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[コラム] 韓国に必要な政治ビッグバン

登録:2016-01-19 22:51 修正:2016-01-20 06:03

 現在、韓国は実質的な政治ビッグバンがなければならない状況だ。 野党勢力の分裂は形式だけのビッグバンに終わるようだ。 韓国と似た発展経路を経てきた台湾では野党候補が圧勝し、韓国のように深刻な青年失業と高い非正社員比率を記録したスペインでも30代が主軸となったポデモス(私たちはできる)が30年続いた二党体制を打ち破り変化の求心になった。 これらの国では選挙以前にすでに大衆が動いた。 変化の切迫性においては韓国は決してこれらの国に劣らない。 しかし韓国の分裂した二つの野党は大衆の変化への熱望を取り込めないばかりか、かえって熱望を蓋で覆っている。

 既存の単純多数、勝者一人占めの選挙制度にも問題があるが、野党の政見不在も極めて深刻な障害物だ。 二つの野党は人材招聘に総力を挙げている。 ところで私たちは1988年以後、野党が人材の輸血を通じて今まで延命してきた事実を数えきれない程見てきた。 招聘された“斬新な”人々は、一回か二回使われては廃棄されたり、現実安住の政治家になったし、政党政治は依然として定立できなかったし、野党はイベント政党に甘んじた。 政策研究所も役割がなく、政治研修院もなく、草の根党員も事実上いないその日暮らしの政党だ。

 人材招聘イベントで支持率は上げられても、地域や中央で党に献身してきた多くの党幹部たちは再び挫折感を味わうだろう。 そして招聘人材の大部分はすでに成功したエリートであるから、成功できない大多数の国民は政治の主役にはなれず再び見物人に転落する。 その上、成功して有名になった人は政治に進むという公式を再び繰り返し、専門家集団の自尊心は踏みにじり、自身の職業世界に忠実で政治と社会を変えなければならないという現代社会の大命題を握りつぶす悪慣行を確認する手続きだ。

 私は野党勢力の分裂自体が誤りだとは考えない。 問題は分かれた後に二つの野党が政権批判と政策競争を通じて大衆の熱望を起こすのではなく、人材招聘、中道戦略を通じて票を得ることに重点を置くところにある。 既存野党の支持票を分け合う政治は、野党全てを没落させるだろう。 敏感な国家懸案に対しては沈黙で一貫する党が、変化の主役になることはできないだろう。

 野党は政治そのものに失望した青年労働大衆を引き込んで、野党支持のパイを拡大する時にのみ勝利できる。 英国労働党でもジェレミー・コービンが党首になってから数カ月で党員が20万から39万人に増えたし、米国では“根っからの左派”と言われるバーニー・サンダースが本戦に進めばライバルであるクリントンより共和党のトランプに勝つ確率がはるかに高いという調査結果が出た。 彼らは全て自分の立場を5分以内に情熱と真正性が込められた言語で表現するので、これまで巨大政党の独占体制に幻滅を感じていた学生、青年、労働者の熱烈な支持を受けている。

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授//ハンギョレ新聞社

 野党連帯、候補単一化、ビッグテント、全て必要だ。 しかしそれだけではダメだ。野党勢力は招聘された人物を含め10人余りの30~40代少壮グループを前面に押し立てて、彼らの声で選挙まで毎日一件ずつ政策代案を発表しなければならない。 無理な単一化よりは朴槿恵(パククネ)政権の政策に対する全面批判と自身の代案提示で互いに競争し執権セヌリ党との差を浮き彫りにしなければならない。 各地域では特定政党に身を置いていない青年、自営業者、労働組合員、各種社会団体会員たちが地域政治委員会を構成し、各党の政策はもちろん地域に出馬した候補の検証作業を行い、その情報を住民に公開しなければならない。 現職議員が出馬すれば、彼の国会での成績表と重要争点法案に対する賛否の立場に関する情報を集合し有権者に公開して、新人ならば彼らが過去に何をした人なのかを調査し発表して有権者を組織しなければならない。

 招聘された新しい人物だけに注目するマスコミの報道は詐欺だ。 数人の招聘要人が政治を変えることはできない。 選挙は結果に過ぎない。 選挙以前に大衆の参加、政策論争の全面化を通じて実質的政治ビッグバンが起きなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/726898.html 韓国語原文入力:2016-01-19 18:47
訳J.S(1860字)

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