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[記者手帳]どこにTHAADを配備しようというのか

登録:2015-04-22 00:10 修正:2016-02-23 07:24

 朝鮮半島を熱くした地上配備型迎撃システムである高高度防衛ミサイル(THAAD)を巡る議論が静かになった。THAADは水面下に潜ったかのようだったが、最近になり、サミュエル・ロックリア米太平洋軍司令官やカーチス・スカパロッティ在韓米軍司令官が、「朝鮮半島にTHAADの砲隊を配備する可能性を議論している」と述べた。米軍指揮官がTHAAD議論の火種を蘇らせようと努めている。

 昨年からの米国発、より正確には米軍発のTHAAD論議の中心には敷地の問題がある。昨年5月、「米軍が韓国でTHAADの敷地に関する調査を実施した」という米紙ウォールストリート・ジャーナルが報じると、スカパロッティ在韓米軍司令官は「本国に配備を要請した」として、これを確認した。 敷地がTHAAD論議の出発点だったわけだ。

 先月、在韓米軍司令部が「韓国にTHAADを配備できる可能性のある場所がある。将来のTHAAD配備に備えて適切な場所を探すための非公式調査が進行された」と報道資料を通じて明らかにし、THAAD問題が急浮上した。この過程で米軍が京畿道・平沢(ピョンテク)、大邱(テグ)、江原道・原州(ウォンジュ)、釜山・機張郡(キジャングン)一帯などをTHAAD配備候補地として調査したという情報が流れた。

 米軍は敷地問題をTHAAD論議の触発点と起爆剤として活用した。だが、韓国に用意されるTHAADの敷地を米軍が一方的に調査しても問題はないのだろうか。 慶尚南道・密陽(ミリャン)の超高圧送電塔、済州(チェジュ)海軍基地建設が国策事業・国家安保を前面に出して該当地域の住民意見を無視して一方的に事業を押し切って問題になった。

 もし韓国の特定地域にTHAADが配置されたら、該当地域の住民の激しい反発が起きそうだ。THAADには広い敷地と安全地帯が必要だ。THAAD用のレーダーであるAN/TPY-2の電磁波に人体・環境有害論議があるためだ。

 米陸軍の資料によれば、AN/TPY-2レーダーを設置するには、横281メートル、縦94.5メートル大の面積(サッカー場4面分の広さ)が必要となる。レーダーの周辺11万2396平方メートル(3万4000坪)には一般人の接近を阻む鉄条網を設置しなければならない。それだけではない。 電磁波の影響を防ぐ安全距離も必要だ。 レーダーの正面を基準として左右に各65度ずつ、レーダーの前方5.5キロメートルまでは何もあってはならない。今まで米国がTHAADを配備したところは砂漠の真中(米国テキサス州)と海に接した地域(グアム、日本青森県の津軽、同じく京都府京丹後)だ。「前方5.5キロメートルの広い開放地」という安全距離確保のためだ。

クォン・ヒョクチョル社会2部地域テスク//ハンギョレ新聞社

 しかし韓国には米国のような砂漠はなく、日本のように海側にレーダーを設置することもできない。 北朝鮮のミサイル基地が韓国の北側にあるためだ。 中国牽制ではなく北朝鮮の核に備えるためだと強調したので、朝鮮半島に配置されるAN/TPY-2レーダーは内陸を眺める方向に設置せざるを得ない。仮に、平沢、大邱、原州、釜山のどこかにTHAADが配備されるとしよう。THAADの敷地の前方5.5キロメートルの空と地上をすべて空けなければならないならば、該当地域の住民たちが黙っているだろうか。建築高度制限と開発制限、住居価格の下落など、各種の財産上の被害、電磁波人体有害論議で深刻な問題が起きるだろう。 昨年AN/TPY-2レーダーが設置された日本の京都府丹後では、住民たちが電磁波被害とレーダー運用のための発電機から発生した騒音被害などを訴えている。

米国の対韓半島ミサイル防衛体系 //ハンギョレ新聞社

 米軍や韓国政府は、THAADの場所を勝手に決め、当該地域の住民はムダ口を叩かず黙って従うべきだと信じているようだ。 安保を前面に打ち出したTHAAD配備の強行も困るが、地域住民の意志を無視した密室でのTHAADの敷地選定は決して許されない。 多くの犠牲と費用を払って江汀と密陽で学んだ教訓を忘れたのだろうか。

クォン・ヒョクチョル社会2部地域テスク (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/687817.html 韓国語原文入力:2015-04-21 18:45
訳J.S(1838字)

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