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[ニュース分析] 国家情報院のハッキングを指示した人物は誰なのか

登録:2015-07-23 01:27 修正:2015-07-23 11:53
 検察捜査を目前に明らかにすべきこと
 市民団体、元・現国家情報院長告発する方針...捜査避けられない
 「対北朝鮮用」釈明も民間人ハッキング状況続々と明らかに
国家情報院のインターネットおよび携帯電話査察疑惑//ハンギョレ新聞社

 国家情報院のハッキングプログラムの購入に関連し、参与連帯と民主社会のための弁護士会(民弁)などの市民社会団体が、元・現職国家情報院長などを通信秘密保護法と情報通信ネットワーク法違反などの疑いで、ソウル中央地検に告発することにした。これにより、国家情報院のハッキング装備の導入及びテスト過程と実際の運営、そしてデータ流出後の国家情報院の対応まで、全過程に対する検察の捜査が避けられない見通しだ。国家情報院は、ハッキングプログラムを導入しながらも、国会に通報義務を守らず、違法なハッキングを行った事実が既に明らかになった。参与連帯公益法センター運営委員のヤン・ホンソク弁護士は22日、「これまで想像もしなかった前代未聞のことが起きた」とし、検察の捜査を通じて究明されなければならない疑惑が一つや二つではないと指摘した。

(1)ハッキングプログラムの使用は明らかに違法

 まず、検察はイタリア「ハッキングチーム」社が作ったRCSを導入した過程を究明する必要がある。現行法はハッキングを禁止している。イ・ビョンホ国家情報院長は14日、国会情報委員会での答弁で、2012年に国家情報院がRCSを購入したと認めた。今月初め流出したハッキングチームの資料によると、RCSはパソコンやスマートフォンにリモートコントロールできるスパイウェアを浸透させて、情報を抜き取る方法をとる。このような形は、「悪性プログラムの配信及び流布」と「情報通信ネットワークへの侵入」、「情報通信ネットワークに障害を発生させる行為」などを禁止する情報通信ネットワーク利用促進及び情報保護などに関する法律を違反した行為だ。違法の可能性が高いだけに、国家情報院周辺でどこまでこれに加担したのかを明らかにしなければならないものと見られる。

(2)あちこちで現れる民間人査察の状況

 ハッキングチームのサーバーはSKテレコム(SKT)とSKブロードバンド、KTなど、国内ネットワーク事業者に割り当てられたアドレス(IP)で接続した記録(ログ)が残っていることが確認された。SKテレコムIPのログが記録されたのと同じ時期、国家情報院がハッキングのスパイウェアを特定の国内ブログのアドレス(URL)に植えるようにハッキングチームに要請したことから、国家情報院の要求によるものと推定される。SKブロードバンドとKTのログ記録には、初めから「誘因用ページが出力される」という表示がついている。接続者が誰だったのか把握できるネットワーク事業者は、「個人情報」という理由で公開を拒否しており、捜査を通じて明らかにしなければならない。

 国家情報院は「対北諜報収集活動」だったと主張するが、それとは無関係な民間人査察(監視)だった可能性も排除できない。国家情報院がハッキングチームとの電子メールのやり取りで、国内利用者が多い携帯電話メッセンジャーであるカカオトークや国内で市販されているスマートフォンのハッキングの可能性を積極的に打診したのも、このような疑念を抱かせる。

(3)「国家情報院の傍受主張」は妥当なのか

 国家情報院がRCSについて「対北朝鮮の海外情報戦のための技術的な分析と戦略策定のための研究開発用」(14日、国会情報委員会)という立場を強調した背景には、ハッキングが「傍受」だったと主張するための意図が横たわっている。ハッキング行為は違法だが、国益のための情報戦における傍受手段として、ハッキングは避けられないと訴えているわけだ。しかし、法曹界では、RCSのような高レベルのハッキング道具が傍受にのみ使われたとするのは難しいとの見方が多い。これまで知られているRCSの機能では、コンピュータやスマートフォンに保存されているほぼすべての情報を検索・収集ができ、利用者に知られずこっそりスマートフォン内蔵カメラを操って、利用者の状態や周囲の状況に関する画像情報も送受信できる。たとえ国家情報院が傍受だと主張しても、韓国人の傍受をするためには、通信秘密保護法により、原則的に裁判所の令状が必要となる。しかし、令状の発給は確認されていない。国家情報院とハッキングチームを仲介したナナテックのホ・ソング代表は、ハンギョレとのインタビューで、「国家情報院の主なターゲットは、中国にいる韓国人」としたが、報道が出た後、22日に再び連絡してきて「中国に居住する中国国籍の人を意味する」と前言を覆した。検事出身のある弁護士は「国家情報院が国内法の適用を受ける国内機関であるだけに、ハッキング対象の国籍や所在地にかかわらず、令状なしで行った傍受は違法」だと指摘した。

 悪性コードで無差別感染を試みたのか
 実定法に基づいて裁判所から令状を取得したのか
 国家情報院による組織的な証拠隠滅なかったのか

(4)無差別感染による追加の被害はないのか?

