している。若者は自分たち自身の未来を切り開くためにサンダース氏を応援している。アメリカの若者が、新自由主義の呪縛から解放され、民主政治を通して世の中の姿を変えられるという希望を取り戻していることは、うらやましい限りである。

 アメリカとの対比で考えれば、日本人の大半は政策と政権支持を切り離している。つまり、誰が政権をとっても政策は変わらない、そして自分の生活や境遇も変わらないと、徹底した諦めを持っているということができる。閣僚が金銭スキャンダルで辞任しても、女性閣僚が無知を露呈しても、人々は政治家という者はそんなものだと思い込み、怒りも、憤りもしない。北朝鮮が核開発をして、日本の安全が脅かされている今、政策の巧拙よりも、日本の安全のために外に向かってはっきりとした言動や行動ができる政治家がよいというのが、安倍政権を支持する人々の政治感覚だろう。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 円安と株高を誘導するために日銀にマイナス金利を採用させ、年金基金を株式市場に投入している安倍政権は、この瞬間の利益のために将来の日本の雇用や社会保障を壊している。高市発言に見られるメディア統制の発想は、日本を北朝鮮のような全体主義に導きかねない。日本の自由と豊かさはかつてない崩壊の瀬戸際に来ている。しかし、それを漫然と見過ごす国民の鈍感さこそ、日本にとっての最大の危機である。

 今年は参議院選挙が予定され、衆議院の解散総選挙も取りざたされている。自らの命運を自らの政治的選択で切り開くという気概を持てないなら、日本の民主主義は朽ちていくばかりである。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-14 18:55

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/730268.html

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