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[寄稿]月城1号機の寿命延長を強行した原子力安全委員会の傲慢

登録:2015-02-28 09:17 修正:2015-02-28 11:47
キム・イクチュン原子力安全委員会非常任委員/東国大医大教授
月城1号機 //ハンギョレ新聞社

資料読む時間も与えず強行採決

 26日午前10時に会議を始めた第35回原子力安全委員会(原安委)は、市民が寝ついた翌27日午前1時に月城原発1号機の寿命延長を決めた。すべての過程に参加した委員として問題点を指摘せざるをえない。

 何より安全性確保に必要な設備がまともに用意されないまま寿命延長の決定がされたことに問題がある。良く知られているように月城1号機はカナダのCANDU炉だ。韓国の法体系でも国内外の最新技術基準を活用し安全性を確保することになっている。したがってカナダの最新技術基準を適用・活用して安全性を評価する必要があった。だが、月城1号機の寿命延長ではそれが省略された。月城1号機より後に設計・建設された月城2、3、4号機にはカナダの最新技術基準である「R-7」が適用された。月城1号機はこのR-7基準が準備された1991年以前に建設されたため同技術基準が適用されていないのだ。

 R-7で要求される設備は総漏洩監視設備、使用済み核燃料取り出し槽水門、原子炉建物貫通部隔離バルブ36個など幾つもある。これら設備は主に事故発生時に放射能物質が原子炉建物の外に漏出することを防ぐためのものだ。当然、月城1号機にもこうした設備を追加しなければならない。韓国水力原子力(韓水原)はこれら設備を追加しなかった。つまり規制機関である原安委はこれら設備がなくても安全性が確保されると判断したことになる。

 安全性を高める設備がなければ安全でない。専門知識がなくても誰でも分かる常識だ。日本の福島原発事故後、世界各国は原子力発電所の安全性を高めるため設備補強などに努力を傾けている。原発事故がどれほど甚大な被害をもたらすか目の当たりにしたためだ。無論、安全基準を強化するにはそれだけ費用がかかる。だが、世界各国政府は事故の危険を少しでも低めようと努力と費用を惜しまずにいる。ドイツは原発事故の危険を抜本的に除去しようと「原発0」の期間を定め、脱原発の足取りに速めている。

 しかし今回の月城1号機の寿命延長の過程で、こうした悩みや努力は見当たらなかった。むしろ安全設備への投資をしない言い訳を探すのに汲々とした。2015年に新たに打ち出された技術基準ではなく、24年前の技術基準にこだわる原子力発電所の寿命延長決定を、規制機関の一員として恥じずにはいられない。

 原安委の寿命延長可決は意志決定過程にも問題があった。現在の第2期原安委はこれまで資料検討や質問などで正常な審議過程を経て意志決定がされてきた。すべて正しい決定がされてきたわけではないが、少なくとも資料検討や質疑応答の過程は充分に持たれたと考える。ところが今回の会議はそうはいかなかった。新しく受け取った資料を読む時間も与えられず、質問が十分にできない状況で慌てて表決が強行された。会議開始翌日の午前1時を過ぎて表決が進行された事実だけ見ても、どれほど拙速な表決が強行されたか窺い知れる。委員長に表決を押し切る理由を繰り返し尋ねたが最後まで返答は得られなかった。

 私は過去1年6カ月間に何度も少数意見を残して表決で敗北したが、表決自体を拒否することはなかった。しかし今回は資料検討と審議時間が十分に与えられず、拙速な表決が強行されたので拒否した。そして通常と異なる表決が強行された理由を私はまだ知らない。原安委の独立性を強化する切実な必要を骨に凍みるほど再確認するだけだ。

キム・イクチュン原子力安全委員会非常任委員・東国大医大教授//ハンギョレ新聞社

 事実関係はまだ確認されていないが、古里(コリ)原発1号機の寿命再延長がされなくなったニュースが伝わり日が経たないうちに、月城1号機の寿命延長が強行された。この二つの事件のつながりが疑われてならない。原子力の安全を政治交渉で思い通りにできるほどの事案と判断しているとしたら、あまりに傲慢だ。

 原発事故は国家の存亡にかかわる重大懸案だ。少なくとも国民安全のために国防に準ずる関心と努力が必要だ。 正しい原子力規制なしに国民の安全は守れない。原安委の独立なしに正しい原子力規制は不可能だ。

キム・イクチュン原子力安全委員会非常任委員・東国大医大教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.27 21:03

https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/680130.html 訳Y.B

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