 国家情報院は、ハッキングのスパイウェアを流布するために、地域の桜祭りや飲食店などがアップされている一般的なネイバーブログの記事とサムスン製品の更新プログラムのウェブサイトなどを活用したことが分かった。対北朝鮮諜報活動と関連性がなかなか見当たらないこのような“餌”は、一般の人々まで感染させた可能性が高い。国家情報院が被害をもたらして不安を拡散させたという批判を免れないものと見られる。個人情報の流出に伴う二次、三次被害の可能性もあるからだ。また、国家情報院がネイバーなど民間企業のサービスを妨害した行為という指摘も出ている。ヤン・ホンソク弁護士は「ネイバーブログに悪性コードを植えたことが確認されると、業務妨害罪成立の可能性もある」と述べた。

(5)国家情報院の組織的な証拠隠滅があったのか

 今月18日に遺体で発見された国家情報院職員イム氏は、遺書で自分が働いていた部門に関連するファイルを削除したことを明らかにしており、関連証拠の隠滅の可能性を示唆した。国家情報院は当初100%回復できるとしたが、状況はまだ不透明だ。さらに、ハッキング用のスパイウェア拡散のためのアドレス(URL)を要請した国家情報院職員が使用していた「devilangel1004」のIDに関連するブログ記事が最近削除されるなど、国家情報院ぐるみの組織的な証拠隠滅と秘匿が行われている可能性もある。

(6)国家情報院に対する捜査、大統領の意志なしでは不可能

 違法行為の可能性は高いが、捜査は容易ではないと予想される。刑事訴訟法111条により、職務上の秘密に関する場合、所属機関の承諾なしに捜査機関が証拠物などを押収できない。所属機関は、国の重大な利益を害する場合を除いて、押収を承諾しなければならないが、国家情報院は国益を損なう可能性があるとの根拠を挙げて、捜査に協力しない姿勢を示してきた。国家情報院による大統領選挙介入疑惑に対する捜査でも、国家情報院はこれらの理由を掲げ、メインサーバーの家宅捜索を拒否したと伝えられた。国家情報院職員に対する調査も容易ではない。国家情報院職員法によると、捜査機関が国家情報院職員を調査するためには、国家情報院長にその事実と結果を通知しなければならない。このように、相手の同意がなければまともに捜査できないようになっているために、国家情報院を相手にした調査は大統領の意志なしには不可能だ。大統領だけが直属機関の国家情報院を制御できるからだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、国家情報院法制官を務めたイ・ソクボム弁護士は、「結局、大統領の意志が重要だ。 2005年、安全企画部の盗聴事件に対する捜査の際には、盧武鉉大統領が捜査協力を指示し、国家情報院長もこれに従ったと聞いている。捜査が正しく行われれば、ハッキング疑惑事件関係者が処罰される可能性が高く見えるが、朴槿恵(パク・クネ)大統領に真相究明の意志があるのかは疑問だ」と述べた。

 国民的な疑惑が大きいだけに、告発されれば、検察としては事件を受理し、捜査に着手するかどうかを決めなければならない。しかし、検察はあまり乗り気ではないようだ。ある検察関係者は、「検察と国家情報院ともに捜査を避けたがる。権力機関同士が衝突すると、互いに打撃を受けるしかない」と述べた。 2013年、国家情報院の大統領選挙介入疑惑を捜査した検察の特別捜査チームは、捜査妨害の中でウォン・セフン元国情院長を公職選挙法と国家情報院法違反の疑いで起訴する成果をあげたが、ユン・ソクヨル同チーム長など捜査チームのほとんどが左遷された。また、捜査を指揮したチェ・ドンウク検事総長は、大統領府と国家情報院の釈然としない身辺調査と婚外子騒動で、不名誉な退陣を余儀なくされた。

キム・ウェヒョン、チョン・ファンボン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-22 19:48

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/701379.html  訳H.J

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