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[コラム]「独裁者の娘」で米週刊誌に抗議、主犯は誰なのか

登録:2015-12-18 01:37 修正:2015-12-19 19:54
米週刊誌『ザ・ネーション』に報道された記事=ザ・ネーション画面キャプチャー//ハンギョレ新聞社

 歴史教科書国定化問題が浮上した頃、「国定教科書の事態は韓国の外交力を蝕むことになるだろう」というコラムを先月初めに書いた。韓国の民主主義の退行が海外メディアの関心の対象となれば、現場の外交官は戦々恐々とするほかなく、その対応のために無駄な外交力が費やされることになるとする内容だった。

 予想よりも早く、その懸念は現実となった。米紙ニューヨークタイムズが先月社説を通じ「朴槿恵(パク・クネ)大統領が民主主義的自由の退行に没頭しているように見えるのは憂慮すべきことだ」として、直接(朴大統領に)狙いを定めたのは、始まりに過ぎなかった。批判の強さこそ異なるものの、韓国の民主主義の状況に対する外国メディアの批判的な報道が相次いだ。

 革新的な米週刊誌ザ・ネーションが「独裁者の娘が労働者を弾圧している(In South Korea,a Dictator's Daughter Cracks Down on Labor)」というタイトルの記事を掲載したことをきっかけに、国外メディアの報道に対する政府の水面下の対応が明らかになった。記事を書いたティム・ショラク氏は、フェースブックに乗せた文の冒頭で「朴槿恵政権がこの記事について強く抗議した」と書き、編集長から伝えられた内容を公開した。ショラク氏によると、ザ・ネーション編集長は「ニューヨークの総領事館側が数回メールと電話を通じて、私(編集長)に会って、あなた(ショラク)の記事について“相談”したいと言っている。私と電話で話した人は、具体的な話もせず、事実関係に誤りがあると指摘したり、主張することもなかった」と話したという。

 野党の政治家をはじめ、多くの人がニューヨーク総領事館を強く批判した。しかし、“行動隊”に過ぎない総領事館に対して非難の声を上げるのは、標的を誤ったとしか言いようがない。そのような批判は、この事態を招いた“黒幕”に隠れ蓑を与えることになるだけだ。

 黒幕は誰なのか。現地公館に勤務する外交官に、いわゆる「本部」と呼ばれる外交部の指示なしに、自らの判断でこのようなこと仕出かす度胸はない。今回のように朴槿恵大統領を正面から取り上げた記事に関わるものなら、なおさらだ。ニューヨーク総領事館に勤務する関係者からも、本部の指示があったことが確認できた。

 外交部の公式ブリーフィングに目を通してみても、このような事実を簡単に確認できる。 ニューヨークタイムズの社説が出てから、チョ・ジュンヒョク外交部報道官は定例ブリーフィングで、「ニューヨークタイムズに理解を求め、私たちの立場を伝えられるよう努める予定だ」と述べた。さらにチョ報道官は、ニューヨーク総領事館がショラク氏と接触した事実が明らかになった後も、「通常の対外メディア活動の一環であり、今後も続ける」として、本部の指示を撤回するつもりがないことを明らかにした。

イ・ヨンイン・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 外交部が公式のメディアブリーフィングで表明する立場は、特に今回のような敏感な問題についてメディアに対応する際には、かなり上の高官たちの決裁や指示が必要となる。「米国通」と呼ばれる政府高官が米国のマスコミと接触して、しかも米国的な考え方からすると、あまり説得力のない反論を貫こうとした場合、どのような問題が発生するのかについて、知らなかったはずがない。それが予想できなかったのなら、問題はさらに深刻であり、知っていながらもそれを指示したのなら、国の評判は後回しにしてまで、“あの方”のご機嫌だけを考えたとしか思えない。多分、自分たちの行動がどれほど恥ずしいものなのかも知らず、指示通り実行に移したニューヨーク総領事館を褒め称えたのかも知れない。

 また、外交部は大統領府とも緊密に“協議”し、最終的なサインをもらった可能性が高い。朴槿恵政権の意思決定構造からして、現場の省庁にはほとんど裁量権がないからだ。だから、今回の事態に対する批判は、独走する朴槿恵政権と牽制機能を喪失した野党を向けられるべきだ。

イ・ヨンイン・ワシントン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-12-17 19:04

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/722373.html 訳H.J

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