ヒョン・ヨンチョル北朝鮮人民武力部長の粛清をめぐり、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制がさらに不安定になっているという見方と安定化するプロセスであるという分析が分かれている。一部では、ヒョン・ヨンチョル部長が粛清されたという国家情報院の報告が、まだ十分確認されていないのではないかという指摘も出ている。
国家情報院は、今回の事件が北朝鮮政権の不安定性を表す事例ではあるが、体制離反の明確な兆候と見るのは難しいという評価を出した。国家情報院の関係者は、「独裁政権が最初は広範囲に支配グループを構成し、途中から粛清を通じて主要グループを縮小しながら、統治費用を減らしていくことが一般的なプロセスであり、金正恩第一書記もそのような過程にあると思う」と述べた。彼は「政権が盤石の状態とは言えないが、体制不安の兆候とするには、もう少し見守らなければならない。処刑を知った北朝鮮幹部の恐怖が怒りに変わる程度の状況は、まだ作られていない」と評価した。他の国家情報院の幹部も「まだ北朝鮮内部で権力争いの兆候は見られない」と述べた。
北朝鮮専門家の間では、今回の粛清を、金正恩唯一指導体系を確立するための軍部馴らしとして捉える見方もある。キム・ドンヨプ慶南大学極東問題研究所研究教授は、「今回の粛清は、金正恩式の軍部馴らし」だとし、「軍部の外貨事業を内閣に移行しようとしたが、軍部の反発で思う通りにできなかったため、人民武力部長を粛清して軍部を強く圧迫している」と分析した。
ヒョン・ヨンチョル粛清後動揺の可能性はあるが
国家情報院 「体制不安の兆候は見られず」
専門家 「外貨事業の内閣への移転過程で
軍部が反発したため粛清した様子」との分析
処刑10日過ぎても放送に出ており
「処刑されたか否か慎重に判断すべき」との指摘も
今回の粛清が今年4月ヒョン・ヨンチョル部長のロシア訪問に関連しているという分析もある。当時人民武力部長の資格で訪ロした彼が、金正恩第一書記の訪ロに関する事前協議で、なんらかの失敗をした可能性があるということだ。国家情報院の関係者は、「(ロシア訪問と関連した)可能性も念頭に置いている。具体的な内容はまだ把握できず、追跡中」だと述べた。人民軍小隊長出身のアン・チャンイル世界北朝鮮研究センター所長は、「ロシアの武器購入と関連し、北朝鮮は物資で支払うことを望んでいたが、ロシアは貨幣で支払うことを求めており、ヒョン部長が北朝鮮の意向を貫けなかったことに対する責任を負わされたのではないかと思う」と述べた。
今回の粛清が「軍部引き締め」よりは「不満の増大」につながり、政権の不安定性を高めるだろうという見通しも出ている。アン所長は「旧世代と新世代の循環過程で起きる衝突と見るには粛清数が多すぎて、しかも急激に進んでおり、金正恩体制が根付いていない状況では不安要因になりかねない」と指摘した。キム・グンシク慶南大学政治外交学科教授は「今回の粛清は金日成(キム・イルソン)主席・金正日(キム・ジョンイル)総書記の時の反縦派粛清とは異なる、思い付きの即決処分に見える」とし「恐怖政治で政治エリートたちを引き締めることができるかもしれないが、彼らを掌握して信頼を得るには難しく、不安定が増すだろう」と予想した。
ヒョン・ヨンチョル部長を処刑した否か、もう少し見守る必要があるという慎重論もある。北朝鮮放送が5〜11日放送された金正恩第一書記の軍関連の公開活動記録映画に、金第1書記を随行したヒョン部長の姿が出てきたこと、現在もヒョン部長が登場する労働新聞記事が変更されていないという点などが根拠だ。チョン・ソンジャン世宗研究所統一戦略研究所長は「処刑してから10日が過ぎても放送に出てくるということは、あり得ないこと」だとし、「懲戒ならわかるが、粛清や処刑されたのかについては疑問の余地が多い」と述べた。ヤン・ムジン北朝鮮大学院大学教授は、「国家情報院が確認されていない情報を国会に報告した背景には、政治的な意図があるのではないかという疑念を抱かせる」と述べた。
北朝鮮の相次ぐ幹部の粛清が韓国内の南北交流支持基盤の弱体化につながる可能性もある。コリア研究所のキム・チャンス研究室長は「私たちの国民の間に南北対話の否定的な認識がさらに高まる可能性がある」とし「朴槿恵(パク・クネ)政権も南北関係を解きほぐすよりも、対北朝鮮関係を梗塞させる方向に出る可能性もある点を懸念している」と述べた。
韓国語原文入力:2015-05-13 21:27