登録 : 2015.07.25 00:49 修正 : 2015.07.25 07:48

言論の自由最悪国に選ばれた21カ国のうち、タイなどを除けばほとんどの国のマスコミが自国政府がハッキングチーム資料流出と関連がある事実すら正しく報道できていない。イタリアの「ハッキングチーム」のハッキング プログラム「ガリレオ」紹介映像キャプチャー //ハンギョレ新聞社

 「各国政府にハッキングツールを売ってきた会社がハッキングされた」(米紙ワシントンポスト7月6日付)、「諜報会社ハッキングチーム:ハッカーがハッカーを苦境に陥れる」(独誌シュピーゲル7月7日付)、「警察と国家情報センター、ハッカー会社の顧客に」(スペイン紙エルファイス7月7日付)、「ハッキングチーム:漏れ出たEメール、オーストラリア政府機関が悪名高い監視会社と取引露見」(豪放送ABC7月10日付)、「ハッキング暴露で私生活を憂う」(タイ紙バンコクポスト7月19日付)、「韓国情報要員電話ハッキング スキャンダルで自殺」(英紙インディペンデント7月20日付)…。

■バンコクポストはなぜ食い下がれなかったか

 大騒ぎだ。イタリア企業「ハッキングチーム」の資料が流出した7月6日から外信が報じた記事のタイトルである。 ところがソウルから聞こえてくる話はまったく違う。

 「他の国は(RCSと関連した)報道が全くなく静かなのに、韓国ばかりがこんなに関心を持ち…」。これは14日、国会情報委員会セヌリ党幹事イ・チョルウが話した内容だという。

 「35カ国97機関がこのプログラムを購入したのに、韓国のように騒々しい国はない」。これは17日、国家情報院が出した公式立場だという。

 「30カ国情報機関、イタリア企業ハッキングチームと取引…該当国は“安保懸案”だとし静かに対応」。これは朝鮮日報7月19日付記事のタイトルだ。

 これら三つの話の主人公は、すべて大韓民国を代表する右翼愛国者であり、情報と権力を握り既得権勢力の防波堤の役割をしてきた。 その情報の内容が問題だ。 一国の政府与党の国会情報委員会幹事と、一国の情報を掌握し国家を揺さぶるスパイエージェンシーと、一国の最大発行部数を持つ新聞が、外信を見ていなかったり、または見ても外信の読み方が分かっていないという事実を暴露したようなものだから、驚かざるをえない。 政党であれ情報機関であれマスコミであれ、情報を扱う者ならば外信から目を通すのがイロハということを知らないはずもない。報道機関の海外支局は言うまでもなく、すべての国の政府は自国大使館にマスコミ担当官を置き、外信の隅々まで目を通してきた。これは昔も今も情報を得て情勢を分析する上で、外信を最も重要なベースと考えてきたからだ。ところが市民の血税で大使館ごとに国家情報院職員まで送っていながら、今になってその政府与党の情報委員会幹事という人物が「他所の国では関連報道が全くなく静か」と言ったり、国家情報院は「韓国のように騒々しい国はない」と言ったり、本当に息が詰まりそうだ。 インターネットを見てみるだけでも、ぞろぞろと外信が出てくるのに、全く勉強をしなかったのか、嘘をついているのか、そうでなければ世の中の動きを読めないのか、内心までは分からないがいずれにせよ政府与党の情報委員会幹事も国家情報院も情報関連の仕事をする資格がないことだけは明らかだ。

 さらに大きな問題は、国家情報院と朝鮮日報の外信の読み方だ。国家情報院いわく「韓国のように騒々しい国はない」、朝鮮日報いわく「該当国の安保懸案だとし静かに対応」。この二つはもう少し掘り下げてみるに値する。 国家情報院も言ったが、今までにハッキングチーム資料流出で明らかになったことを見れば、35カ国97機関がハッキング プログラムを購入した。 ここで注視すべき点は、その35カ国の正体だ。 ちょっと複雑でも二種類の数値を几帳面に拾い出してみるに値する。 その35カ国を、2015年国境なき記者団(RSF)が付けた世界言論の自由指標を尺度にして、2014年にエコノミストが付けた民主主義指標も並べてみよう。参考までに括弧の中の前の数字は言論の自由指標で、後の数字は民主主義指標だ。

35カ国97機関が購入したと言うのに
韓国のように騒々しい国はない?
政府与党の国会情報委幹事と
国家情報院と朝鮮日報の話は正しいか
言論の自由・民主主義指標で見れば
エクアドル・オマーンなど21カ国は最低
国家情報院の比較自体が話にならず
残りの国々では主要ニュースで報道

