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[社説]「大学民主化」の象徴を奪う直選総長の廃止

8月17日、釜山市金井区にある釜山大学本館3階のテラス式の国旗掲揚台の近くで、同大学国文科のコ・ヒョンチョル教授が1階玄関に飛び降りて死亡した。教授たちが、コ教授が亡くなった場所で対策を議論している=釜山/連合ニュース

 教育部が国立大の総長の直選制を廃止して間接選挙制に統一することを進めると明らかにした。まずはっきりしていることは、総長の直選制廃止は法律改正が必要な事案であり、政府思いのままにはできないという点だ。また民主化の結果として導入された直選制をむやみになくそうとすることは民主主義を否定する態度として批判を受けてしかるべきである。

 教育公務員法によると国立大の総長候補は「該当大学で決めるところにより」、直接または間接で選定できる。これに教育部が一々干渉すること自体が違法であり、憲法が保障する大学の自律性を侵害する行為だ。その端的な例がまさに「ロット式抽選」だ。教育部は直選制はもちろん、教授が総長推薦委員を選ぶ間接選挙制さえ除いて「総長推薦委員は無作為抽選だけにより選出するように」と大学に要求していた。その後、今ごろになって無作為抽選制度を廃止すると恩着せがましくしているのだから、笑わせるしだいだ。

 憲法と法律により大学で自律的に選ばれた総長候補を、一言の理由の説明もなく、つき返しているのが現政権である。理由を述べよとの裁判所の判決も無視している。総長空席の事態で学生たちが数十カ月被害を受けても表情一つ変えようとしない。そうしたところ韓国体育大の総長にすぐさま“朴大統領派”の政治家を座らせた。大統領府の気に入る総長を座らせようとして大学の自律性と正常な運営を壊した政府がいかなる顔をして総長任用制度の改善を口にできるのか理解できない。

 さらに心配される恐れがあるのは、私たちの社会の民主化とともに進んだ大学の民主化が昔に逆戻りすることだ。任用拒否にあった一部の国立大の総長候補らは過去の時局で宣言活動したかなどを検証されたという。政府は軍事独裁政権のように政権に飼いならされた“御用総長”を願っているのかと尋ねたい。大学は自ら総長を選出するべきで、直選制をはじめとする選出方法もまた自由に選択するべきだ。直選制の要素が強いほど総長選出に政権の影響が作用する余地は減るだろう。大学から民主主義が消えればその本質である批判的知性も高まらない。

 4カ月前にコ・ヒョンチョル釜山大教授が総長直選制の廃止に反対して身を投げて亡くなった。コ教授の犠牲によって釜山大は直選制を復活させたが、国立大はすでに全て間接選挙制で、政府は直選制を消滅させることに執拗だ。大学の民主主義、我々の社会の民主主義を心配したコ教授の意志が一層切実になっている。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/12/15 19:00

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/721944.html 訳T.W

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