 エクアドル(108位/79位)、ナイジェリア(111位/121位)、アラブ首長国連邦(120位/152位)、オマーン(127位/139位)、コロンビア(128位/62位)、モロッコ(130位/116位)、ホンジュラス(132位/80位)、タイ(134位/93位)、エチオピア(142位/124位)、マレーシア(147位/65位)、メキシコ(148位/57位)、ロシア(152位/132位)、シンガポール(153位/75位)、エジプト(158位/138位)、アゼルバイジャン(162位/148位)、バーレーン(163位/147位)、サウジアラビア(164位/161位)、ウズベキスタン(166位/154位)、カザフスタン(169位/137位)、スーダン(174位/153位)、ベトナム(175位/130位)の21カ国はあえて言論の自由指標を引き合いに出さずとも、外信版ですでに言論弾圧で悪名を駆せてきた国々だ。外信記者の目には60位を占めた大韓民国が属している中間グループであるチリ(43位/32位)、アメリカ(49位/19位)、モンゴル(54位/61位)、ハンガリー(65位/51位)、イタリア(73位/29位)、キプロス(76位/42位)、パナマ(83位/47位)のような国々も大きくは変わらない。残りのオーストラリア(25位/9位)とヨーロッパ国家であるチェコ(13位/25位)、ポーランド(18位/40位)、ルクセンブルク(19位/11位)、ドイツ(18位/13位)、スイス(20位/6位)、スペイン(33位/22位)のような国々が比較的言論の自由がある国々に選ばれてきた。 この数値は一国の言論の自由と民主主義指標とがほとんど似た水準という事実をよく見せる。

 ここで、国家情報院や朝鮮日報の言うことがなぜ道理に合わないのかが克明に明らかになった。言論の自由指標で最悪に選ばれた21カ国の中で、タイなど数カ国を除けば、ほとんどすべての国のマスコミが自国政府がハッキングチーム資料流出と関連があるという事実さえ正しく報道できていない。 その上、疑惑を報じたマスコミ、例えばタイ警察が購入したハッキングチームのプログラムを報道したタイ紙バンコクポストも、それ以上は食い下がれなかった。 2014年にクーデターで執権した軍人政府に対抗できるだけの民主的環境や装置がないためだ。 従って圧制的な政府の下でマスコミが口も開けないそれら21カ国は“強制された静けさ”であったし、“強制された静かな対応”だったに過ぎない。それを国家情報院や朝鮮日報が大韓民国との比較対象としたようだ。 極めて不快にも。

 大韓民国を除く残り13カ国も見よう。米国、オーストラリア、スペインをはじめとするその13カ国のマスコミも、ハッキングチーム事件が起きるとすぐにそれぞれ自国政府に強い疑いの目を向けた。ところがそれらの国々は、当初は大韓民国より騒々しくなれない条件があった。 これまで情報機関が市民を不法盗聴したり監視したことがなかった-もしくは、そのような事実が外に洩れたことがなかった-その国のマスコミは政府が否定すると温和しくなった。 そのような国々では、市民社会と政府の間にそれなりの基本的信頼があったという意味だ。 大韓民国のように市民を敵と考えてきた政府と情報機関に不法盗聴されたり監視された経験がなかったためだ。

 「韓国でさらに敏感になった理由は、国家情報院が過去にも不法盗聴、民間人査察などの疑惑を受けてきたためと見られる」。朝鮮日報が19日付でその題名の記事の末尾でAPを引用して結論としたのを見れば、朝鮮日報もはっきり知っていたという意味だ。これが今回の事件の本質だ。

 その上、その13カ国のマスコミは、半月が経過しても依然としてハッキングチーム事件を主要ニュースとして扱い、ハッキングの事後対策を報道している。 ヨーロッパ連合もハッキングチームの不法性の調査に乗り出した。 他所の国でも決して静かな状態ではない。 国家情報院や朝鮮日報が、世の中の移り変わりまでいい加減にだましながらやり過ごせる話ではないという意味だ。

■Gamma、Trovicor、Amesys、Blue Coatは?

 今まで大韓民国政府が市民を対象に行ったあらゆる不法盗聴と監視の主犯である国家情報院とその脇役の役割を果たしてきたセヌリ党、そしてその不法を安保だと言い後押ししてきた朝鮮日報、それらの愛国の作法と市民社会の愛国の作法は本質的に異なる。

なぜ大韓民国は騒々しくていけないのか?
なぜ市民社会が疑惑を抱いてはいけないのか?
なぜ野党が乗り出して調査をしてはいけないのか?

 「すべての国民は通信の秘密を侵されない」と釘をさした大韓民国憲法第18条が脅威にさらされている。むしろ今こそハッキングチームだけでなく、この間外信が“デジタル時代の傭兵”と呼んできたガンマ(Gamma)、トゥロビコオ(Trovicor)、アメシス(Amesys)、ブルーコート(Blue Coat)のような悪名高い監視用プログラムを国家情報院が購入して市民を対象に不法に使ってきていないかも確かめてみるべき時だ。すでに多くの権威主義政府がそのようなプログラムを購入して、人権を蹂躪し、情報の自由を抑圧してきた。 今までの行動から見れば国家情報院がそのようなプログラムを使ったことはないという方がおかしくないだろうか?

チョン・ムンテ国際紛争専門記者 //ハンギョレ新聞社

チョン・ムンテ国際紛争専門記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-24 20:43
http://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/701755.html 訳J.S(4548字)

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